プロローグ 02
それから数年。呪いを受けた少女は、7歳となった。
そして、四大公爵家の中から、14歳になる第二王子の婚約者を選ぶことになった。
なんと選ばれたのは、美しく成長した長女ではなく、年々呪いの影響で醜く変化をしていく少女が第二王子の婚約者に選ばれたのだ。
二人が初めて顔を合わせたのは、王宮で開かれた茶会でのことだった。
初めての顔見せの時に第二王子は少女に向って言った。
「何だその仮面は?婚約者との顔見せだと言うのに、顔を隠すなど……」
第二王子は顔を隠したままのことを咎めたが、無理に仮面を取れとは言わなかった。
しかし、顔見せの場には他の貴族の子供もいた。
貴族の子供は、子供さながらの残酷さで嫌がる少女の仮面を無理に奪ったのだ。
そして、残酷な言葉で少女を深く傷つけたのだ。
「何だお前、まるで本に出てくるようなオークみたいだな!!」
そう言って、顔を青ざめさせる少女を嘲笑ったのだ。周囲にいた他の貴族の子供達も、一緒になって少女を嘲笑った。
何も言わずにただ立ち尽くす少女に、第二王子は自分の着ていた上着を掛けてから、少女をその場から連れ出した。
「すまなかった。俺のせいだ」
そう言って、震える少女を優しく上着の上から抱きしめた。
少女は第二王子の謎の行動に困惑しつつも不思議に思ったことを聞いた。そして、自分との婚約はデメリットしかないと訴えたのだ。
「私は……。とてもひどい容姿をしています。何故そんな私に優しくしてくれるのですか?こんな私との婚約など直ぐに破棄してください。私なんかと婚約しているなんて、殿下にはデメリットしかありません!」
必死の様子の少女に微かな微笑みを浮かべた後に第二王子は、空を仰ぎながら静かな声で言った。
「王家には普通の人達よりも濃い精霊の血が流れていると言われている。その所為なのか、運命の人に出会ってしまうと、その人に惹かれて抗うことが出来ないんだ」
そう言ってから顔を少女に向けて、真剣な眼差しで言った。
「実は、君のことは前から知っていたんだよ。仮面の令嬢ってね。少し興味があって、君の兄に会うことを言い訳にして一度屋敷に行ったことがあるんだ。その時に、偶然庭の東屋でうたた寝をしている君を見てね。そこで、君が俺の運命の人だと知った。それからは、どうしても君にまた会いたいと、話をしたいと思うようになってな。それで、父と兄に相談して、婚約者として君を指名したんだ」
第二王子は熱のこもった瞳で少女の瞳をじっと見つめた。
少女は、王子の瞳に映る醜悪な自分の姿に頭を殴られたような感覚に陥った。
「無理です。私は、こんな醜悪な……。殿下のお側にいることなど出来ません」
「俺は構わない。見た目なんてどうでもいいんだ。君がいいんだ。君が望むなら、仮面のままでもいい。どうか俺の側にいてくれ」
少女が否定しても、第二王子は一向に引かなかった。
こうして、第二王子に押し切られる形で二人の婚約者としての関係は始まった。