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疑念/リール視点

 馬車でプレーン村を出てから半日が経った。


 太陽は一番高い位置から少しずれ、夕方に変わる準備をし始めている。風はないが、暑くもなければ寒くもない、過ごしやすい陽気だった。俺は馬を操りながら、フェローさんの言葉をぼんやりと考えていた。

 

 『あの当時の彼らに戻って欲しいのです』という言葉。


 もう叶わない願いになっていまったという注釈がついたが、過去の彼らからは現在の姿は信じることができないという話だった。


 当時から彼らの性格は最悪だったはずで、外面が良かっただけだと思っている。ただ、当時の楽しそうに旅をしていた様子を聞いてしまうと、俺を追い出した後のアクトス達の旅を聞いてみたいという気持ちが生まれてしまったのは確かだった。


 実際にセリンは2年間も彼らと寝食を共にしているのだ。


「どうしましたか? 変わりましょうか?」


 後ろから顔を覗き込んできたのはプレミアだった。


「ちょっと考えごとをな」


 プレミアの顔が少し曇ったのが分かった。


「バルドルですか?」


 まだバルドルの事を気にかけていると思っているようだ。あれだけ気持ちが高ぶった姿を見られていたらしょうがないのかもしれない。ただ、もう気持ちの整理はついている。


「もうそのことは気にしてないよ。自分の中でも整理がついた」


「そうですか! よかったです。力になれることがあれば言ってくださいね」


「ああ、助かる」


 ふと、後ろを見ると、セリンはぐっすりと眠っていた。


「セリンの旅の話って聞いたことはあるか?」


 直接聞けばきっと教えてくれるとは思うが、やはり聞きづらい質問ではあった。プレミアは唇に手をあて、少し考えている。


「ママの話ですか……。ちょっとだけ、聞いたことがありますね」


「どんな内容だったんだ?」


「そうですね……。アクトスとバルドルがダンジョンにあった武器をどちらが装備するかで喧嘩になり、呆れたママとファクターが二人を置いて街に戻ったとか」


「他には?」


「戦闘後の反省会が長くて、特に回復のタイミングについてうるさいとか……。たいした話ではないですね」


 確かにたいした話ではない。冒険者であれば経験したであろう苦労話だ。それでも、彼が確かに人間であることを知ることができる話だ。話の細部によっては微笑ましくもある。


「アクトス達を言葉で説得する道があると思うか?」


 答えは分かっている。それでも改めて聞いておきたい言葉だった。


「ゼロです。それだけは断言できます。この命に変えても」


 それは俺もなんとなくだが感じ取ることができていた。彼らに対話の意志は全く感じない。


 ただ、なぜ彼女はここまで自信を持って答えることが出来るのか、それだけは不思議だった。頭の中には謎のモヤモヤが生まれ始めていた。

ありがとうございます。

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