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冒険者ギルドにて/リール視点

「お待たせしました!」


 プレミアが大きく手を振る。セリンも一緒のようだ。


「腹減ったな」


 完全に朝食が早かったせいだ。セリンが静かに笑う。


「ふふ、随分リラックスされてますわね」


「そんなことないさ。冒険者ギルドで一番偉い人と会うんだから」


 ミシリ―国のギルドマスター、流石に噂では聞いたことがあった。緊張しないと言えば嘘だ。


 冒険者ギルド内は見慣れた様子だった。アクトスのギルドにも何回か訪れたことがあったが、やはり似たような内装になるのだろう。

 

 多くの冒険者達が貼り出された依頼を覗き込み、談笑し、受付にいるギルド職員と話をしている。隣接した酒場では、大物のモンスターを退治したという冒険者が、自慢話と共に酒をあおっていた。


「私とママが職員さんに話をしてきますので、リール様は少しここでお待ちください」


「わかった」


 なんやかんや言っても俺はよそ者である。二人の信用が頼みだった。


 遠くに行かない程度にプラプラとうろつく。この辺りはどんな依頼があるのだろうか。


 『Sランク依頼』と書かれた掲示板を眺める。冒険者ギルドのランクも、基本的には魔術師ギルドと同じで、最高は4Sだ。違いは完全に成果主義ということらしい。どれだけ難易度の高い依頼をこなしたかが評価となっていると聞いた。


「おいおい、そこはSランクの依頼でちゅよ、おじいちゃん? Cランクは向こう」


 なんだか柄が悪い奴がいるな。おじいちゃんの冒険者もいるというのが、Cランクと言えども活動していること自体が凄い。もう少しお年寄りを敬えないものか。


「おい! 聞こえねえのか! 邪魔だって言ってるんだ!」


 随分ご立腹だな。辺りを見渡すと俺以外誰もいない。おじいちゃんはどこ行ったんだ?


「お前だよ! お前!」


 ああ俺の事だったのか。声の相手は細身の男で、10代後半くらいに見える。三人パーティの真ん中で二人の女性を従えてる。皆同じくらいの年齢のようだ。


 確かに年齢はかなり上になるが、おじいちゃんとは流石に言い過ぎだ。


「悪いな。俺の事だと思わなかった」


「ちっ! よく見たらギルドの登録すらしてねえ。素人じゃねえか。受付は向こうだ。さっさと目の前から消えろ」


 そう言うと受付を指差した。


「ありがとう」


 登録するつもりはもちろんない。きっと名のある冒険者なのだろう。この若さでこの振舞い。少し興味が湧いた。


「ところで、あなたの冒険者ランクはいくつなんですか?」


「はあ? Sだよ。見て分かんねえのかというか、分かんねえよな、素人だし。だからお前が邪魔だったんだよ。そこの依頼が見たいんだ」


 そう言うと、剣を抜き、掲示板の依頼書を剣先で刺した。依頼書には『北方に出現した大型の獣モンスター退治』と書かれている。


「すまなかったな。若いのにSランクなのか」


「その年で冒険者ギルド、しかも素人ってもの随分恥ずかしいな。無職野郎」


 喧嘩するつもりはないが、どうにも俺の事が気に入らないようだった。いちいち突っかかってくる。


「おーい! 職員さん!! このじじいを登録してやってくれ」


 男は若い女性のギルドの職員が呼びつけた。


 女性の職員は勢いよくやってくると「ありがとうございました」と男に深々と頭を下げ、俺の腕を思いっきり引っ張り受付へと連れて行った。


「ダメですよ! 絡まれたら早く逃げないと! あいつ怒ると見境なくなって危ないんですよ。凄い威圧してたでしょ? ホントよく怯みませんでしたね……。見てるこっちはヒヤヒヤしてましたよ」


「そこまで強そうじゃないし大丈夫だよ」


「はあ……。あの人はSランクですよ……。その自信はどこから……。もういいです。冒険者ギルドの登録をしていくんですよね?」


 目の前に書類が出された。これを書くと冒険者ギルドに登録されるらしい。


「登録はしない。そこで話してるプレミアとセリンを待っているだけ」


「え? え? あのお二人の知り合いの方ですか?」


「そう」


「え? もしかして、もの凄く偉い方ですか」


「別に俺は偉くないよ。ただギルマスさんに会いに来ただけ」


「それは十分すご……。失礼しましたーーー!」


 女性の職員は深々と頭を下げた。そんなに頭下げなくても。周りがちょっとざわついてるし。

 

 少し離れたところにいたセリンとプレミアの二人と目が合った。楽しそうに笑っている。


 どうやら若い冒険者に絡まれている一部始終を見ていたような感じだ。手招きをしている。


 準備が出来ていたなら、すぐに呼んで欲しかったなあ。

読んでいただきありがとうございます。

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