最後の敵は/リール視点
息絶えたバルドルは当然ながらピクリとも動かない。
俺が殺したのか。徐々に実感が湧いてくる
部下の二人は既に逃げてしまっていた。
何度も見た悪夢。因縁の相手の一人だった。その一人がついにこの世から消えたのだ。
22年ぶりの対峙したバルドルは、当時と変わらず憎らしい男であり、今は俺達の命を狙う敵だった。殺すのは当然の選択だった。
殺す覚悟していたからこそ、俺はプレミアとセリンに協力しているのだ。
俺の最終目的はアクトスを殺すこと。
目的に辿り着くための一つの障害を取り除くことに成功したのだ。もっと喜んでいいはずだった。
なんだろう―――。この虚しさは―――。
心の靄は晴れることなく、さらに深くなってしまった様な気がする。
不思議な事に、昔の記憶が当時の感覚のまま流れ込んできた。子供の姿だったことも関係があるのかもしれない。怒りのまま体が動いた。
本当に正しい判断だったのか? 分かり合えたのではないか?
そんな声がどこからか聞こえてくる。
俺がされた仕打ちを忘れた訳ではない。ずっと復讐をしたいと思っていた。その望みの一つが叶ったのだ。
そして何より、世界を滅ぼそうとしている男の命令で動いていた人間だ。現実にこの村に毒をばら撒き、罪のない人々を殺そうとした。
俺が殺さなければ、きっと誰かが犠牲になっただろう。
そうだ。これは正しい。
でも―――。
人を殺した―――という結果だけが―――心の棘となっている、
これからは手を血に染めながら生きていくことになるのだろう。世界を救うという目的のために、人を殺し続けるのだろうか。
「リール様……」
プレミアが心配そうに声をかけてきた。ハンカチを手渡そうとしている。
「あの、涙を……」
俺自身、周りの目も気にせず、恥もなく泣いていることは分かっていた。分かっていても止めることが出来なかった。
「ありがとう」
ハンカチを借り目を拭った。優しさが胸に染みる。
「ごめんなさい……。巻き込んでしまって……」
プレミアが泣きそうになっているのに気付いた。
「元々巻き込まれていたんだ。気にするな」
「でも……。リール様の辛そうな顔を見ていることは出来ません……」
辛そうな顔か。
「なあプレミア」
「はい……」
「人を殺すって、とても辛いことなんだな。それがどんな相手でも」
「……」
「ファクターとアクトスを殺した時には、俺はどんな気持ちでいるんだろうな」
「……」
「だからこそ、人を殺すことを平然とやってのける奴を許すことが出来ない」
「リール様……」
「大丈夫。みんなで世界を救おう」
アクトスを殺せば全て終わるのか? いや、きっと違うはずだ。俺にとって復讐とは何なのか、世界を救うとは何なのか。
この旅は、それを探すための旅なのだろう。
いつもありがとうございます。




