噛み合わない歯車
「あっ、危ないわ。剣を忘れてしまっているの、取りに行こうよ」
ファーブは、帯剣してないことに気が付いたようだ。
ギルドに向かうと、巨大な何かがギルドから出てきたため、咄嗟に隠れる二人。
リザードマンを見たことがないであろうファーブでも、ギルドに何か重大な事件が起きたことは気が付いただろう。
「なに? み、みんな…」
建物の影から、心配そうなファーブを見ていると、こっちも心配になる。
うーん。全員リザードマンに始末されているか、ちょっと不安が残るな。
大量の血痕はあるが、死体を発見できないまま、工房で自分の剣を拾うファーブ。
何かに違和感を感じているのか、剣を見つめている。
「ねぇ。剣も持たずに、どうやって”栄光の絆団”から、ここまで来たの?」
「魔物たちに見つからないように移動ぐらいできないと、ここだとすぐに殺されちゃうよ」
「そ、そうよね…なんて、言うと思った!? 迷宮の入り口でも同じことがあったわ」
人面犬のときのことだろうか、でも、何に違和感を感じているのだろうか。
「あなたは、何者なのっ!?」
ファーブは剣を突き刺してくるが、俺は避けない。
僅かに皮膚を斬った程度だが、ファーブにも同じダメージが入る。
パニックになったファーブは、何度も何度も俺を斬りつけるが、自分にもダメージが蓄積されていく。
このままでは、ファーブが死んでしまう。
スーパークイックヒールを発動し、ファーブの傷を癒やす。
「もう気が済んだかい?」
「あ、あなたがギルドメンバーを殺したの?」
「うん。だって、嫌な奴だらけだったろう?」
「そ、そんなことはないわ」
ファーブは、外に走り出してしまう。
説得できる自信がない俺は、空を見上げる。
すると”もう無理よ”とゆいの声が聞こえた。
ファーブは、ギルドメンバーの仇を討とうとしたのだろうか?
無謀にも戦いを挑み、引き千切られバラバラにされたファーブの肉塊をリザードマンは食していた。
違う意味で、笑っちまったよ…。




