近づく終わりの時/リール視点
都市アクトスの近くまでやって来た。
本隊とも合流を果たし、レイダーとランスとも無事再会することができた。
プレミアは落ち着きを取り戻し、いつも通り明るい雰囲気だ。
ファクターを殺した後のプレミアの精神状態は、本当に不安定だった。彼女の心の闇の深さを知った。自分がファクターに止めを刺すべきだったのかもしれない。
アクトス軍の偵察に行っていた斥候が戻ったのは日が沈んだ頃だった。
ついにアクトス軍が慌ただしく進軍の準備を始めているとの情報だった。負けることは想定していなかったようだ。アクトスの性格を考えれば当然だろう。
早々に作戦会議が行われた。予定の変更はなし。俺とプレミア、セリンだけ別行動となり城に侵入、アクトスを暗殺することに決まった。
軍対軍の戦いはミシリ―軍の本隊が担当する。レイダーとランスはここからが本当の戦いだった。ミシリ―軍の本隊に道を作るという役割を終えたスパルナ、ドルビー、クリスは前線から退き、後援・補給部隊で戦うことになる。命を落とす可能性は少なくなった。
アクトスの暗殺と、都市と周辺の村々の制圧による国の奪取。
以上がミシリ―軍としての目標だ。もちろん、俺達にはもう一つ重要な任務がある。
『賢者の石』を奪い、セリンを死なせず、メテオを止めこの世界を救うこと
その任務を無事達成したならば、この入り組んだ小川のような時間の流れも、きっと大きな一本の大河に戻るはずだ。新しい未来はすぐ近くまで来ている。
焚火で作ったお湯で紅茶を淹れた。今日の夜はとても静かだ。一人でテントの中にいると、色々なことを考えてしまう。
アクトス国はなくなりミシリ―国の一部に戻る。しばらくは混乱もあるはずだ。全ての国民がアクトスの政治に怒っていた訳ではないのを、俺が一番知っている。洗脳された状態に近い彼らを説得することは出来るのだろうか。それとも、また新たな戦いになってしまうのだろうか。
新しい国が落ち着くまでは、この戦いに参加した責任を果たさないといけない。
多くの人を巻き込み過ぎたし、人を殺めることに慣れ過ぎてしまった。実は俺が魔王だったんじゃないかという気さえしてくる。
ふとプレミアの顔が浮かんだ。彼女は、この戦いが終わったらどう生きるのだろうか。『時間跳躍』を繰り返し、想像も出来ないような絶望を何度も経験してきたはずだ。普通の精神状態でいられる訳がない。
『セリンを救いたい』それが彼女の生きる原動力なのは間違いなかった。
その原動力がなくなった時、彼女はどうなるのだろうか。二人で幸せに暮らしていくのだろうか。
いや、ファクターを殺した時の彼女の姿を見ていると、アクトスを殺して全てが終わりになるような感じはしなかった。
多分、見てきた絶望の数、いやそれ以上の回数を殺さない限り気が晴れないはずだ。そもそも、気が晴れるということがないかもしれない。
「記憶がなくなれば楽になるのかな……」
そんな事を考えてしまう。プレミアの気持ちを全て理解している訳ではないけど、彼女を救いたいという気持ちは日に日に強くなっていた。
読んでいただきありがとうございます。この回から最終章が始まります。最後までお付き合いいただけると幸いです。
9/6最後の一文削除、変更
12/4体調が戻りましたのでもうすぐ復帰いたします。どうぞよろしくお願いいたします




