ラグナロクという男/リール視点
ゆっくりと間合いをとる。もちろん長槍なんて使いこなせる訳がない。それでも戦うしかない。槍先の炎がユラユラと揺れている。少しでも相手に触れればダメージを与えられるはずだ。
思いっきり踏み込み、金髪の男に向かって攻撃した。
「くらえ!!!」
「……ぬるいな」
金髪の男は投げ捨てるような言葉と共に、剣で俺の攻撃を受け止めた。と同時に槍先に付与した魔法『火焔』が襲い掛かる。
大きな爆発音と共に金髪の男の剣が粉々に砕け散った。よし、上々だ。体に当てたかったが、自分の槍の技術からすれば上手くいったと言える。
金髪の男は、粉々になった剣をジッと見つめていた。表情はあまり変わらないが、少し驚いているようにも見えた。
「次は体に当てる。命が惜しければ引け」
「………」
何も言い返してこない。やはり命の取り合いになるのか。
「ラグナロク様! そいつを殺してください!」
カサティーユ伯が、金髪の男に声をかけた。そうか、あいつはラグナロクという名前なのか。
ラグナロクは左手をこちらに向けた。何をやるつもりだ?
魔力が次第に集まっていく。なんだこの魔力は。どんどん大きくなる。まずい、あれをぶっ放すのか!
「リフレクト!! レフレクシオン!!!」
左腕に展開していたリフレクトの魔力を上げた。ラグナロクの魔力がまだ上がっていく。
レフレクシオンまで魔力を高めれば押し切られないはずだ。生身であの魔法を受けたらと思うとゾッとする。この城一つを軽く消し飛ばせる魔力だ。
「………やめた」
その言葉と共に、ラグナロクの左手に集まっていた魔力が消えていった。
「……なるほど、かなりの魔力だ。あいにく無駄な攻撃はしない主義でね。この城を壊したくない。また会えるのを楽しみにしている」
ラグナロクはそう言うと、王の間から出て行ってしまった。ただ去っていく後ろ姿眺めているしかなかった。
カサティーユ伯が「ラグナロク様! 見捨てないでください! ラグナロク様!」と助けを懇願しているのがなんとも哀れだ。
もし魔術師ランクを測ったら、間違いなく最高ランクの4Sになるはずだ。あんな人間がこの国にいたのか。
周りを見渡すと、いつの間にか兵士達が俺を取り囲んでいた。ボロボロでまともに戦えそうなのはいないのに。一人の兵士が10歳くらいの黒髪の少女を腕に抱えていた。
「一歩でも動いてみろ!!! この奴隷の首が飛ぶぞ!! お前のせいで罪のない人間が死ぬ!! お前達は正義のためにアクトス様の命を狙っているんだろう? だったら動くな!!」
少女の首元に刃物が突き立てられ、わずかながら血が滴り落ちている。
腐ってんな、と思った。命令する奴もそれに従う奴らも。
「ウインド:剣」
兵士たちの首を的確に狙って切り落とした。魔力が戻っている。魔力が抑えられていたのは、やはりラグナロクの力だったか。崩れ落ちていく兵士の腕から少女を助け出した。
「あ、ありがとうございます!!」
少女は泣いて喜んだ。こんなところで奴隷をしていたんだ。さぞ辛かっただろう。
「ひ、ひいいっ。い、いのちだけはっ!!」と怯えるカサティーユ伯の首を掴み、プレミアとセリンの場所を聞きだした。
そして「お疲れ様」と声をかけ、カサティーユ伯の命を奪った。
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