決断/リール視点
ライトの家に来てから1か月が経とうとしていた。
セリンの回復魔法のおかげもあり、かなり身体が動くようになっていた。長居したこともあり、歴史は変わってしまったはずだ。
「子供のうちは回復魔法を浴びすぎると自然治癒力が下がっちゃうから、このくらい時間をかけないとだめなのよ」
セリンはそんなことを言ってた。どうやらライトは町医者だったらしく、セリンはよく手伝っているとのことだった。
この1ヶ月の間、これからの事を色々と考えた。プレミアを助けたい一心で時間跳躍を行ったが、具体的な手段を持っていない。
まさか22年前に戻れるとは思わなかったが、中途半端な時間に戻されるよりはよっぽど良かった。
魔力が安定してくるにつれ重大なことが分かった。
『時間』に関わる魔法が一切使えなくなっていることだ。『時間停止』も『時間跳躍』も使うことが出来ない。何度試しても駄目だった。つまり、この世界では時間を戻すことが出来ないということだ。
逆に10歳当時に使えなかった『ウインド:治癒』が使えた。あと、大人になってから覚えたことは一通り使いこなせた。
魔法以外のこと、剣術や料理だってちゃんとできる。記憶もきちんと引き継いでいるようだった。
これが現状だ。この状況でどういう行動をとるか考え続けた。
まずプレミアについてだ。
彼女を助けるのが一番の目的であるが、時間が戻りすぎてしまった。自分の行動によってはプレミアが存在しない世界になってしまうことも十分にありえた。
もう一つはメテオについてだ。
実際のメテオを目の前にしてハッキリとわかったことがある。現状の俺の魔力では阻止することは不可能だ。最大出力である『反射:リヴェルベロ』でも無理だ。止めるためには長い年月の間修業をする必要がある。
ならば修業をし続けながらプレミアの迎えを待つ方法もある。ここまでの選択肢ををなぞるだけなら出来るはずだ。能力は比較にならないので、もっと楽な行程になるはずだ。
ただ、問題があった。
アクトスが魔王と『取引』をしたということだ。メテオを止められたとしても、賢者の石自体に契約履行するための魔力を込められてたとしたら、その魔力の上限を測るのは難しいことだった。22年間の努力が無に帰す危険性もある。
そして、その『取引』の中にプレミアの誕生に関わることが含まれていることだ。プレミアに何らかの変化が起こる可能性も否定できない。
待つだけの戦いはリスクが大きすぎる。時間を戻すことは出来ないのだ。
ならば選択肢は一つしかない。
俺が先に―――魔王を―――倒す。それしかない。
アクトスは勇者ではなくなる。もちろん、アクトスとセリンの関係性が変化すれば、プレミアが生まれなくなってしまうかもしれない。
だがセリンが、アクトスがプレミアの実の父親であるということを否定し続けていた。今はその言葉を信じるしかない。
『アクトスの子供である』という証拠がないと同じように、『アクトスの子供ではない』という証拠もないのだ。セリンとアクトス、どちらの言葉を信じるかと問われたら、俺は間違いなくセリンの言葉を信じる。
ならばセリンをアクトスのパーティーには入れさせない。俺が連れて行く。
そして魔王を倒すのだ。
やるべきことは決まった。傷が治り次第出発する。
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その決断をして一週間が経った頃だった。
ついに、セリンを勧誘するためにアクトス達が街にやって来た。
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