地下10階層のヴァルキリー
コジはバーサーカーとしての職を開花させ、常に先頭を駆けていた。
「コジ、無茶は駄目よ、見たことない敵の場合は、一旦下がって」
さくらは、コジへアドバイスすると共に、他のメンバーの位置を確認する。
プラリア、クラリスを守るようにシーズが、最後尾をファイヤードラゴンが固めていた。
この10階層を進み行ける力は、ゆいが与えてくれたものだ。
さくらには、ゆいの行った悍ましくも優しい所業を理解していた。
このメンバー全てに女神のギフトの力を与えるなんて不可能だ。
それが変身ロッドであろうと、女神であろうと。
ならば、何処から力を得たのか?
答えは命、地下3階層を中心とした脆弱な住民を犠牲にして得た力なのだ。
「爆炎魔人、爆風魔神」
その声に逸早く対応したのは、シーズであった「シンズキかっ!?」
シーズは、襲いかかる爆炎魔人を一刀両断に切り捨てると、 爆風魔神の風の刃を盾で防ぐ。
「ゆいっ!!」
雷轟の槍により雷化すると、一瞬にしてゆいとの間合いを詰める。
手刀によりゆいの心臓を貫くと、背後に現れた男爵を蹴り潰す。
「遠藤っ!!」
さくらの怒りは、エンドファミリーを全滅させるまで、収まらないだろう。
「強いな」幼馴染はリザルトソードをひと振りする。
通常ならば、さくらの首は飛んでいたのだが、今のさくらは雷化された精霊のような存在のため、物理攻撃は通用しない。
「ライブラ」と遠藤は戦いへの参加を促す。
今の白銀の鎧を身に纏った騎士風ライブラの能力は、HPが多いだけではない、自動で強化バフがかかり続けるのだ。
大地属性も付加された弓矢なら、さくらの雷化の体にさえ、攻撃を通すことも可能だろう。
クラリスは戦況を把握する。
シーズ一人では、シンズキを抑えきれないだろう。
「プラリア、シーズの援護に回ってっ!!」
さくらとライブラは互角だ。
幼馴染と言うやつは……コジを打ち倒していた。
不味いな、劣勢だ。
唐突に、ファイヤードラゴンがファイヤーブレスで、遠藤を狙う。
だが男爵が盾となり、遠藤を守る。
そのとき全身金色の鎧を着た美女が戦場に舞い降りる。
「私は、戦死者を選ぶもの……お前らの命を貰おう」




