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休息/リール視点

「見えてきましたわね」


 セリンが荷車から顔を出し、眠い目を擦りながら言った。酷い寝ぐせだ。なぜか既視感を覚えたが、俺はセリンが言う方向に向かって必死に目を凝らした。確かに塔のようなものがボンヤリと見える。


「本当に通してくれるのか?」


 俺はプレミアに尋ねた。バルドルが殺された今、国境付近の警備が厳しくなっているのは当然であった。


「……え……ええ……」


 プレミアの様子がおかしいのはすぐに分かった。覇気がなく、常にボーっとしている。先ほど目を覚ましてからずっとこんな感じだ。


「大丈夫、プレミア?」


 セリンが優しく声をかけた。俺と同じようにプレミアの様子がおかしいのに気付いたようだ。


 俺は馬達を止めた。


「一度引き換えそう。今日は寒いし体調を崩したのかもしれない」


「え……でも……」


 プレミアはその提案に困った様子を見せた。しかし、


「そうさせてもらいましょう。ありがとう、リール」


 というセリンの言葉が最終的に効いたようだった。


 俺達は、昨夜野宿した場所に引き返すことになった。急ぎの旅であることには変わりはないが、無理をして失敗をしたら元の子もない。幸い追ってもなく、周辺には強力な魔物がいそうな気配もない。ならば今日は無理をする必要はない。


「戻ったら栄養のある食べ物を作ってやるよ」


「……ありがとうございます、リール様」


 どこかホッとした表情に見えた。俺に会う前から旅をしていたようだし、最近は戦いが続いていた。プレーン村で3日休んだとはいえ、このタイミングで疲れが一気に出たのだろう。


 今持ってきている食べ物でも十分かもしれないが、もし食べられる動物か魔物がいれば捕まえたい。戻ったら少し探してみるか。


********


 野営地に戻った俺達はすぐにテントを張り、火を起こした。雨で体が少し濡れたせいもあり体が冷えていた。火の温かさが体の芯まで染みわたってくる。外では弱い雨が降り続いている。


 野営地には結界が張っており、魔物なんかが近づくことは出来ない。

 

 プレミアは両手を火にかざし体を温めていた。その脇でお湯を沸かし紅茶を作った。そこにプレーン村でもらった酸味の強いフルーツと砂糖を加える。体を温めるにはこの紅茶が一番だ。


「熱いぞ」


「あつっ!」


「だから熱いと」


「へへへ」

 

 満面の笑顔だ。フーフーと息を吹きかけ紅茶を冷ましている。


「美味しいですわね、この紅茶」


 セリンも熱いのが苦手なようで、冷ましながら紅茶を飲んでいる。こういうのを見ると母娘だなあと思う。


「一応それでお金もらってましたからね」


「魔術師より向いてますわ」


「俺もそう思う」


「4Sの魔力を超える紅茶ってすごいね……」


「確かにそうですわね」


 セリンが笑い、それにつられてプレミアが笑い、俺も笑った。


 相変わらず弱い雨が降り続いている。のんびりとした時間が流れていた。


 *********


 夕方が近くなった頃、馬車が野営地に入ってきた。カサティーユ城の方向からやってきたようだった。


 見ると若い商人夫婦のようだ。手際よくテントを張ると、20代後半くらいの男性がこちらに挨拶にきた。


「こんにちは。今日はご一緒させていただきますね」


「こちらこそ」


「いやー近くで巨大な鳥がいましてね。ガルーダかな? 飛ばして野営地まで来ましたよ。いやー怖かった。アクトス様が魔王を倒してから減ってたんですが、最近また増えてきましたね。お互い気を付けましょう」


 そう言うと男は自分のテントに戻った。


 確かガルーダはかなり美味い。そして栄養豊富のはずだ。


 ちょっと狩りに行くか。今日の晩飯が決まった瞬間だった。

読んでいただきありがとうございます。またブックマークありがとうございます。

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