作戦会議/突破口/リール視点
俺とスパルナは野営地に戻った。途中で運よく野ウサギがいたので捕まえた。今日の晩御飯をどうしようか迷っていただけにありがたかった。
「本当はガルーダが夕食だったんだけどなあ」
と冗談で言ってみたら「ガルーダとキングガルーダは別物だからね。私達もガルーダは食べるよっ」と真面目に返されてしまった。人間的には似た種族でも、魔物界隈では全くの別物ということらしい。驚きの事実だ。
野営地に到着してから、更に驚いた。なんとセリンとスパルナが知り合いだった。どうやらプレミアも知らなかったようだ。
「どういう関係なんだ……?」
聞かずにはいられない。
「えっとね。さっき言った、子供の時に助けてくれた人間ってセリンなんだよ」
スパルナがそう答えた。何回驚くのか言われればその通りだ。世間は狭い。まさかスパルナを助けた人物がセリンだったとは。
「へえー、ママが助けた人だったんだ。こんなところで会うなんてすごい偶然だね」
「そうですわね……。人というか、スパルナはキングガルーダですわ」
「えっ? キングガルーダってあの伝説の魔物でしょ?」
プレミアも先ほどからずっと驚いている。セリンの話によると、魔王退治の旅をしている途中にケガをしたスパルナ(人間状態)と出会い助けたということだった。キングガルーダの王女と知ったのはその後だったそうだ。
「王女だったのか」
「今は姫だけどねっ」
次々に飛び出す新情報にセリンもプレミアも混乱している。
「とりあえず飯にしよう。準備をするからさ。セリン、スパルナのケガを治してやってくれ。こう見えて酷いけがをしてる。俺の力だと治しきれなかった」
「あら、それは大変ですわね。まかせてください」
「久しぶりのセリンのヒール楽しみだっ」
もはやヒールがアトラクション扱いになっている。
***
ウサギの内臓と肉を取り出し、塩と胡椒でしっかりと味を付け、香草に包んで焼く。この香草がいい味を出していて、肉を柔らかくし臭みを消してくれる。
そして、あらかじめ丸めておいた小麦粉の塊を小さく薄く切っていく。それを余った部位と山菜で煮込んだスープに入れていく。
まあこんなものだろ。『ウサギの香草焼きとモチモチ山菜スープ』の出来上がりだ。
「リール様おいひいです!」
「熱いの苦手なんだろ。ゆっくり冷ましてくえよ」
「はひィ!!」
幸せそうに食べている。今回は熱の調整に少し魔法を使用している。短時間で作るための苦肉の策だった。本当は薪からキッチリ火を作りたかったがしょうがない。
セリンとスパルナも旨そうに食べている。その様子を見て、少し胸を撫でおろす。初めて作る料理の反応はやはり気になるものだ。この表情を見れただけでも、今日の疲れが吹っ飛ぶ気がした。
***
食事が終わり、いよいよ本題に入らないといけない。国境を超える前にスパルナの娘を助ける時間をもらう必要があった。二人なら反対はしないはずだが、現在の計画に支障が出る可能性もあった。
「カサティーユ城のことなんだが」
俺のその言葉にセリンとプレミアの表情が固まったのが分かった。そして、プレミアが小さく手を挙げた。
「あの……そのことなんですが……一度計画を練り直したいなと……」
「あ、ああ……それは別に構わないが」
計画の練り直し? 俺がいない間に何かあったのだろうか。今朝までの自信に溢れたプレミアの姿はなかった。ただ、少し言い出しやすい状況にはなった。
「実は、スパルナの娘がカサティーユ城に捕まっているそうだ。どうしても助け出したい。手を貸してくれないか?」
「えっ? ほんとう? ひどい。絶対に助けないとダメだよね」
「そうですわね」
二人が強く頷いた。よかった。二人なら断らないと思っていた。
「ありがとうっ!!!!!!」
スパルナが二人に抱きつく。
「絶対助けようね! どんな子なの?」
「真っ黒い黒髪がチャームポイントの10歳の女の子だよっ」
なんだろう、その子を見たことがあるような気がする。プレミアも何やら考え事をしているようだ。もしかしたら、ここまでの道中で見かけているのかもしれない。
「それで、どうやって助けましょうか? あの城にはかなり強い人物がいるのは確実ですわ。スパルナでも敵わなかった。正面から立ち向かうのは危険すぎますわよ?」
「それなら大丈夫かもしれない。さっき時を止める魔法を覚えたんだ。コッソリ侵入してその子だけ連れてくる」
使った感じ人間にも十分に効く。ストップで兵士達を止めながら女の子を探すのが得策のはずだ。騒ぎにしてしまったら、きっと女の子を連れ去って逃げてしまうからな。
「いつの間にそんな魔法を……。リール様、凄いですね……」
「心強いですわ。ただ、女の子を救出した後はどうするんですの? スパルナ達を村に返す形で良いのですか?」
「迷惑じゃなければ、僕たちも一緒にミシリーに連れて行ってよ!」
スパルナが言った。だがセリンは困ったように、
「ちょっと交通手段があてに出来なくなりましてね……」
と言った。
「だったら、僕が背中に乗せていってあげるよ。元の村には流石に戻りづらいし、もし良かったら今後も旅を手伝うよ」
「ほんとうに!!!!! ありがとう!!!!」
プレミアの、今日一番の驚きの反応だった。何がともあれ作戦は決まったようだ。
「よし、じゃあ決まったな。俺が兵士達をストップの魔法で止めながら侵入し、女の子を連れだす」
「私とプレミアは待機ですか?」
確かに分かれて行動しても問題ないはずだ。ただ、分かれて行動するということに、心の底から嫌悪感を覚えた。
「いや、一緒に行こう。分かれて行動するのは危険かもしれない。プレミアの体調も心配だ。」
「わかりましたわ」
セリンが大きく頷いた。そして、プレミアは、なんとなくだが安堵したように見えた。
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