二回目①/リール視点
『時間停止』の魔法を解く。
目の前に広がっていた地獄のような光景は、元の穏やかな草原へと戻っていた。
もちろんレッドの亡骸も元通りだ。
「どう……されましたか?」
先ほどまで泣いていたプレミアが不思議そうに問いかけてきた。
「いや、なんでもない。レッドの事を思い返していたんだ」
「よくお話されてましたもんね」
「ああ。救ってやりたかった」
「……」
「一度主力部隊に戻ろう。残念ながら生存者はいない。それに、どこかで敵が潜んでいる可能性を考えないといけない。一部隊を壊滅させる戦力だ。二人では流石に厳しいから」
「………はい」
「よし。そうと決まれば急ごうか」
ニセモノのレッドの亡骸が次第に遠くなる。相変わらず周辺には敵の気配はない。
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もうすぐ主力部隊に合流するところまで来た時だった。
「時間を戻せるという話覚えて……ますか? 」
プレミアが言いにくそうに口を開いた。
もちろん覚えている。瀕死の兵士が飛び込んで来たため話が途中になってしまったが、少し気になっている話ではあった。
「ああ覚えるよ。どのくらい戻せるの? 一時間は……流石に長いかな」
時間停止の魔法で数秒止めるだけでもなかなかしんどい。時間を操るというのは、わずかな時間であっても影響する範囲が大きすぎるのだ。
「もっと……」
「もっと? 2時間くらいかな?」
「年……単位です」
「年!!!!!!!! 本当に?」
「はい……戻れる時間に限りはありますが……」
俺は馬を止め、プレミアの目をじっと見た。嘘をついているようには見えないし、そもそも嘘をつく理由がない。
「今まで使ったことは?」
「少しだけ……1,2回くらいですかね……」
もの凄くばつが悪そうな顔をしている。
「嘘だ、な」
「……」
小さく頷く。回数は言おうとしないのか、それとも言えないほど時間を戻しているのか。
「でも……リール様と出会ってからなら……本当です」
「一回戻してるのか!?」
「はい……」
ふと考える。それはいつだろうかと。一つ違和感があるとすれば、カサティーユ城に向かう途中に不快な夢を見たくらいだろうか。時間を戻したことがあるということは、道中に取り返しのできない事件が起きたことの証拠でもある。
「何があった聞いてもいいか?」
「ママが……カサティーユ伯に殺されました」
そう言うと、プレミアは今にも泣きそうな表情になった。セリンが殺さたなら、確かに時間を戻す選択は当然だと思った。きっと自分でもそうするはずだ。
「そうか……辛かったな」
「……」
プレミアが小さく頷く。
「―――実は、この時間も戻そうと思っています。レッドがいなくなると、この後戦うことになるファクターを殺せません。ラグナロクはなおさら……」
「ファクターと戦ったことがあるんだな」
「はい。その経験から、この時間で戦うことを諦めるべきだと判断しました」
その言葉は力強く、そして氷のような冷たさを感じた。この時間をすで諦めているゆえか。もしかすると、この会話のやり取りすら無駄な時間と考えているようにも感じた。
それも当然だ。俺はその時の失敗の記憶を覚えていない。記憶がなければなかったことと同じだ。もし記憶が残っていればプレミアを助けることができるのに―――。
「いつ頃に戻る予定なんだ?」
「原因を突き止めてと思ってましたが……。一度昨日に戻って、この演習を中止することから始めようと思っています。みんなを助けたいです……。色々試してみようと思っています……」
みんなを助けたい―――。研修を中止すれば、確かにそれは可能かもしれない。
しかし、大きな問題がある。正規軍の中央部隊の死体が魔術で隠されていたこと、そして、レッドの亡骸がニセモノだったことだ。
俺はその事実をプレミアに話した。本来は主力部隊と合流してから話すつもりだった。
「それ……本当ですか……? 全く気付きませんでした……」
「ああ。理由は分からない。そして、レッドは生きている可能性もある」
「敵に連れ去られ可能性もあるってことですか?」
「その逆もありえる」
「敵……ですか……?それはありえないと思いますが……」
「あくまでも可能性の話だ。参考程度に。気にしないでくれ」
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