エピソード1
それは耳障りなノイズのようだった。
二人の響き渡る怒声。その隣で泣き叫びながら止める幼い少女の声。そしてそれぞれの顔に浮かんでいる怒り、悲しみの表情。それを見ていた僕は耐え切れずに―――
そう。本当はこうなってほしかっただけなのに。何もかも僕のせいなのに。
だがそんな願いは誰にも届くことはなく、僕は―――。
「―――ろ。―――きろ。―――起きろ!!!!悠真!!!!」
「へァ!?」
起きろと呼びかける声が聞こえ、僕は慌てて頭を起こした。確か俺は6限目の現代文の授業を受けていて、CDの朗読を聞いている途中に寝てしまって・・・・・・。
「鈴木く~ん?」
起こしてきた人とは違う人―――担任の立花先生が眼だけが笑ってない表情で且優しい声で僕の名前を呼んだ。
それを見た僕、そして周りのクラスメイトさえが立花先生に恐怖した。
「鈴木君。明日の朝までに特別課題提出ね?」
「・・・はい」
そんな先生に僕はなにも言い訳することができなかった。
放課後。
僕は6限に起こしてくれたクラスメイトの佐々木治郎と帰っていた。ちなみに二人とも帰宅部である。
「課題乙www」
「はいはい。寝てしまった僕が悪いしね」
「あれ?あっさりと認めた・・・」
「ここでぐちぐち言っても仕方がないしね」
「悠真が優等生過ぎてこっちが恥ずかしくなってきた」
という感じでいつも帰っている。治郎は僕の数少ない心を許せる友人なのだ。
「ところで悠真。今日はいつも以上にぐっすり寝てたな」
「まるで僕が昼寝常習犯みたいなことを言わないでくれ」
「実際昨日も一昨日も寝てたじゃねーか」
「うぐ・・・」
なにも言い返せない……。
「ほんとよく寝るよな。なにかいい夢を見てたのか?」
「夢、ねぇ」
今日は久しぶりにあの夢を見た。僕と僕の家族が今のようになってしまった出来事。もう二度と思い出したくないこと。
「おい悠真!!大丈夫か?」
「ん?うん大丈夫だよ。ちょっとぼーっとしてただけ」
「そうか?お前たまにそうやってぼーっとしてるから気をつけろよ」
「ありがとう。治郎って見た目チャラいけど優しいよね」
「ヘイヘイ。そういうのは彼女ができた時に言えよ」
そうして話していると僕たちの帰路がが分かれるところに来た。
「じゃあまたな悠真。あんまり無理するなよ」
「ありがとう。治郎もね」
そうして僕たちは別れた。やっぱり治郎は優しいなあ。