第十六話 誤解
庭についた俺は周囲を見渡す。
庭までの道中は長くとても疲れた、汗だくだ。
鎧が重すぎて足を動かすのも一苦労だった、明日は筋肉痛だろう。
道中何も無かったのが幸いだった。
しばらく探していると奥に二人の男女がいるのが見えた。
片方はレオさんだ、やっと会えた。
笑い声が聞こえる、きっと談笑でもしているのだろう。
その幸せそうな姿をみて疲れなんて一気に吹き飛んだ俺はすぐに二人の元へ駆けだして行った。
二人の注意が俺に向く
レオ「何者だ!?」
驚きの声を上げると共にレオさんがそばの女性を抱き寄せる。
どうやら警戒されているらしい
なに驚くことはない、当たり前だ、向こうは俺のことを知らないのだから、つい嬉しくなって何も考えず駆け出してしまった。
早く弁明しなければ、
レオ「早く名を名乗れ!でなければ賊として、即刻捕縛させてもらうぞ!」
俺「えっと、その....
俺は慌てて旨を話そうとするが、言葉につまってしまう。
恩人であり憧れの人にこうして詰められることは俺にとってショックだった。
???「レオ、もしかしたらその人の着ている鎧、王国騎士団のものじゃない?」
横の女の人が口を開く、ありがたい、これで誤解が晴れるといいけれど、
レオ「そんなことは承知している、だがこいつの顔を私は見たことがない、私は奪われたものと考えている。」
???「新人の可能性もあるのではないですか?」
レオ「いや、入隊試験の実施はまだ先の話のはずだ。」
???「そう...ですか。」
レオ「早く名を名乗らないか!」
そう言い、素早く腰に装備していた縄を取り出すレオさん。
このままでは本当に捕まえられてしまう、早く何か誤解の晴れる説明をしないと、
俺「こ、この度、特例としてシナイさんに入隊を許可して頂きました、ブライト・アンダーソンです。一言挨拶をと思い参った次第です。」
なんとか言葉に出来た。
レオ「本当か?怪しいな、ならばなぜすぐに名乗らない」
俺も騎士団になった身なんだから、いきなり問い詰められて頭真っ白になってしまったなんて言える筈がない。
また沈黙を続けてしまう。
レオ「やはりか、おい、手を前にだせ、抵抗はするなよ。」
???「悪い人のようには見えないけれど...」
レオ「フーリアよ、人は見かけによらないものだ。」
フーリア?聞いたことがある名前だ。
確かウィンさんに教えてもらったレオさんの婚約者の人の名前だった。
さっきのレオさんの仕草からみるにこの人ということか。
あ、ウィンさん!
ウィンさんの名前を出せば信じてもらえるかもしれないな。
俺「ウィ、ウィンさんの紹介です!ウィンさんにいわれて入隊することになりました。」
レオさんの手が止まる。
レオ「ウィン?まさかあのウィンか?」
俺「そうですそうです、あの医者の。」
良かった、なんとかなりそうだ。
レオ「ウィンの名を知っているということは賊ではないのか?」
???「レオ、シナイさんに確認してみたら?」
レオ「それもそうだな、ついてこい!」
少し考えていたかと思うといきなり足早に歩き出してしまった。
俺「はい!!」
文句なんて言えるわけもなく俺は重い鎧を着たまま見失いそうになりながらもなんとか着いていった。




