第十二話 再会
そうか、あの人名前レオっていったのか。
今目の前にいるのはあの日魔王城の前で見た戦士そのものだった。
立ったままじっと魔王城を見つめていたあの屈強な戦士だった。
そのときすでに亡くなっていたはずの彼は今こうして国の英雄として戦っている。
俺はなんかもう言葉では表せないほど感動して目の前で繰り広げられている戦いが見えなくなるくらいだった。
一度奪ってしまった命が取り戻されていることに俺は救われた気がした。
全て元に戻ったからって罪が消える訳じゃない。
俺がこれから罪をエイタと共に一生償っていこうと思っていた。
でもレオさんが生きているのを見て俺が犯した罪は消えないけれど、俺がその後やったことが正しかったんだって思った。
あの時絶望しかけたけど、もう無理だって思ったけど、最終的に俺は正しい選択をしたんだ。
肩の荷が降りた。
俺は真っ当に生きていけるんだ。
新しい自分に生まれ変われる。
レオさんにはどれだけ感謝しても感謝しきらないくらいだ。
ああ、どれだけレオさんに直接会って謝ってありがとうございますと伝えたいことか。
観客「おっ そこの兄ちゃん、レオの試合は初めてか?うんうん感動して泣いちゃうのも無理はないぜ。なんせレオは最高の男だからな、この国が誇るヒーローだ。」
「レオがいたから今、命がある人がこの国には大勢いる。俺もその1人だ。どうだこのあと時間あるなら俺と話し合わないか?レオのことならなんでも教えてやるぜ。」
横の人が話しかけてきた。この人も俺が逃げずに戦ったことで救うことができたうちの1人なんだろう。
俺「はい、是非聞かせてください!!」
その後俺はウィンと名乗ったその人にたっぷりレオさんのことを教えてもらった。
すっかり俺も立派なファンの1人だ。
俺「それでさそれでさレオさんはなんと5年前に魔王を討伐した勇者パーティーの戦士だったんだよ、スゲーだろ」
「さらに凄いのは、レオさんなんとこの国の王様の娘さんと婚約関係にあるんだよ、ヴォーパルソードっていう名前も先祖代々受け継いできた大剣の名前らしいぜ。」
自分で言ってて今気づいた、そういうことか、胸にかけていたペンダントの女の人は婚約者の娘さんであの大剣はヴォーパルソードだったってことだ。
エイタ「はい、えっと凄い人なんですねその彼は。」
俺がウィンさんにレオさんのことを教えてもらっているときエイタはどこかに行っていたから教えてあげているというのに、エイタは俺の話を聞いてバツが悪そうにしていた。
あっそうかよくよく考えたらエイタにとって嫌な話だったか、もうこの話はやめよう。
配慮が足りないな。
俺「ごめんなエイタ。」
エイタ「い、いえ全然大丈夫です。」
気づけばもう夕方だった。
今日はどこに泊まろうかな。
俺「って結局、今日泊まる分のお金稼げてない!」
するとエイタが誇ったような表情を見せた。
エイタ「ふっふっふ 主様その点は心配ありません、お金なら私が芸をして集めておきましたよ。」
俺「エイタ〜〜お前ってやつはなんて頼りになるんだ。」
ドンッ
俺「すっすみません」
???「こ、こちらこそ」
エイタの方を向きながら歩いていたらぶつかってしまった。
女の人の声だった。
俺「大丈夫ですか?」
転んだその人に急いで手を差し伸べる。
???「ありがとうございます」
俺が手を引き上げると
その時、初めて顔が見えた。
‼︎⁉︎
嘘......だろ
その女の人は肩にちょっとかかるくらいの長さの銀髪に赤い目をしていて
しかも低身長でロングスカートを履いていて
とても超可愛いかった。
しかもどちらかと言えば女の人じゃなくて女の子のほうが似合いそうな人で
俺の超絶タイプだ、ドストライクだ。
この17年間の間で俺は悟っていたのに俺の理想の女の子なんて俺の頭の中にしかいないって、そんな人は世界中のどこを探してもいないんだって。
でも今確かに目の前に存在していた。俺の初恋が
彼女は申し訳なさそうな顔をしている。
???「えっと、すみません」
俺「え?あ、ああ」
無意識にずっと手を握ったままだった。
彼女が立ち去ろうとする。
俺は反射的に呼び止めていた。
俺「あ、あのいきなりで変なんですけどお名前教えていただけませんか?」
???「え、名前ですか?」
エイタがそんな俺を凄い目で見ていた。
うん絶対キモイやつだろうな、自分でも分かる。
ただぶつかっただけの相手をわざわざ呼び止めて名前を聞くなんてどんな野郎だよ。
でもここでなにもしなかったら俺はこれから男として、いや漢として生きていけないって思ったんだ。
???「ユイです。ユイ・アンダースラッシュって言います。」
ユイさんっていうのかなんていい名前だろうか。
俺「ユイさんっていうんですね。えっと俺の、いや僕の名前はブライト・アンダーソンです」
ユイ「奇遇ですね。どっちも名前にアンダーって入ってる。」
ふふって彼女は笑った、なんて可愛いんだ。
さっそく名前を重要にした意味が出ている。
俺「ほ、本当だ奇遇ですね、その一緒に今から晩御飯食べませんか?俺いや僕いいお店知ってるんですよ(もちろん嘘)ほら名前もおんなじですし。」
ユイ「ふふっブライトさんって面白いですね、いいですよご一緒します。」
俺がその言葉に酔っていると
エイタがもっと凄い目でこっちを見ていた。
で、俺は今夜宿に泊まる予定だったお金をエイタに貰った。渋っていたけど、仕方なく渡してくれた。
良さそうなお店に2人で入っていっぱい美味しいものを食べて、ずっとユイさんと話した。
それで俺は素晴らしい時間を過ごしたんだ。
ここで俺の人生終わってもいいってぐらい幸せだった
俺「ユイさん、また今度会えませんか?」
ユイ「まあ、ちょうどその話をしようと思っていました。以心伝心ですね。」
ああ、なんていい人なんだ。俺はこの人と付き合うためなら死んでもいい、なんなら結婚したい。
ユイ「お腹いっぱいになっちゃったのでお店を出て話しませんか?」
俺「いいですね。そうしましょうか。」
俺はレストランを後にしてユイさんと人の少ない夜道を歩いていた。
静かだ、俺とユイさんの声しか聞こえない。まるでこの世界に2人で取り残されてしまったようで、
あることをするのにもってこいの場所だった。
覚悟を決めろ!俺!
ユイさんに告白するんだ!!
俺「スーハースーハー」
大きく深呼吸する。
俺は緊張するときは大きく深呼吸をして落ち着くんだ。
ユイ「ブライトさんどうしたんですか?いきなり深呼吸なんかして」
俺「ユイさん!僕とお付き合いしてください!僕は本気です!!」
ついにやった!心臓の動きが早すぎて痛いくらいだ。
絶対この音ユイさんに聞こえてるよな。
ユイ「ブライトさん......」
ユイさんがゆっくりと近くに来る
俺はユイさんから目が離せない。
ユイさんはそのまま俺を抱きしめた。
ギュッと強く、ユイさんの匂いと感触がして、
俺の心臓はもっと素早く鼓動する
する......はずだった。
ユイ「死ね。」
俺の背中にナイフが突き刺さっている。
俺の心臓の鼓動はどんどん遅くなっていく中で
俺が最後に見たのはそのまま去っていくユイさんの姿だった。
「た、す、けて エ、、イ、」
そして俺の心臓は止まった。




