表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/94

繰り返しの戦い/プレミア視点

 見渡す限りの平原。どこまでも続く青空は、少しずつ赤身を帯びている。

 そろそろ太陽が沈む。


 私はまた失敗した。


 血まみれの、すでに息絶えるのを待つだけとなったママを胸に抱き、その頬を優しく撫でた。

 もう少しで憎き勇者アクトスを殺すことができた。ママと一緒に、初めてあいつをここまで追い詰めた。本当にもう少しだった。


 すでに遠くに行ってしまったその男の背中を、目で追い続けた。


 もう一度時間を戻せば必ず殺せる。次こそはママが殺されない未来を作ることが出来るはずだ。


 私は回復魔法が使えない。回復魔法を専門とし、アクトスと共に魔王と戦ったママとは正反対だ。


 でも私は『時間跳躍(タイムリープ)』の魔法が使える。間違った行いを正し、世界そのものを『回復』することが出来る。


 さあママに別れを言おう。なくなってしまう時間だけど、別れの言葉は伝えたい。もう何度伝えたかは分からないけど、次はきっとうまくいく。


 その時だった。


 アクトスが賢者の石を天に掲げるのが見えた。赤黒く光る、魔王の魔力が詰まった石。この世界がおかしくなってしまった原因の石。


 その石が光と共に粉々に砕けた。


「い、いけ……ない……」


 今にも消えてしまいそうな声で、ママは言った。


「ア、アクトスの目的が……ようやく……分かった気がする……ごほっ」


「ママ! 無理しないで!」


 しっかりと抱き寄せる。もう無理をしないで。苦しむ姿は見たくない。


 世界が一気に闇に包まれた。おかしい、太陽が沈んだとしてもこんなに暗くはならない。月の光と星の瞬きがある。顔を上げると、空に蓋をするように、大きな大きな岩石が地表に迫ってきていた。


「何……あれ……」


 私は絶句した。今までの時間のループで、こんな結末は初めてだった。体の震えが止まらない。あんな大きな岩石、止められはずがない。


「あれはメテオ……。世界を滅ぼす魔王の意志……。リール……。魔術師のリールを探して……。その人の魔法ならあるいは…………ごほっ! ごほっ!」


「リール‼ その人ならこの状況を変えられるのね! その人はどこにいるの!?」


 ママはゆっくり首を横に振った。もう目を開く力すらない。最後の力を振り絞って、私に希望をくれた。私は、ママをしっかりと抱きしめる。絶対に助けるから、もう少し待っててね。


 さあ時間を戻そう。岩石は轟音と共に近づいてくる。

 

 私は、ゆっくりと呪文を唱えた。『リール』という希望を探すために。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ