勧誘
目覚めたファーブは、ショートソードを突き立てて死んでいる人面犬に驚く。
「わ、わ、私が、こ、殺したの?」
俺はコクリと頷く。
ファーブを白黒の人形として見ていた俺に変化が訪れる。
深い赤の瞳。
瞳と同じ色のストレートロングヘア。
綺麗に透き通る心地よい声。
痩せこけているのに温かい手。
もっとファーブと一緒にいたい。
もっとファーブ話したい。
もっとファーブと…。
そのとき、またもや薄暗い迷宮の奥から、邪魔者たちが現れた。
「やったよ、迎えに来てくれたよ」と喜ぶファーブに対して、二人きりを邪魔され殺意をみなぎらせる俺。
説明を受けると、迎えに来た7名は、2つの別ギルドであること。
代表者がじゃんけんによって順番を決め、順に送り込まれた子供を勧誘していくこと。
「えっ!?ファーブと別れるの?」
俺は皆殺しを決意するが、ファーブに見られてしまったら意味がないのだ。
手詰まりに涙する俺。
ファーブは純粋に別れを悲しんでいるのかと勘違いし、俺を抱擁する。
そして俺は”栄光の絆団”に、ファーブは”ノンパドラックス”に引き取られた。
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見慣れた薄暗い通路を歩く。
この迷宮にこなれてきた様子の数名の男女と、怯えた子供たちが見えてきた。
ギルド”聖なる乙女”と”ノンパドラックス”だ。
その中に、ファーブを発見すると、向こうも俺に気がついたようだ。
「久しぶり…」と挨拶をしてくるファーブの肩を掴み、「馴れ合いは不要だ」と邪魔する男に、俺のリミッターは簡単に解除される。
アクティブスキル”ゾーン氷結”を発動する寸前で、冷静さを取り戻す。
危うくファーブまで殺してしまうところであった。
”栄光の絆団”の代表として俺が、女子は全員もらいたいと駄々をこねる”聖なる乙女”と、常時威圧的な”ノンパドラックス”と交渉をするが、結局はいつもとおりのじゃんけんとなる。
どうでもよかったが、”栄光の絆団”には、男女一人ずつ加入してもらった。
そして”ノンパドラックス”の皆さんには死んでもらうことが俺の中で決定されたのだ。




