エピソード7
長い間眠っている気がした。浅くはなく、むしろ深すぎるくらいに。そして心地よかった。冬の起床しづらさのような気持になった。
(けど、起きないと。しないといけないことが、たくさんあるんだ……)
自身の欲に抗い、ようやく起きようとする。そこで僕は起きたくない理由がまた別にあることに気づいた。――――――いやな予感がする。――――――そんな漠然とした感覚にあるからだと言ことに。
(この胸騒ぎは………?何があるか、確かめないと)
使命感に駆られ、僕はようやく起き上がった。
「……………………え?こ、こは」
目が覚めるとそこは、以前と変わらない深層心理空間と呼んでいるところだった。
「………なんで。どうして」
確かに白亜は言ったのだ。目覚めれば戻っていると。彼の言っていることが正しければ、今は現実の自室のベットにいるはずなのだ。
「僕は白亜に、騙されたのか………?」
訳が分からず、僕は思わず呆然としてしまう。
「じゃあ、僕に向けた言葉も、表情も、あの”使命”も。すべて嘘なの?」
僕はまだ不確定な推測に戦慄した。ショックで言葉が出なかった。
「あっ!」
(そうだ!今はいつ?どのくらい寝ていたんだ?)
僕は焦燥感を抱きながら急いで空間に映像を映し、白亜の視界を確認する。映し出されていたのは字の書かれた黒板。その前には担任の立花先生が授業をしているものだった。都合がいい。僕は時計の指す時間を確認する。
「――――――」
僕はそこでさらに驚かされた。いや、驚いているかも分からない。落ち着いているかも、分からなかった。なぜなら―――眠らされてから一か月の月日が流れていた事実を知ったからだった。
「最初は一週間だったのに、どうして?……いや重要なのはそこじゃないな」
目先のことにとらわれすぎるのは悪い癖だ。僕はできるだけ冷静になるよう努める。
「何故僕に嘘をついてまで主人格でい続けようとしたのか。……あの時白亜は確かに言ったんだ。”過去の君を今の君にするために僕は行動していたと」
その時、白亜は少し不満そうに言っていたのを僕は覚えている。そして――――――僕を戻そうとしてくれた時、苦しそうだった。これらの様子の白亜が重要になるのなら。
「………白亜が思っていること、全部聞かないと。じゃないとこの疑問、絶対に解決しない。そして、今の僕にはそれができる」
そして、もう二度と、白亜をないがしろにしたくない。むしろ理解していきたい。行かないといけないんだ。
「だから、僕はこれから、白亜と一緒に過ごすために行動しよう。それが今の僕を作ってくれた白亜へのお礼、償いだから。絶対やるんだ」
僕は自分の中にある。確かな思い、覚悟を胸にそう決意した。