第十四話 覚悟
ギイイイイイ
大きな音を立てて俺の身長の二倍くらいある大きな門は開いた。
一歩中に入ると、すぐに話しかけられた。
受付嬢「本日はどういったご用件でしょうか?」
俺「王国騎士団に入団したくて来ました。」
受付嬢「..........」
俺の言葉がおかしかったのか?返答のないまま沈黙が続いた。
受付嬢「えっと、次の募集は2ヶ月先ですけど....」
えっそうなの?
ウィンさんまったくそんなこと言って無かったけど
受付嬢「というわけで本日はお帰り頂かれて、また2ヶ月後にいらっしゃられて下さいね。」
駄目だ、2ヶ月半も足止めなんて食らってられない。
俺「そ、それでもなんとかなりませんか?」
必死に食い下がる
受付嬢「なんとかと言われましても規則ですので、どうにもならないかと。」
俺「そこをなんとか!!」
「申し訳ありませんが小さな子供でももう少し聞き訳がありますよ?」
うう、ちょっとこの人の言葉言い方は丁寧だけど心にくるものがあるな。
どうしようと思っていたら、門から誰か入ってきた。
受付嬢「あ、ちょっと聞いてくださいよシナイさん」
シナイ「ん、どしたの。」
受付嬢「この人が騎士団の募集は2ヶ月後だっていくら言っても聞かなくて、ゴチャゴチャうるさいんですよ〜」
「なんとか言ってやってください。」
あれ?なんかちょっと盛ってない?
そこまで言わせるようなことしたっけ?
シナイ「ふ〜ん」
シナイさんがこっちを向いた。
昨日遠くから見ただけじゃカッコいいなぁぐらいにしか思わなかったけど凄いイケメンだなこの人。
高身長で後ろで留めてる青髪も似合ってる。
って見惚れている場合じゃないな。
シナイ「で、そんなに入りたいの?王国騎士団。」
俺「はい!入りたいです!!」
シナイ「なんで?」
間髪入れずの質問だった。
言い回しから一見子供の純粋な質問のような可愛らしい感じがするけれどそんな生易しいものじゃ無かった。
その裏側からとてつもない圧が感じられた。
俺「えー 自分にとって大切なことを知りたいからです!」
シナイ「まあ、ぶっちゃけ理由はどうでもいいんだけど。」
俺「えっ」
どういうことだ?
シナイ「たまにそんな動機で王国騎士団に入ろうとするなんて、とか言う人もいるけどそんなの他人には推し量れないだろ。」
「そう思うよなぁ、その不純な理由だって言ってる本人は至って真面目に言っているのかもしれないし。」
「だからさ、俺が大切にしてるのは、そこに覚悟があるかなんだよね。」
「国民を守りたいでもお金を稼ぎたいでも一緒だよ。そこに本気なのかだけだ。」
俺「えっと」
「君の目標は自分にとって大切なことを知りたいだっけ?ちょっと言い淀んだよね。」
「どういうことだ?ほんとの理由は別にあるとか?それともお遊び?」
もしかして怒らせたか?
シナイ「君に覚悟があるかないかなんて分からないけど、もしないなら二度とここには来ないでくれ。」
「覚悟がないやつから死んでいくんだ。もう、俺の周りで人が死ぬのはうんざりなんだよ。」
「じゃあ俺もう行くから。」
覚悟、覚悟なんてあるに決まっている。
今の俺には覚悟を決めることぐらいしか出来ることがないんだから。
だからここで強くなるんだ。
俺「待って下さい!」
シナイさんは嫌そうな顔で振り返る。
シナイ「何?」
俺「見せます。俺の覚悟。」
「だから、俺を王国騎士団に入れてください!」
俺の言葉を聞いたシナイさんの顔つきが一気に変わった。
シナイ「面白い、いいよ、見せてくれたら俺の力で入れてやる。」
受付嬢「ちょっとシナイさん!?」
シナイ「そういえばまだ名前聞いてなかったよな。教えてくれよ。」
俺「ブライトです。ブライトアンダーソン。」
シナイ「そうか。俺はシナイ・プルタルコス」
「で、どうやって見せてくれるんだ?」
俺「シナイさんと直接対決で勝負します。勝ったら入れてください。」
シナイさんは驚いた顔をしたけどすぐに
シナイ「いいね、そうしよう。」
「じゃあまずはステータス開示をお互いにしようぜ。」
「騎士団1のスピード見せてやるよ。」
俺「はい!」
ピュイーン
名 シナイ・プルタルコス
レベル 60
HP 155
MP 58
攻撃力 236
防御力 172
魔法耐性力 168
俊敏力 205
スキル 全容量 100
⬜︎ Bスキル 跳躍上昇 capa使用量15
⬜︎ Aスキル 爆発力 capa使用量35
⬜︎ Bスキル 疾走 capa使用量20
⬜︎ Bスキル 筋力増強 capa使用量10
⬜︎ Bスキル 速度上昇 capa使用量10
⬜︎ Bスキル 速度上昇
「次はブライトの番だぞ。」
ピュイーン
俺のステータスも一通り見せた。
「えっと、以上です。」
シナイ「は?なんだこのステータスは、レベル1だと?」
シナイさんの表情が再び曇る。
「やめだやめだ、覚悟以前にレベルを上げてこい。弱いものいじめは好きじゃないんだ。」
だよな、正直こうなる予感はしてた。
シナイ「ん、まてよ。」
「おいエウリカ、ちょっとこっち来てくれ。」
エウリカ「はい、なんでしょうシナイさん?」
シナイはいきなりさっきの受付嬢を呼んだ。エウリカっていう名前なのか。
「エウリカってまだ最近騎士団に入ったばかりでしかもまだレベル低かったよな。」
エウリカ「はい、まだレベル5ですが。」
シナイ「ちょうどいいな。よしエウリカ、ブライトと戦え。」
俺&エウリカ「えーー!!」
エウリカ「どうして私がそいつと戦わないといけないんですか?」
シナイ「そりゃだって、俺とブライトが戦ってもなんの勝負にもならないぞ。」
エウリカ「だからってレベル1の聞き分けのない非常識野郎と戦わせようとするなんて、絶対嫌です。」
シナイ「自分は助けてもらったのにか?」
エウリカ「うっ」
急にバツが悪そうに下を向く。
シナイ「エウリカだってここにきた頃はレベル1だっただろ。それにほんとは女は騎士団には入れないのに俺が説得してやったんだ。恩を返しとくなら今だぜ。」
エウリカ「うー そこまで言うならしょうがないですね。」
俺「えっと、結局どういうことなんですか?」
シナイ「お前が戦うのはこのエウリカっていう女騎士になった。」
「お前がエウリカに勝ったら晴れて騎士団に入団できるぞ」
「勝ちの条件は動かなくなる、ギブアップ宣言するだ。」
「後はフィールドアウトだけど、それはなしでいいか。」
うん?話が急展開すぎてよく分からないな。
エウリカ「早く終わらせましょう。ステータスはもういいでしょう?」
エウリカは素早く剣を構えた。
とりあえずこの人に勝てば入れるんだな。
デビュー戦だぞ、頼りにしてるぜ、そう呟いて腰から鉄の剣を抜く。
緊張する、とりあえず深呼吸だ。
覚悟を決めろ、俺!




