新しい魔法/リール視点
俺は、待機していた兵士の詰め所からの退出を命じられた。もはや大事な客の連れという肩書はなくなったようで「さっさと歩け!」と別に伝える必要もなさそうな言葉を浴びせられながら部屋を出た。
乗って来た馬車はセリン達がミシリ―に行くために使うということで、最低限の食料とテントだけ渡され城外へと誘導される。三人の兵士達は長槍を持ったまま、俺の動きを逐一観察していた。
俺はセリンとプレミアを助けに行く方法を考えていた。得意の火属性と風属性の攻撃魔法を使って兵士達をなぎ倒しながら探してもいいが、あまり大きい騒ぎになってしまうと二人に危害が及ぶ可能性が出てくる。助けを求める行動が取れないことが、二人が身動きが取れない危険な状態にあることを示唆してる。
相手を眠らせることができれば楽なのだが、残念ながらスリープ系の魔法は使えない。もう一度自分の手札である魔法を見直す必要がある。
現在使用できる魔法は―――。
火属性→攻撃:火焔(最大出力時はプレーミア)
補助:攻撃時属性付加
風属性→攻撃:剣
補助:治癒
?属性→リフレクト
以上。
魔力の高さによる攻撃魔法で押し切れてしまう分、今回のような隠密的な動きは苦手だ。魔法のバリエーションと実戦経験による応用力が足りない。4Sという評価もただの数値的なランク付けだ。
10歳の時に魔術師を引退して、その後の22年間はコーヒー屋の店主をやっていたので当然といえば当然だ。引退後に覚えた魔法は、近所で倒れていた子犬を助けた時に覚えた『風属性の治癒』のみ。
覚える、か―――。
自分の属性の事を思い出した。ずっと火属性と風属性だと思っていたが、実際には空属性と時属性も持っていたことだ。
空属性はどう使うのだろう。そうだ、バルドルと戦った時にドラゴンを召喚していた。セリンは魔物を召喚できると言っていた。ではそれをどう使う? この状況で魔物を呼ぶか? ただただ混乱が増すだけだ。術者に会ったことがないので他の使用用途が思いつかない。
じゃあ時属性だ。こちらなら想像が出来る。プレミアの肉体強化が参考になる。肉体を未来の姿に変化させていた。魔力を使って時間の流れを操るのが基本なのだろう。
ならば兵士達の時間を止めれれないか―――。
そのアイデアが頭をよぎった瞬間、俺の体の中に、小さな懐中時計が作られていくのがハッキリと分かった。
秒針の音は弱々しく、すぐにでも止まってしまいそうだけど、確かに新しい何かが生まれた瞬間だった。
「時属性……時間停止!!」.
俺は三人の兵士達に向かってそう唱えた。
体内にある懐中時計がカチリと音を立てて止まったのが分かった。
そして、魔法を受けた兵士たちは、まるで人形のように動かなくなった。息をしている様子もなく、頬や体をつねってみても反応がない。どうやら成功したようだ。
ただ、魔法の質が低いため弱い相手で30分がようやくだろう。時間指定も出来ないけど、初めて使った魔法としては上出来だ。
「色々と歓迎ありがとうございました」
流石に止まっている兵士達相手に殴ったり攻撃はしない。彼らも仕事の部分がある。下半身の衣類と下着を剥ぎ取り、その辺の草むらに放り投げた。これならすぐに追って来れないはずだ。
二人を助けに行こう。どうか無事であってくれ。
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