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旅立ちの準備/リール視点

 目を覚ますと、俺はベッドの中にいた。


 ここまで自分の足で来た記憶があったが、それ以降の記憶がなかった。

 

 誰かが着替えさせてくれたのだろう。頭がガンガンする。体が小さくなってしまった反動なのだろうか。


「あら、起きましたわね」


 扉を開けて入って来たのはセリンだった。食事を持っている。家の中のということもあり、下着が透ける見える服装に着替えようだ。


「ありがとう、着替までしてくれて」


「どういたしましてですわ」


「取り乱してすまなかった」


「気にすることはありませんわ。覚悟はあったとはいえ、人を殺したのですから。人であるなら当然の反応ですわ」


「そうかな」


「ふふ、そうですわ。それにしても、リールがあまりに強くてビックリしましたわ。バルドルもかなり強い戦士だったのですが」


「昔はそう言われると、めちゃくちゃ嬉しかったんだがな。プレミアは元気にしているか? 心配させてしまった」


「ええ、かなり心配しておりましたわね。だからリールの体を拭く係をさせておりました」


「え、俺の体をか!?」


 ありがたいけど、なんとも恥ずかしい。どんな顔をして会えばいいのか。


「冗談ですわ」


「冗談なのか!」


「ふふ、わたくしが拭いておりますから安心してくださいな」


 果たしてそれは安心なんだろうか……。


 プレミアとはキチンと話さないといけない。いい大人が泣く姿を見せるなんて、情けないにも程がある。


 ただ、こうやって他愛のない話をしていると心が落ち着く。本当にセリンは甘えさせるのが上手い。


 さて、これからどうしようか。


 バルドルが死んだことはすぐにアクトスにも伝わるはずだ。今後は更に厳しい追跡にあうだろう。そして、追っての目星は付いている。


「次はファクターのはずだ。どうやって戦う?」


「一度、ミシリ―へ戻ろうと思いますわ。リールの力ならこのままアクトスに挑んでも勝ててしまいそうですが。仲間を集め、万全を期したいと思います」


 ミシリ―とはここから離れたところにある隣国だ。セリンの逃亡先という噂があったが、やはり本当だったのか。


「仲間がいるのか。しかし、アクトスに戦う準備をさせなくてもいいと思うが。セリンの言う通り、俺だけでも戦えるはずだ」


「安心してください。私達は、アクトスへ辿り着く道筋を『知っています』。被害も最小限で済むはずですわ。リールが強さが分かったからこそ、間違いのない選択をしていきたいのです」


「分かった。任せるよ」


 知っているという表現が少し気になった。何か弱点を掴んでいるのだろうか。


「リール様!! 目覚められたのですね!!」


 部屋に飛び込んできたのはプレミアだった。そのままの勢いで俺の胸に飛び込んできた。勢いがありすぎて少し壁に頭をぶつけたぞ。


「よかった……本当によかった」


「心配をかけてすまなかったな」

 

 プレミアは大きく首を振った。


「私が……私が、リール様のお心をお守りします………」


 心を守るか。16歳の女の子にそんなことを言わせてしまうなんて、いくら魔力が高くてもダメなのかも知れないな。


「それでプレミア、村の様子はどうでしたの?」


「そうでした。村は落ち着きを取り戻しています。バルドルが死んだことも、元々反アクトスの村ですから、混乱はなくむしろ歓迎されています。表立っては口にはしませんけどね」


 この村が反アクトスであったことに驚いた。アクトスと共にある観光地なのに。それを悟られないようにするためのカモフラージュなのかもしれない。


「これなら急いで村を出る必要はありませんわね。しっかりと準備をしてミシリ―へ向かいましょう」

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