血祭り
血祭り
ここは地下迷宮ラプラスの地下2階層目とでも言うのだろうか。
地下1階層は、誰もが想像できる石壁の迷宮であるが、地下2階層目は森林のステージだ。
俺は、一際大きい大樹の上から、4人の男女によるパーティを発見する。
転生者用特典の雷轟の弓を構えると、魔法の矢が召喚される。
本物の弓とは異なり雷轟の弓には弓弦はなく、形式的に弦を引く状態を取らざるを得ない。
雷轟の弓から放たれた魔法の矢は、雷の属性を帯びており、認識さえしていれば、目を瞑っていても命中するのである。
俺は、小柄の少年を狙う。
恐らくスカウト職であり、攻撃元を特定される可能性があるからだ。
放たれた矢は、少年の眉間を撃ち抜く。
ターゲットのパーティは、何事が起きたのかも把握できない素人集団だ。
次に俺は、魔法使いであろう少女を狙い、こちらも心臓をぶち抜くことに成功した。
パーティのヒーラーが、崩れ落ちる少女を抱き抱えヒールを唱える様子が目に映る。
あまりにも滑稽な姿に、笑いが止まらくなり、会話がしてみたくなった。
大樹から降り、にこやかな顔で「大丈夫?」と声を懸ける。
「大丈夫なわけないでしょ」と泣きながら睨まれる。
大柄の少年は、今更剣を抜き構える。
「お、お前は、だ、誰だっ!?」
「俺が犯人だよ」とニッコリ笑う。
大柄の少年は、僕の心臓に剣を突き刺すが、膨大なHPを持つ俺には、蚊に刺されたようなものだ。
だが、大柄の少年は、口から血を吐き出し倒れた。
「あぁ、パッシブスキルのリベンジフィールド、説明してなかったよね? 俺の防御力0の状態で、相手の攻撃は、クリティカルヒットになってダメージを受けるけど、攻撃者もまったく同じ威力のダメージを受けるから、注意してね? あっ、死んじゃってるよ」
回復ヒーラさんは、腰が抜けたのか、地べたを這いずり回るように逃げる。
僕は、大柄の少年が持っていた剣で、回復ヒーラさんを後ろから、何回も刺し続ける。
刺す度に絶叫するから煩かったな。
「6回で死亡か。うーん、普通だな」
その後、自分のギルドである”栄光の絆団”に戻り、自室で昼寝をする。
友人のマークスが部屋に来て、「また森林でプレイヤーキラーが出たみたいだ」と言ってきたので、
僕は、顔面蒼白の演技をする。
マークスは、そんな怯える俺を見て満足したのか、夕飯に行こうぜと誘ってくれる。
「ちょっと着替えるから、先に行っていて」と返事をし、ほくそ笑むのを我慢していた俺は、布団の中で大爆笑するのであった。