能力試験②/リール視点
連れてこられたのは冒険者ギルド内にある闘技場だった。
「傭兵部隊の能力試験」とギルマスに言われてしまっては、もはや引くことが出来なかった。プレミアとセリンが不安そうな顔をしている。
「武器はどうする? 魔法のみで戦うのか?」
ガーディンが声をかけてきた。闘技場には多くの武器が立てかけられていた。ギルドの職員が持ってきたようで、どれも練習用の武器のようだった。
練習用と言っても『切れない』だけで、頭に攻撃を受ければ普通に死んでしまうし、それ以外でも骨折は免れない。
直撃だけは避けないといけないし、こちらも殺すような攻撃は出来ない。
己の力をコントロールが出来る、という信用の下で成り立つ戦いだった。
「片手剣を借ります」
剣を含め武器は得意ではない。なにせ俺は魔術師だからだ。杖などで魔力を増幅させるのが一般的だ。
ただ一対一では話は別だ。武器がないと間合いを取れず不利になる。苦手でも武器を持った方がいい。
ガーディンのような戦士タイプ、さらに大斧使いとなると『火焔』で武器を強化した方が戦いやすい。
剣を振り回し感触を確かめる。これで十分か。
「はっはっはっ! 剣の使い方はまるで素人だな」
別に悔しくはない。ただの事実だ。
「剣よりも包丁のが似合う人間なんで。お手柔らかにお願いします」
「がっかりさせんでくれよ」
開始の合図もなく、戦いは始まった。
ガーディンは50過ぎとは思えないほど俊敏なステップで間合いを詰めてくる。
いわゆる『戦士系』と『魔術師系』の違いは魔法が使えるかどうかではない。『魔力』と呼ばれる力を自分の肉体だけで消化し、それ以外の性質を持たせられない人間が『戦士系』だ
戦士と魔術師、どちらが強いというのはない。
『魔力』が大きければ大きいほど肉体は強化され、『戦士系』も強くなる。
やはり手強い。『ウインド:剣』を使いながら応戦するのがやっとだった。
剣には『火焔』を付与しているが、隙がなく、つばぜり合いすらさせてもらえない。ただの飾りのようになっている。
プレミアなのかセリンなのか、自分の戦い方を事細かにガーディンに伝えているはずだ。やりたいことをさせてもらえない。見透かされたように先回りされてしまう。
一定の距離をとれない。『プレーミア 火焔』までいかなくても魔力砲を使いたいのだが、溜めることがままならず、中途半端な魔力砲はガーディンに弾き消されてしまう。
手詰まり感が強い。リフレクトも有効に使えないし、やはりストップも働かない。魔力は俺の方が高いのだが。
戦いにおける引き出しの多さ、経験値が違い過ぎる。
そして、何よりも、『殺せない』ということがこの戦いにおいて一番の足かせであることに気付き始めた。
「どうした? そんなものか?」
ガーディンが笑顔で煽ってくる。クソ、なんとか見返せないものか。
ふと、一つのアイデアが浮かんだ。
闘技場内を走り回りながら、俺は小さな『火焔』を放ちながら、それをストップで止めて回った。攻撃を交わし、間合いを取りつつ、同じ動作を繰り返す。
その数およそ100個。
「火焔! 時雨!」
ストップを同時に解除すると、100個の小さな火焔はガーディンに向かって飛んでいく。
「はっ!! 面白い攻撃だ!!」
笑いながら、恐ろしい速度で火焔を叩き落としている。舞い上がる小さな爆炎。そして煙。あたりの視界はだんだんと悪くなっていった。ガーディンは一つ残らず火焔を叩き落とそうとしていた。
俺には、その隙が欲しかった。
「プレーミア……火焔……」
もちろん放つことはしない。
煙が晴れた時、ガーディンは両手をあげていた。
「さすがだ。リール君、君の勝ちだ」
変わらず笑顔のガーディン。なんとか勝ち取った、ギリギリの勝利だった。
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