出陣の日/リール視点
朝。
まだスッキリとしない頭を揺らしながら顔を洗い、朝食を食べ、歯を磨く。
「リール様! おはようございます!」
「おはよう、リール」
元気に扉を開けて入って来たのはプレミアとセリンだ。いつもと変わらない朝。
「いよいよですわね」
「ああ」
違うのは、今日がアクトス国への侵攻の日ということだけだ。
不思議と落ち着いている。俺の記憶では3回目となる出陣の日ということもあるかもしれない。もし失敗してもやり直せるという、どこか甘えの気持ちが余裕として表れているのかもいれない。
出来る限りの準備をしてきたつもりだ。ファクターとアクトスを倒す。その気持ちを持ち続けて努力をしてきた。
俺達は出陣式のために城へ向かった。
道中、プレミアと戦いの目的を再確認する。これは時間を戻す理由であり、俺達がアクトスを倒すための大義名分でもあった。
「アクトスを倒して、メテオから世界を救うこと。そして、ママを死なせないこと」
「そうだ。それが俺達の目的だ」
ミシリ―国が平和のためにアクトスに侵攻するのは、あくまで俺とプレミアの目的達成のための手段でしかない。それを忘れてはいけない。
そして―――俺には22年前の復讐という気持ちもある。今更復讐なんて遅いと言われようが、戦うことに迷いはない。
城に到着すると『ギルド職員の魔術師クリス』と『性格に難がある若手有望戦士ドルビー』が待っていた。
「おそいぞ」
ドルビーが口を尖らせて言う。
「今来たばっかりでしょうが。緊張して遅刻しそうになった癖に」
クリスが冷ややかな目をドルビーに向ける。
「う、うるせえ!」
「お、早速やってるな。クリスのおっぱいが恋しくて喚いてんのか」
「仕方ない人達だ。遊びに行くんじゃないぞ」
楽しそうに割り込んできたのは、『スケベ戦士ランス』と『落ち着いている独身戦士レイダー』だった。
ミシリ―で出会った4人の仲間。4人は出会ってほんの数か月と思っているだろうが、俺とプレミアはそれ以上の時間を過ごしている。死なせたくないし、死なないように鍛えてきた。
「ごめーんっ! また遅刻しちゃったっ!」
大きく手を振っているのは『キングガルーダの姫スパルナ』だった。
「ふふっ。遅いですわよ。あら、今日はかわいいお付きも一緒なのね。こんにちは、ラサヤナちゃん」
「こんにちは!」
娘のラサヤナが満面の笑みで答える。
この笑顔を守るためにも、スパルナを死なせる訳にはいかない。そして、その命を狙うアクトスを倒さねばならない。
ミシリ―国正規軍のヒルチナカ副将軍が俺達を迎えに来た。傭兵部隊である俺達の軍を鍛え抜いたこともあり、この時間でヒルチナカ副将軍とは敵対することはなかった。
広場には2万人を超える兵士達が集まっていた。
俺達は城門の高い所からその光景を見下ろした。何度も見ても圧巻の光景だ。ミシリ―正規軍と傭兵部隊。一番前の兵士の名前なんて、もちろん知らない。しかし、この出陣式も三度目だ。顔はよく知っている。
「おおおおおおお!」
部隊長たちが代わる代わる兵士達に声をかける。その度に、地響きのような歓声が上がる。
彼らは、前の時間では生き残っていたのだろうか。そもそも負け戦であり。死んでいった兵士のが多いに違いない。時間を繰り返せば繰り返すほど、見えなかった世界が見えてくる。
「リール様、最後です。兵士達に勇気あるお言葉をおかけください!!」
ヒルチナカ副将軍が言った。声掛けの順番が最後というのは初めてだった。
信頼されているというのが、ヒシヒシと伝わってくる。大勢の兵士達の目からも、それが伝わってくる。
俺は剣を抜き天に掲げた。そして、世界中に響かせる気持ちを持って、大きな大きな声で言った。
「俺達は世界を平和に導く使者だ!!!! どんな困難があろうとも絶対にアクトスを打ち倒す!!!! 時間は元には戻らない!!! やり直すことはできない!!! 悔いがないよう戦い!!!! そして―――全員で生き残って勝利の美酒に酔いしれよう!!!!」
自分でもなぜこの言葉を選んだのか分からなかった。全員で生き残ることなんてありえないし、時間は戻してやり直すことができるのだ。
分かっているけど―――だからこそ―――そうみんなにそう伝えたかった。
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