場違いな村2
「もう、何回言ったらわかってくれるの? 人殺しは駄目っ! たら、駄目っ!!」
いつも以上に、ポコポコ頭を叩かれる。
「だって、ダースラも知ってるだろう? 呪いのこと」
「知ってるわよ。でも一週間で一人で十分のはずよ? 悪人だけ殺すこともできるはずでしょ?」
うっ…。詳しいことを話しすぎたか。
「ちょっと、やり過ぎたことは認めるよ。でもさ間違って殺したのは、せ、千人ぐらいだったかな…」
ダースラは置いてあった新聞を広げる。
「死者約23万人、南の王国、夜紅血の王の手に堕ちる」と読み上げた。
「すごい数だね…」と他人事で流す、作戦だ。
「北の王国ラズベルにいた長老の息子が、昼夜問わず必死に馬を走らせ、安否を確認しに来たの。そのとき持っていた新聞よ」
俺はお茶を飲みながら、窓の外を眺める、作戦だ。
「もう。馬鹿、馬鹿、馬鹿…」とポコポコ頭を叩かれる。
「もう許しておくれよ…そしてエッチなことしようよ?」
「嫌よ、絶対に嫌。もう悪いことしないと約束して…」
突然、しおらしくなると、ぎゅっと抱きついてきた。
「お願い、ずっと一緒にいるから、もう悪いことはやめて…」
確かに、地下14階層の情報がなさすぎて、イライラしたのが原因だけど、国を滅ぼすのはやり過ぎたかも。
「ちょっと反省してみるよ、だけど約束は出来ないよ」
「次、私の断りもなしに出かけたら、一生口聞かないから」
「き、汚いぞっ!! おい、ローズン、イーシノ、フェウンス…助けてくれっ!!」
「はぁ…。情けないわね。本当に夜紅血の王なのかしら?」
半泣きの俺を見ながら蔑む三人であった。
またも部屋の隅でいじけていると、ダースラが見かねて声をかける。
「もう、天気もいいし、お散歩に行くわよ」
俺の手を引っ張り外に連れ出す。
村の出口へ向かって歩いていると、「魔王様、こんにちはっ!!」と元気に子供たちが挨拶してくる。
「おう、前見て走れ、転ぶなよ」と返事をする。
「あのさ、私がいなかったら、どうしてたの?」
「うん? 煩いからぶち転がしていたかも…」




