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dual personality  作者: 天道一真
3/13

エピソード3前編

僕は夕食を食べ終わると、妹と一緒に食器を片付け、自室に戻った。

そしていつもなら夜更かししてしまうのだが、今日は何故か眠たいのでそのまま寝ることにした。

 たくさん寝て、すがすがしい朝を迎える・・・はずだった。

 


 気が付けば僕は見知らぬ場所に立っていた。

 周りは薄暗く、僕が立っている場所はスポットライトの様に照らされている。

「どこ・・・というより、明確な[場所]といえるところ?」

 そもそも夢じゃないのかと思った。しかし手足の感覚、周りの見え方、耳の聞こえ方。すべてが現実と同じものなのだ。

 その事実は僕をより混乱させるのに十分だった。僕は冷静になろうと試みる。が、時間がたてばたつほど冷静になれず、代わりに恐怖が増していく。

どうすれば……。そう考えていた―――その時。

 「やあ。どうやらお困りのようだね?」

 と、馴染みのある声が聞こえた。僕はとっさに声がしたほうに振り返った。その時に僕が抱いていたのは、孤独から解放された安心感ではない。むしろ驚きのほうが大きかった。それも悪い方。

 それもそうだ。聞こえてきた声は――――――

 「こんにちは。いや、今はこんばんは、かな?ボク♪」

 まぎれもない僕自身の声だったのだから。



 訳が分からなかった。それもそのはずだ。どこかも分からない場所に気が付いたら取り残されて、そこにいきなり自分自身が目の前にに現れたのだから。

 「おや、心外だねぇ。もっと驚くと思ったんだけど」

 「………君はなんだ?」

 「なんだとはなんだい?僕は君で、君は僕。それだけじゃないか」

 彼はさも当然のようにそう語った。にわかに信じがたい。しかし僕は動揺している自分を抑え込み、状況を理解するために彼に質問をすることにした。

 「君に質問がある。……あず、ここはどこなの?」

 「へえ~。ようやく落ち着いたんだね。よし、質問に答えよう。まずここは僕の、いや僕たちの深層心理よりも深い所さ」

 「深層心理より深い場所?」

 深層心理については以前気になって調べたことがある。たしか、自分では気が付かない無意識の心理状態のことだったと思う。

 「うん。そのとうりだよ」

 と、彼が僕の心を読んでいたかのように話し始めた。

 「人間が自覚している心理状態はおよそ10%と言われていて、それは幼少期にや思春期の体験によって形成されるらしいね」

 「……そこまで知っているのか」

 彼がさっき言ったことはさっき僕が思い出したことの続きなのだ。やはり、彼は本当に僕だというのか……。

 「君はまだ僕のことを自分自身なのか疑っていたのかい?ちょっと悲しいよ」

 彼はまた僕の心を読んだように答えた。

 「君は僕の心が読めるの?」

 「当たり前だよ。僕はこれでも3~4年この空間にいるんだよ?君の考えてることなんて手に取るようにわかるさ」

 「…それって、どういうこと?」

 そう聞くと彼はパァ!っと顔を明るくなった。

 「そう!やっとそのことについて触れてくれた!ようやく話が進むよ」

 彼はそう言うと両手でぱんっと手を叩く。すると、今までなにも無かった空間に今までの僕の記憶がスクリーンのように映し出された。

 「僕はね、あのころからずっとここで君のことを見ていたんだ。君が喋っているところ、ご飯を食べているところ、遊んでいるところとかね」

 「あのころ………まさか」

 「そのまさかだよ」

 彼は不敵な笑みを浮かべながらそう答え、再び手を叩いた。すると、いままで映し出されていた記憶の映像がすべて消え、いまから三年前あたりのある記憶が映し出された。

 「すべてはここから始まったんだよ。この事故からね」

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