酒場②ある男/リール視点
どのくらいの時間が経ったのか。久しぶりに飲んだワインのせいで意識が朦朧としている。いつの間にかにスパルナも合流したようだ。
『『『わはははははは!』』』
笑い声が店内に響く。あちこちで同じような笑い声が響いているため、もう気にもならない。
レイダーはクリスとスパルナに潰されテーブルに突っ伏している。ドルビーは単純に眠いようでうつらうつらしている。俺もどちらかと言えばドルビーよりだ。少し眠い。
「そうだそうだ!! うおおおおおおお!もう少し戦力が欲しい!!」
ビールを机にたたきつけるように置くと、ランスは悔しそうに言った。
「キングガルーダの僕がいるのに贅沢だなっ」
「ふっ……キングガルーダ言えどもしょせん女。力では負けん」
「ないおうっ! 腕相撲で勝負だ!」
「いや! その前に私が相手よ!」
割り込んだのはいいが瞬殺されるクリス。そしてスパルナに勝負を挑み、見せ場なく敗れるランス。
「勝ったっ!!!!」
「くそおおおおおおおお」
悲しみのあまり酒をあおるランス。俺はポンポンと肩を叩いた。
「うううう……悔しい……。でもようリール。戦力が欲しいのは本当なんだよ……」
「そうか? 兵達はいい動きしてると思うが」
「この間正規軍と訓練した時によ、正規軍の中にすげえ強い奴がいたんだよ」
「そりゃあ正規軍だしな。強い奴はいるだろう。一緒に戦うんだから大歓迎じゃないか」
「それがよう、そいつはどこにも所属していないんだと。正規軍に欠員があったみたいでギルドから人を貸したようだ」
「ギルドから?」
何となく嫌な予感がした。
「ああ。レッドって言うんだと。つい最近Aランクに上がったみたいだ。そりゃ気付かんよなあ。誘いたいんだが、いいよな!?」
嫌な予感は的中するものだ。ランスはキラキラとした目で訴えてくる。
プレミアの話によれば、一つ前のタイムリープの原因となった全滅部隊の隊長であり、俺がいなかった戦いにおいては、ファクターを殺すことが可能になる重要人物だ。
「そんなに……強いのか?」
「ドルビーよりは確実に強いな。俺も危ないかもしれん。まあ負けないがね。がははは!」
「それは―――心強いな」
「ああ! 絶対に誘うべきだ!! 何なら俺が声をかけてやるぞ!」
「少し考えさせてくれ」
「考えるんかい!!! なあクリス! レッドは強いよなあ!!!」
「……うーん……知らない!!!!!!!! あははははははは」
「知らないっ! クリスちゃんギルド職員なのに知らないっ!!! あははははは」
「なんで知らないんだよー」と文句を言うランス。「そんなことより酒だ!」とはしゃぐクリスとスパルナ。
その後、レッドの話題になることはなかった。飲み会は無事に終わり、目が覚めたドルビーがランスとレイダーを連れ家へと帰っていった。
俺は酔い潰れたクリスをおんぶし、スパルナと共に家へと向かった。
「うう……気持ちわるい…」
「吐くなよー。背中で吐いたらただじゃすまないぞ」
「スパルナちゃあん……リールが厳しいよう……」
「クリスちゃん、飲み過ぎだぞっ!」
「スパルナもフラフラじゃないか。ほら、手を貸せ」
「らいじょ~~~~ぶっ!」
足取りはおぼつなく、フラフラっと通行人の方へ向かって行く。
「あ!」
ぶつかると思った瞬間、軽やかな身のこなしでスパルナを交わし、そのまま転びそうなスパルナを寸前で優しく抱きかかえた。
「大丈夫ですか? お嬢さん」
「は、はい……」
「まったく……本当に申し訳ございません」
「いえいえ、こんなに素敵な女性が飛び込んでくるなんて、今日は幸運ですよ」
「そう言ってもらえると……ほら! スパルナもお礼!」
「ありがとうございますっ!!」
「まったく……」
頭を下げ、その男と別れた。夜でも分かる姿勢の良さと整った顔立ち。どこかの貴族か何かだろうか。あれはモテる。
「あーーーーーーーーー!!!!!!」
「クリスうるさい」
突然背中で大声を出すのはやめろ。耳が潰れる。
「レッドだ、あの子。どこかで見たことあるなあと思った……。相変わらず目の保養になるかっこよさよ」
「レッド? さっきランスが言ってた男か!?」
「うーん、忘れた!!! あははは!!!」
読んでいただきありがとうございます。




