不本意
緊急避難先は、地下6階層、ギルド”スターライト”の砦・元クラリスの部屋だった。
あれ? ポイント変更していなかったけ?
突然現れた謎の二人組に驚く、新しい住民。
何と説明すれば、ご理解頂けるのかと思案するが、既にさくらが雷轟の槍で刺殺していた。
人には会話という意思疎通の手段がですね…。
何かを期待しているさくら。
俺は急遽、サムズアップで「ナイス、PK!!」
微笑むさくら…大丈夫か、こいつ…いやいや、そう、育てたのは俺…か? いやそう育てるように命令されたのだ。悪いのは俺じゃない、俺じゃない、俺じゃない。
自責の念を振るい払うと、脱出方法を思案する…。
「うぎゃぁぁぁぁっ!」「ピッPKだぁぁぁっ!!」
はいっ?
今度は、何事ですか?
さくらが廊下に出て、殺戮しているらしい。
俺? そんな命令したっけ?
不味いぞ。
もう緊急回避が使えないのだ。
俺だけなら”反射ダメージ持ちだから相手にするな”で終わるのだが、さくらは無名だし、相手も意地になってPKKしにくるぞ。
廊下に出れば、死体の絨毯、まるで蹂躙。
恐らく、瞬時に100m単位で移動できる電光石火というスキルを使用して、さくらはPKしているのであろう。
壁も関係なくぶち抜いているし、死体は半分ないものとかもある。
これって、ランナーズ・ハイならぬPK・ハイなのか?
なんか、探すのもだるいな。
「うっ。だ、誰か、助けて…」
足元で息を引き取る寸前の男の子に足を掴まれた。
「スーパークイックヒール」何となく治療する。
そこにさくらが帰ってきて、俺の抱き抱えている少年を差し出せと言っている。
「その子で、コンプリートです」
「いやいや、誰も頼んでないし」
「意地悪なんだからっ!」
プンプンするさくらを無視して、暁の塔でも目指しますか。
ギルド”スターライト”の砦(地下6階層)が担う役割は、新人ギルドの育成と同盟であるギルド”血の同盟”の街(地下3階層)の保護と支援であった。
スターライトの総戦力1/4が失われたことで、地下迷宮ラプラスのパワーバランスが崩れ始める。
そんなことは知る由もない、お馬鹿なPKたちだった。




