酒場①/リール視点
時間跳躍の魔法を覚えてから一か月が過ぎた。今はようやく20~30秒過去に時間を戻せるようになった。
プレミアと比べるとたいしたことがないが、毎日少しずつ成長が感じられるのは悪くなかった。
「リール様、今日もお疲れ様でした」
いつもの個人トレーニングが終わった。
「お疲れ様。やっぱり今日の夜は来れないのか?」
今日は軍のトレーニングが休みだった。そういう日はクリスやドルビー達とは定期的に食事会をしていた。
「相手の方が今日でないと時間が取れないそうで……。私も行きたいのですが……」
プレミアはしょんぼりとしている。プレミアとセリンは、知り合いのお偉いさんと食事をする予定があるそうだ。
「どうせまた集まるから気にするなよ。それより、ミシリ―軍との合同演習の話はどうなったんだ?」
「軍の上層部が不思議がっていましたが、とりあえずは納得してくれたようです。別日の調整を続けているという話もありますが……。たしかに一度も軍事演習を行わないのは不安になるかもです……」
「やっぱり問題はそこだよな……」
軍としての練度が低ければ負ける確率も当然高くなる。軍事演習を回避したのはいいが、アクトス軍と戦う能力がなければ本末転倒だ。
「少し考えてみる。全滅したというレッドの部隊は、今回スパルナが率いている。もしかすると違う結果になるかもしれない」
「少しでもアクトスに勝てる可能性を高めたいですね」
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日が沈み夜になった。人が多い中央通りから横道に入ったところに、小さな酒場が集まった場所がある。その一角に『酒場バルバル』はある。
今日はここで飲む約束になっていた。ちなみにスパルナは少し遅れるとのこと。
「遅いぞーー!!」
ビールを片手に手を振っているのはクリスだった。すでに一人で飲み始めている。
「遅くない。飲むの早すぎる」
「えー! そうかなあ!」
席に着きビールを一つ注文する。その間にドルビー、ランス、レイダーが続けてやってきた。
「あ、おれミルクで」
躊躇なくミルクを注文したのはドルビーだ。偉そうな振る舞いと口の悪さの割にやってることがお子様であることが多い。
特にセリンが指導を始めてから生活態度は良くなってきたが、お子様化の進行がより顕著になっている。
「でたミルクボーイ」
そして茶化すのはランスだ。親分気質が強く、若い兵士の面倒見がとても良かった。
「うるさいなあ。ミルクが好きでもいいでしょうが」
「そんなにミルクが好きならクリスのおっぱい飲ませてもらえよ」
「セ、セリン様のがいいなあ……」
その言葉にクリスの拳がランスとドルビーの頭に向かって放たれる。ドルビーもその言葉に乗るから……。
ランスの女癖が悪いというのはまさにその通りで、付き合いが深くなるにつれ、さらに下ネタじじいと化していた。
プレミアとセリンにはあまり言うことはないが、クリスには言いたい放題だった。
「私はワインをいただきたい」
ワインを注文したのはレイダーだった。ランスとは逆で真面目で口数が少ない。ランスがこんな感じなのでちょうどいいバランスでもある。
「まったく……スケベな男どもはレイダーを見習え!」
早々にビールを平らげたクリスは文句を言っている。ご機嫌のようで、良い感じに酔い始めていた。
全ての飲み物が届いた。乾杯は俺だ。今日言わなくてはいけないことは決まっている。
「クリスのおっぱいに乾杯」
「「「「かんぱーい!!」」」」
「ってなんじゃそりゃー!!! わたしのおっぱいが関係あるかー!!!!」
クリスの激しい突っ込みと共に拳が頭に飛んでくる。たいして痛くはない。ゲラゲラと笑っている姿を見て、少しホッとする。
今日はそういう流れの日なのだろう。楽しんでいるのなら、それは間違いではないはずだ。スベってたらタイムリープすればよし。もちろん心の傷は癒えないが。
読んでいただきありがとうございます。またブックマーク、評価ありがとうございます。酒場②は10/23 23時に投稿予定です。




