証言者/リール視点
早朝。
先日借りた馬車がお屋敷の前にやってきた。これから荷物を積み込む作業が始まる。俺たちは3日ほどこのプレーン村で過ごした。
ミシリ―まで馬車を使っても1週間以上かかるため、食料や生活用品を多く買いそろえる必要があった。途中に小さな村はいくつがあるのだが、大きい村ではないため補給に過度な期待はもてない。
プレミアとセリンはまだ身支度をしている。女性は時間がかかるものなのでしょうがない。
「リールさん、荷物をこちらにお持ちしてもよろしいでしょうか?」
声をかけてきたのはこのお屋敷の主であるフェローさんだった。フェローさんには短い期間だったがとてもお世話になった。
「助かります。もうはじめちゃいましょうか」
「ええ、そうしましょう」
フェローさんが持ってきた荷物を受け取り、荷車に乗せる。受け取っては乗せ、受け取っては乗せ、ひたすらにその作業を繰り返す。
かなりの重労働だ。額から汗が滴り落ちる。俺でも大変なのに、老紳士であるフェローさんはもっと大変に違いない。きっと服の下は、鍛え抜かれた鋼の筋肉が宿っているのだろう。
この村の有力者でもあるのに、変な上から目線もなく、こうやって一緒に汗を流してくれる。この姿勢は見習わないといけないな。
「これでっ、おしまいっ……です!」
最後の荷物を受け取り、荷車に積み込む。
「ありがとうございました! お疲れ様でした」
俺とフェローさんはハイタッチをした。一仕事終えるのは、やはり気持ちがいい。
「お待たせいたしましたわ。荷物はどちらですか?」
のんびりと現れたのはセリンだった。真っ白なローブを身にまとい、使い古された杖を持っている。意外と地味だ。普段下着姿でウロウロしてるのが嘘のようだ。
「もう積み終わったよ」
「あら、お手伝いしたかったのに残念ですわ」
「ホントかあ。あまり残念そうに見えないぞ」
「まあ、終わってしまったものはしょうがないですわね」
ニコニコと笑って答える。
「私は本当に手伝いたかったですよっ!!!」
そう言って現れたのはプレミアだった。確かにめちゃめちゃ悔しそうな顔をしている。これはきっと本当に手伝いたかったに違いない。プレミアは赤紫色のローブを着ている。母親のセリンとは対照的だった。少し派手だ。
「セリン様が装備しているローブと杖は、魔王を倒した時と同じ物です」
感慨深げにフェローさんは言った。
「そうなんですか……。伝説の武具と言ったところですね」
ふと、今なら聞けるかもしれないと思った。
なぜこの二人に肩入れしているのか。なぜ村全体が反アクトスとして動いているのか。何やら詮索をしているようで聞きづらかった。
「そう、伝説の武器と防具です。思えば22年前、ただの冒険者だったアクトス達が『魔王を討伐する』という目的を掲げたのがこの村です」
おや、聞かなくても何やら語り始めたぞ。
「そう、当時の彼らは、今とは違い、とても勇敢で、優しく、そして強いパーティだったのです。その中にいるセリン様は、それはそれは楽しそうで、きらきらと輝いておりました」
いつもありがとうございます。




