孤独/プレミア視点
バルドルを倒した後、私たちはすぐにお屋敷に戻った。
家主のフェローさんはとても心配をしていた。私たちが襲われているのに気付いたようで「なぜ私に力がないのだ」とひどく悔しがっていた。
あっという間にバルドルを倒したリール様の姿を見た時、ついに私の願いが叶うと思った。この力があれば、間違いなくアクトスを倒すことができる。思わず小躍りしたくなるほど嬉しかった。
私がバルドルを倒せるようになったのは何回目のやり直しだっただろう?遠い遠い昔のように思える。
私とママでは相性が悪く、バルトルの力任せの攻撃と部下魔術師の補助が重なると太刀打ちが出来なかった。
特に私達には攻撃力が圧倒的に足りなかった。
ママは何度あいつに殺されたのだろうか。思い出したくもない。
私自身に『肉体の強化』の魔法をかけ、バルドルの攻撃力をデバフし、そしてママがタイム型の回復魔法を準備することでようやく倒せたのだ。
そんな相手を数発の魔力を込めたパンチで倒してしまったのだ。リール様はやはり選ばれた人だと思った。
でも、リール様は泣いていた。
昔の復讐と、お店を燃やされたことによる恨み。その恨みを持つ相手を殺したのだ。
きっとリール様は喜ぶと思っていた。
私が、初めてバルドルを倒した(・・・)時は、私はどんな気持ちだったのだろう。
泣いたのかな? 笑ったのかな?
もう忘れてしまった。
「どうしたの? プレミア?」
「ママ……。なんかちょっと疲れちゃって。リール様は?」
「寝室で寝てるわ。幼児から大人、激しい肉体の変化の後だから、体力、魔力共に酷く消耗しているみたい」
「リール様も消耗するんだね。あの強さを見たから、無尽蔵に魔力が沸いて出てくるのかと思った」
「そうね。でもすぐに回復するはず。魔力の回復速度が普通の魔術師とは全然違うの」
「さすがリール様! きっとどんな相手も心配いらない。これでママも安心して眠れるね」
「ええ……」
「浮かない顔だね?」
「そうね、何度も命を狙われていたけど、嫌いだけれども、それでもバルドルは一緒に魔王討伐を目指した仲間だったから。やっぱり―――少し寂しいの。他の手はなかったのかなって……」
私は、そのママの言葉に驚き、頭に血が上ってしまった。
「何を言ってるの、ママ? ママは何度も殺されたんだよ? 絶対に許せない相手なんだよ?」
少し語気が強くなってしまった。ママは、記憶を別の時間から引き継いでいない。それは分かっている。
だから、何度も何度も説明している。
「あら、この世界のわたくはまだ殺されていませんわ」
ママが珍しく反論してきた。なんでそんな意地悪を言うのだろう。
「わたしは……。どんな手を使ってでも……。ママに生きていて欲しいのに……」
「ごめんねプレミア……。あなたが何度も『時間跳躍』で同じ時間を繰り返していることは分かっているわ。だからこそ『初めての心』を忘れないで。嬉しかったこと、悲しかったこと、悔しかったこと。そして、辛かったこと。心だけは戻せないの。今はリールに寄り添ってあげてね」
ママが優しく言う。
『初めての心』……か。私はいつの間にか多くのことを忘れてしまったのかもしれないね。
いつもありがとうございます。




