プロローグ
-プロローグ-
まだ民の道具は石器・土器だが、銅の精錬方法が伝わり始め精錬が始まりつつある・・・・
そんな時代。
<始まりの王>は神託により、「天より降る石を集め、剣をつくれ]との神言を受けた。
やがて王の下に石が集められた。石は酷く硬く到底扱える代物ではなかった。
暫しして、その石を<あやつる者>が現れて先ずは石を<珠>にして王に献上した。
間を置かず、<珠>は<剣>となり、<始まりの王>の手元に置かれた。
<剣>は二振りあったが、<始まりの王>の息子の代になると一振りがいずこにか消え失せた。
暫くはこの事については王も民も注意を払わなかったが、やがて<死の穴>、<火の雨>、<割れる大地>
という厄災が起きてくるとそれが<剣>が揃わないからではないかと囁き始めた。
というのは<始まりの王>の時代にはそんな大きな厄災はなかったからである。
さて、<始まりの王>には三人の子供がいた、長男はすぐさま病に倒れ、次男は双子だったので、
一方を<山の神>に預け、いま次男が王として振舞っていた。
何時の代かは定かではないが、やがて王の下にアララット山の神から神託を聞く老婆が王の下に就くようになった。
かなりの政は神託により決められたが、やがて厄災は収まり、王が代替わりしても事は起こらなくなった。
ある夜の夢は王にとって衝撃的であった。それは薄明るく天空が赤とも黒ともつかない大気を巻いて、地鳴りのようなうねりを挙げて巨大な谷から吹き上がってくるのを<剣>が見下ろしていた。
王はその様を谷底から見上げていた、やがて<剣>が問うた。
「なぜ探さぬ?」
王は答えた、心当たりがあったからである。
「もう一振りのことか?」
<剣>が答えた
「二振りなくては国の安寧なし、厄災は再び降りかからん」
目覚めた王は冷や汗をびっしりかき、憔悴しきっていた。すぐさま下僕に老婆をこちらに向かわせるよう
手配をした、程なく老婆は王の下に現れ、王は夢の顛末を老婆に打ち明け、解釈を問うた。
老婆はすぐさまアルマスの使者を呼んだ。
アルマスは<山の神>に預けられた、<始まりの王>の子孫だった。
それは王の一族である首筋の文様からそれとわかるためであり、また<剣>を扱える唯一の
女性種族であった。
「この者たちに探させましょう」
老婆は王へ振り返りながら同意を求めた。
王は無言で頷いた、それは<剣>を託すのと同意だった。
老婆は恭しく王の袂にある<剣>を受け取ると、使者に託すとこう下命した。
「この<剣>と瓜二つの剣を探せ、見つけたならば二振り揃えて献上せよ。二振り無くして世の安泰なしよいか?我らの命運がかかっておる心してかかるがいい」
使者は頷いた。
「先ずは<死の穴>に赴くがよい、王の夢は<冥府の女王>の事と思われる。」
使者再び頷き<剣>受け取り踵を返した。