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強敵/リール視点

 見張りの兵士を『ストップ』の魔法で時間停止させながら城内へ侵入していった。


 魔力自体の消耗が大きめなのがネックであることが分かってきたが、何百人という兵士の時間を止める訳ではないので問題はない。


 しかし、不気味なほど静かだ。戦ったような形跡もない。「盛り上がって時間が経つのを忘れてました!」なんてプレミアの陽気な言葉を想像してしまう。そうであって欲しい。


 ある部屋の前に到着した時だった。


 わずかながら魔力の残り香を感じた。何らかの魔法が使われた痕跡こんせきだった。どうやら客間のようで、ゆっくりと扉を開けた。


 誰もいない。整然と机と椅子が並べられている。争った形跡は感じられない。しかし、魔力の痕跡だけはハッキリと感じることができた。


 二人はこの部屋にいた。


 胸騒ぎが止まらない。どこか別の場所に連れ去られた可能性がある。早く見つけないといけない。クソ! 無理やりにでもついていくべきだった。


 その時だった。かすかに男の怒鳴り声が聞こえた。


 声の聞こえる方へ急いで向かった。声が少しずつ大きくなる。そして、衝撃的な言葉が聞こえてきた。


 「二人を生け捕りにしろと伝えたはずだ!!! 誰がセリンを殺していいと言った!!!」


 セリンが……殺された? 


 声の主はカサティーユ伯だろうか。王の間から聞こえてくる。

 

 扉の隙間からコッソリと覗くと、数十人の兵士を前にして、カサティーユ伯と思われる人物が怒り狂っていた。金が減るだの、アクトスに顔向けできないなんてことを大声でわめいていた。


 しばらく間、その話を呆然と聞き続けた。


 体中から力が抜けていくのが分かった。なぜもっと早く行動を起こさなかったのか。判断が遅すぎた。後悔の気持ちが体中を縛っていく。


 そうだ、プレミアは? 今の話からすると、プレミアはまだ生きてどこかに捕らえられているはずだ。プレミアも死なす訳にはいかない。絶対に助けないといけない。


 まさに顔を上げた時だった。光の球体が俺に襲い掛かってきた。


 リフレクトの魔法が間に合わない。なんとか防御の体制を取ったが、体ごと吹っ飛ばされるのが分かった。


 王間の扉が破壊され、そのまま空中に投げ出された。なんとか体を上手く捻り、カサティーユ伯の前で着地した。


 服はボロボロになり、体あちこちに血が滲んでいる。防御の体制をとっても、ここまでダメージを受けるのか。


「何者だ!!」


 カサティーユ伯は慌てた様子で兵士達に取り囲むよう指示を出した。こんな奴らに構っている暇はない。


「ウインド! 剣!」


 刃を付与した風が兵士達を襲う。バタバタと兵士達が倒れていった。ただ、兵士達には息がある。今回は殺す覚悟で魔力を高めたはずだ。魔力が抑えられてるのか?


 兵士達が倒れた隙間から、甲冑かっちゅうを纏った金髪が近寄って来た。


「……よく魔法が使えますね」


 明らかに他の兵士とは違う。押しつぶされそうな程の威圧感と溢れ出る魔力。バルドルとは格が違う強さを感じる。


「プレミアとセリンはどこだ?」

 

 俺はその男に問いかけた。


「……地下牢にいますよ」


「そうか、感謝する。じゃあ、そこをどけ」


「……」


 何も答えないと思ったのも束の間、剣先が目の前に現れた。体を倒し、寸前で回避する。しかし、二手、三手、四手と剣を続け様に振り下ろしてくる。早い!


「リフレクト!!!」


 リフレクトを左腕に展開。盾の代わりとして使用することで、何とか追撃をしのぎ切った。ストップの魔法は効くのだろうか? 試してもいいが、覚えたての質の低い魔法が効くとも思えない。それ以上に、ストップを使用している暇がない。


「……強いな」


 それはこっちのセリフだ。


 武器が欲しい。何らかの力で魔力が抑えられている。万が一『プレーミア』で仕留めそこなうと厄介だ。俺はここからプレミアを救い出す必要がある。ストップを使い続けているのもあるが、出来る限り魔力消費を抑えたい。


 武器は―――。


 近くに倒れていた兵士から長槍を拝借した。上物ではない。しかし、


「属性付与、火焔」


 魔力をまとわせれば使い物になる。槍先の火がユラユラと揺れている。俺は、長槍を金髪の男に向けて、攻撃の体勢をとった。

読んでいただきありがとうございます。

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