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「昭光さん、遅かったけど何かあったの?」

 沙紀が名刺を渡しながら昭光さんに問いかけていた。

 「ちょっと面倒なことが起こってね。とりあえず白筋さんに連絡とっておこうか。」

 そういうと昭光はスマホを慣れた手つきでフリック入力すると送信した。

 「ともあれ沙紀の分はこれだ、あとこれなんだが……」

 沙紀の分といわれたものは錦織の拵袋で全長が30cmほど。

 普通に考えれば短刀か鎧通だろうがやや幅広の造りだった。

 もう一つのほうは桐の箱で持ち出してきても悩んだ挙句、結花に手渡した。

 「結花ならたぶん使えると思うんだが……」

 二人は礼をすると開ける許可を昭光に尋ね、許しが出てから開けると二人から歓声が上った。

 「「綺麗」」奇しくも二人から上った声は一緒だった。

 沙紀は短剣を鎧通に拵えたもので、刀身に北斗7星が玉で埋め込んであり、聖獣が金で象嵌された華やかなものだった。

 結花の箱の中身はプレシャス・オパール(地色ブラックの遊色ファイアオパール)の勾玉をペンダントヘッドにしたものだった。

 昭光は真剣な表情で話を続けた。

 「沙紀の短剣は初代「坂の護剣」だ。皇子が折った刀身を擦り上げて鎧通に仕上たもので、2代目を献上した際に、初代の折れた刀身を田村家に下げ渡してもらい作られたものだ。」

 この短剣は田村家の重代の秘宝なのだが、何本かが類似品として作られ17世紀以降はどれが本物か判らない状態になっている。

 そういうわけで一関博物館にも似た拵えの短剣が展示されている。

 これは田村家本家に残っていた剣で、少なくても平安末期の作だとおもわれ、魔を切り裂くには十分な法具になっていると思われる。

 そして今回遅れた原因にもなった結花の法具なのだが、鬼死骸八幡神社に伝わる鬼牙石を芯として鬼石、あばら石の下に埋もれていた黒い石複数が融合して出来上がったものなのだが……たぶんこの石の正体は魔そのものの結晶だと思われる。

 「目の前でくっ付いたから正体は間違いはないと思うんだけどねー、結晶化に1000年以上かけて出来上がったものだから誰も使い方がわからないんだけどね……というわけで結花使ってみなさい。」

 「?どう使えばいいの?」

 「とりあえず首にかけて、真言でも唱えてみて」

 「適当ー」

 そういいながらも結花は首に勾玉をかけて真剣に真言を唱え始めた。

 

 しかし何も起きなかった。


 「何も起きそうにないんですけどー」

 「そうだねー、もう少し調べてみるよ」

 「「適当ー」」

 女の子二人の声が重なったところで結花は勾玉部分に爪を立てると少し動かした。

 すると勾玉表面部分が細くて薄い紙テープのように剥がれてきた。

 「?」

 テープの地色は黒その上に赤い遊色が浮かんでいた。幅は2-3mmだろうか?

 いくらでも伸びてくる感じで、結花が魔法少女の変身シーンを連想した瞬間に、テープが勝手に動き始め彼女の身体を卵の形に包み込んだ。

 「お、使いこなせたみたいだね。」

 外側からは赤で中は光を通さない黒の卵に包まれてしまった結花だったが怯えを覚える隙もなく次の形態に変わっていた。

 そこには立っていたのは甲冑の武者だった。

 彼女は知らなかったがその格好は真田の赤備えそのものだった。

 手には十字槍が握られている。

 「これって戦闘服なの?」

 「たぶん真田幸村の格好を模しているんだと思うんだが」

 「コスプレ?」

 「ああ、たぶん魔以外に対する防御力や攻撃力は0のはず」

 「なんかあたしの扱いひどくない……」

 「一番強力な装備なんだけどねー」

 

 「普段から身に着けられいて魔と戦う瞬間に鎧と槍に変わるんだから文句は言えないと思う」

 まだ何ももらってない主馬がぼやきながらそういった。


 「ああ そうそう、主馬は家においてあった横笛を使えるように練習して」

 「刀とか槍じゃないんですか」


 「音で異形のものを封じる笛があるんだけど……それを使えるように手配してるから」

 「由来とかあるんですか?」

 「小枝さえだと呼ばれている笛で御物だったときには青葉とも呼ばれていた笛だよ」

 「御物って」

 「もと天皇家所持品」

 「どっから持ってきたんですか……」

 「源平合戦のときに熊谷直実の手に入ったんだけど、褒章でこの辺もらった熊谷家が持ってきたみたいだね、まあ細かいとは気にしない。」


 「熊谷家ってことは舎人じゃないの?」

 面白そうに結花の赤備の胴を突きながら沙紀が尋ねてきた。

 「ちょっと面倒な話があるからその辺は気にしないで」

 昭光は唇の上で人差し指を立てるとこれ以上は内緒という雰囲気で話を打ち切った。

 

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