頑張れリザードマン
リザードマンは思いの外足が早かったが、忍耐力がない。
どんなに攻撃しても倒れない俺を諦めて、湿地帯へ戻ろうとするのだ。
俺は、石やら木やらを投げ、リザードマンのヘイト値を上げる。
どうにか木の柵で囲まれた”ノンパドラックス”の基地まで辿り着く。
見張りの男の子が、俺に「こっちに来るなっ!!」と叫んでいる。
やめてくれ、こっちは走っているんだ。笑わせないでくれっ。
”ノンパドラックス”の基地内に入ると、アクティブスキルの認識阻害を発動する。
誰からも存在を認識させず、しかも記憶から一時的に消し去るのだ。
俺は、ファーブを探す。
ファーブは建屋の中、工房で剣の手入れをしていた。
俺を認識できないファーブの目の前に行く、そして気絶させる。
俺が認識阻害を使っている限り、触られているファーブも同様の効果がある。
次々にリザードマンに蹂躙されていく、”ノンパドラックス”のメンバーたち。
”ノンパドラックス”は、これでも戦闘重視のギルドなんだけどね。
問題は、ファーブが起きたとき「どうして私だけが助かったの?」という質問に、どう答えるかなんだよな…。
でも、こらはゆいから貰った”記憶改ざんの薬”で解決できるだろう。
僕と会話をするため、こっそりとギルドを抜け出しているとき、リザードマンの群れにギルドが襲われたことにするのだ。
リザードマンは、とてもエコなのだろう、殺した人間を片っ端から食べているではないか。
大量の血痕とは裏腹に死体を発見できなかったと、後から調査しに来たギルドも不思議がっていたほどだ。
僕を介して、ゆいも、この殺戮ショーを観ているだろう。
”ノンパドラックス”から離れた木陰で、ファーブを寝かせる。
”記憶改ざんの薬”は粉薬だ。
「気絶させるから飲ませられないけど?」とゆいに質問したら、口の中の粘膜や舌に塗るだけで、効果が現れるからと言われた。
ファーブごめんと思いながらも、口の中に指を入れて、薬を塗りつけた。
起きたファーブは、「ここ何処!?」とか、「なんでいるの?」とか聞いてくるが、「今日は内緒で会う約束の日でしょ?」と納得させる。
「会って寝っ転がりながら、話していたら、ファームお姉ちゃん、寝ちゃうんだもん」
「ごめんなさい」と謝罪してくるファーブであった。




