狂気の大人たち
あふれ返る人類は、地上から魔物や魔獣を蹂躙し消し去った。
唯一残された人外の楽園、地下迷宮ラプラス。
前人未到の地下迷宮であり、各階ごとに環境が異なる。
そもそも各階は、物理的に繋がっているのか?
どこから魔物や魔獣は湧いて出るのか?
なぜ一定の時間が経過すると各階の構造が変わるのか?
そして誰が宝物を用意しているのか?
”全ての答えは最下層にある”と入り口の不破壊のクリスタルに示されている。
過去に一度。人類は、地下迷宮ラプラスを封印したことがある。
封印した結果、地下迷宮内で圧縮された瘴気が、何処からともなく地上に吹き出し、人類を魔物や魔獣へと変貌を遂げさせたのだ。
人類の学者たちは、人間の肉体や魂が、迷宮内で朽ち果てることで、瘴気が薄まることを突き止める。
しかし政府は、原因を突き止めた学者たちを秘密裏に抹殺した。
誰かを犠牲にすること。つまり何を基準に選別するか?
このガイドラインの作成は、何名もの有識者が議論に参加し、口封じのために暗殺され、ジャーナリストたちも、真実に近づいてはいけないのだと悟り遠くから見守る中、八年の歳月を懸けて完成する。
そのガイドラインの基本方針は、”年100名程度の子供を犠牲にし、瘴気の濃度を薄める”である。
なぜ子供なのか?
これには過去の封印が関係する。
魔物や魔獣を寄せ付けないように魔の心を持つ生命を通さない結界が封印の正体であり、恒久的な封印を目指した結果、世界の三大神器の一つを封印に組み込んだ。
それが仇となり、何人たりとも結界を解除できなかったのである。
そのため”魔の心を持たない第二次性徴期前の子供を秘密裏に誘拐し、地下迷宮ラプラスに送り込む”という現代の生贄の儀式とも言える非道な裏政策が施行された。
その事実は、内閣に入閣した後に知らされ、大臣たちの脳と心臓に取り出し不可能な魔石爆弾を埋め込まれ、情報漏洩を察知すると、即爆死させられるのである。
だが、裏政策の施行から5年が経過し、初期の思惑から、少しずつ予測が外れ始める。
魔物や魔獣であふれ返る地下迷宮内で、生き残る者が増加傾向にある。
それは地下迷宮ラプラスから、噴出する瘴気の濃度を観測し続けている部署からの報告だ。
しかし内閣内では、子供一人あたりの効果に対して、地下迷宮ラプラスが耐性のようなものを持ったのではないかと結論付け、生け贄の追加を決定した。
衣食住など考慮すらせずに地下迷宮ラプラスへ送り込んだ子供たちが、生存などできるわけがないのであるから。