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 半端じゃない爆音を立てながらウラカンが突っ走っている。

 高速道路警察隊のサイレンがBGMであり、平均速度250km以上で追い越し車線を飛ばしている。

 氷川神社で奉納の舞を行って朝霧寂光の残留した魔の気配を宥めると,その後は全速で移動した。その間にパトカーへ先導車の依頼をかけた。

 なにしろ怖い。

 心霊体験をした人ならわかってもらえるだろうが、明らかにいるのがわかっているのにそれが見えないというのは腹の底から冷えるほど恐い。

 切り倒した時の残り滓しか付いてないはずだが、それが脈動して動き、それを他の魔達が惹きつけられ見張っている雰囲気がとてつもなく恐い。

 これを見ているのは今のところ薄い魔しかいないようで、本物が混じったお化け屋敷の迷路に放りこまれた程度の恐怖しか感じなくて済んでいるが、一刻も早く手放して逃げたい。

 倒した直後はここまでひどくなかったが、白河の関を越えた辺りで急に活発になってきた。

 そこで慌てて氷川神社で歌舞伎舞をして抑えたがあまり効き目がなかった。


 こうなるとあとは法隆寺まで全速で向かうしかない。

 ウラカンAVIOのガソリンタンクは容量90L、燃費は速度200km以上だとリッター4km程度に落ちるだろう。

 氷川神社から法隆寺まで500km程度。

 途中で一度給油を挟んで3時間ぐらいあれば余裕で移動できるはずだ。

 給油はネットで調べると愛知県の上郷PAがよさそうだ。

 奉納の舞の後、埼玉県警と慌しく打ち合わせて給油し満タンにしたあと首都高目指し、東名ルートへ、先導の高速警察隊のスカイラインは280kmkg程度は楽に出す。

 そのすぐ後ろを燃料を維持するためにもくっ付いて走る。


 いやなことにこれだけ飛ばしていてもどこからか視線を感じる。

 しかも同じ奴ではなく段々増えてきている感じがする。


 90分後に上郷SAが見えてきて、愛知県警と交代で到着後、ガソリンスタンドに給油を頼んでトイレにいくのだが行列が長くないといいがとちょっと余計なことを不安に思う。

 そうはいっても車から朝霧寂光を降ろすかどうかの瀬戸際なのだ……仕方無しに降ろして一緒に移動する。

 まるで切り落とした生の鬼の腕を持ち歩いたような雰囲気である。


 なんとか東名を降りるまで精神が削られるような寒気に襲われ続けた。

 絶対に運送料割り増しで追加してやると何回口にしたかも覚えていない。

 へとへとになりながら、亀山ジャンクションから名阪を通って法隆寺に向かった。

 一般道は最高速度150kmくらいに速度を下げたが気のせいではなく、奈良県に入ると視線が大分減った気がする。

 この辺は古刹や遺跡も多く見通しが利かないのかもしれない。

 周りにあるものの風景に紛れる視界が妨げられるようになったとでも言うのか?

 そういうわけなのか?少しは息がつけるようになり倒れる寸前に、二上山の近くの五重の搭に辿りついた。

 

 着いたのは南大門だったが車のドアを開けてもらった屈強な僧侶の手で朝霧寂光が護摩堂に運ばれていく。

 もう歩く気力もない私は両側から支えられ弁天池につれられると、トレンチコートのままで水を浴びせられた。

 桶に池の水を掬ってはぶっかけられる荒行をしばらく続け、水をかけている二人の僧侶達が汗まみれになる頃には、ようやく自分の足で歩ける程度まで回復した。

 その辺りでトレンチコートを脱ぎ落とすと、慌てて僧侶達が顔をそらすのを見てしまい、微笑みながら本堂に向かい白装束に着替えた。

 着替えのあとに護摩堂へ行の真っ最中のところに行き、火界呪を唱えながら火にあたることで身体の芯から温まり始めた。

 護摩壇では本山法起寺住職の姿が見える、誠に申し訳ないがありがたい。

 たぶん帰ってきた朝霧寂光への礼なのだろう……こっちにはあとでもっと丁寧に使えと怒られそうな気もするが……

 暖かくなって眠気が襲ってきたが後しばらく火が芯まで通るのを待ってから休憩させてもらおう。

 今回は運ぶだけでも、疲れた。

 あとで昭光に礼を入れたほうがよさそうだ。

 不意打ちからの一撃でなかったら倒せなかった。

 次回の報酬にはより強力な法具の入手を入れてもいいかもしれない。

 僧の一人が肩に打掛を掛けてくれた。そろそろ暖かくなってきたし、席を外させてもらうとしよう。

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