クリス/リール視点
街道を抜け、森を抜け、軍は進む。
俺は本隊から離れ、スパルナとクリスが率いる部隊へと合流した。本隊であるミシリ―直轄軍にはレイダーとランス残っている。本隊はファクター軍との交戦を出来るだけ避けながらアクトス国へ侵攻する作戦だ。
ドルビー、プレミア、セリンがいる軍は、俺達の軍と連携を取りながらファクター軍を足止めし、殲滅することが目的となっている。
ファクター軍との交戦はまだ先になることが分かっているが、それでも警戒は怠れない。未来が変わっている可能性は高い。まだミシリ―領内とは言え、ファクター軍が仕掛けて来てもおかしくはなかった。
1日1日が早い。夜空を見上げると、赤い星が瞬いている。プレミアは「あれがメテオです」と言った。
当初、プレミアが話していた1,2か月後という期限はとっくに過ぎていた。本人に確認したところ「少しおおげさに言いました。焦ってくれると思ったので」と申し訳なさそうに言った。「それでも、メテオが姿を現す時期が遅れているのは確かです」とも付け加えた。
ただ単にアクトスを倒すだけでは駄目なのだ。『賢者の石』を手に入れ、あのメテオを止める必要もある。ファクターとアクトスを倒して終わりではない。
それにしても―――アクトスはこの戦いで何を守るのだろうか。滅ぶと分かっている未来で、なぜ軍を率いて戦うのか。それが俺には理解できない。
夜な夜な、そんなことを考えながら眠りについた。
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いよいよ国境付近の平原に到着しようかという時だった。
小川に掛かった橋のところで、魔物の群れと遭遇した。
数は500程度とこちらの半分以下だが、種族はアンデット。肉体の原型を留めていない、多種多様な魔物がこちらに向かっている。なかなか厄介だ。セリンがいれば有利な戦いが出来ただろうに。ファクターが用意した魔物達で間違いはなさそうだ。『失敗した時間』ではこんな魔物はいなかった。
変わり始めた時間が少しずつ顔を覗かせる。
だがそれは悪いことではない。ファクターが倒せる『時間』である前触れかもしれない。
「私が出ます! 」
クリスが馬を走らせ、兵士達の先頭に出る。
「『命』魔術―――罪着そしてーーー裁きの鉄槌!!!!!」
激しい雷と共に、多くのアンデット達が塵一つ残らず消えていく。残ったアンデットも、続く兵士達の攻撃によって倒されていく。
『罪着』を使うことで『裁きの鉄槌』の効果が増す。罪人を裁くためには、まず相手を罪人にしなくてはならないという発想もあるそうだ。
本来空属性であるはずのサンダーであるが、属性の命の特殊性と相まって、それは裁きの光と化す。並みの魔術師では考えられない芸当だ。
こんな人物がギルドで受付役だなんて、未だに信じられなかった。
無理矢理仲間に誘ったことを謝った時のことだ。クリスは、
「血の匂いがする人間は、どうやってもその運命から逃れられないのよね」
と言い、小さく笑った。その姿を、俺は今でもしっかりと覚えている。
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