表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/94

証言者/リール視点

 早朝。


 先日借りた馬車がお屋敷の前にやってきた。これから荷物を積み込む作業が始まる。俺たちは3日ほどこのプレーン村で過ごした。


 ミシリ―まで馬車を使っても1週間以上かかるため、食料や生活用品を多く買いそろえる必要があった。途中に小さな村はいくつがあるのだが、大きい村ではないため補給に過度な期待はもてない。


 プレミアとセリンはまだ身支度をしている。女性は時間がかかるものなのでしょうがない。


「リールさん、荷物をこちらにお持ちしてもよろしいでしょうか?」


 声をかけてきたのはこのお屋敷の主であるフェローさんだった。フェローさんには短い期間だったがとてもお世話になった。


「助かります。もうはじめちゃいましょうか」


「ええ、そうしましょう」


 フェローさんが持ってきた荷物を受け取り、荷車に乗せる。受け取っては乗せ、受け取っては乗せ、ひたすらにその作業を繰り返す。


 かなりの重労働だ。額から汗が滴り落ちる。俺でも大変なのに、老紳士であるフェローさんはもっと大変に違いない。きっと服の下は、鍛え抜かれた鋼の筋肉が宿っているのだろう。


 この村の有力者でもあるのに、変な上から目線もなく、こうやって一緒に汗を流してくれる。この姿勢は見習わないといけないな。


「これでっ、おしまいっ……です!」


 最後の荷物を受け取り、荷車に積み込む。


「ありがとうございました! お疲れ様でした」


 俺とフェローさんはハイタッチをした。一仕事終えるのは、やはり気持ちがいい。


「お待たせいたしましたわ。荷物はどちらですか?」


 のんびりと現れたのはセリンだった。真っ白なローブを身にまとい、使い古された杖を持っている。意外と地味だ。普段下着姿でウロウロしてるのが嘘のようだ。


「もう積み終わったよ」


「あら、お手伝いしたかったのに残念ですわ」


「ホントかあ。あまり残念そうに見えないぞ」


「まあ、終わってしまったものはしょうがないですわね」


 ニコニコと笑って答える。


「私は本当に手伝いたかったですよっ!!!」


 そう言って現れたのはプレミアだった。確かにめちゃめちゃ悔しそうな顔をしている。これはきっと本当に手伝いたかったに違いない。プレミアは赤紫色のローブを着ている。母親のセリンとは対照的だった。少し派手だ。


「セリン様が装備しているローブと杖は、魔王を倒した時と同じ物です」


 感慨深げにフェローさんは言った。


「そうなんですか……。伝説の武具と言ったところですね」

 

 ふと、今なら聞けるかもしれないと思った。


 なぜこの二人に肩入れしているのか。なぜ村全体が反アクトスとして動いているのか。何やら詮索をしているようで聞きづらかった。


「そう、伝説の武器と防具です。思えば22年前、ただの冒険者だったアクトス達が『魔王を討伐する』という目的を掲げたのがこの村です」


 おや、聞かなくても何やら語り始めたぞ。


「そう、当時の彼らは、今とは違い、とても勇敢で、優しく、そして強いパーティだったのです。その中にいるセリン様は、それはそれは楽しそうで、きらきらと輝いておりました」

いつもありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ