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人形使いは再び極める  作者: 二一京日
幼少編
3/33

3 大賢者、アダマンタイトを作る

 人形使いになることを決めてからも、アッシュのすることは大して変わらなかった。この世界について勉強し、体内の魔素量を増やす。後は少し体作りを始め、魔法の復習をした。


 いくら人形使いとはいえ、人形が使えなくなったらそれまで、とはなりたくなかったため、自分でも人形と渡り合えるようになりたいと思った。


 そのための特訓を一通り終え、自分に与えられた部屋でアッシュはのんびりとしていた。アッシュは与えられたこの部屋から出ることはあまりない。近くにはあまり人も来ない部屋で、最低限しかメイドたちは来ない。


 カイバー家の正妻の名はミサラというのだが、アッシュはそのミサラとはあまり会わない。精々数回程度。妾の子であるアッシュに対して言い感情を持っていないことは分かり切っていたが、実際にアッシュに悪感情が向けられたとき、アッシュはむしろミサラに感心したくらいだ。


 確かに目や雰囲気でアッシュのことを嫌っていることは分かるのだが、それ以上は何もしない。必要最低限育てるだけで、愛情は注がず、ただそこにあるのを許すのみ。しかし、嫌っているからと言って感情に任せた行動はしない理性的な女性だとアッシュは感じた。


 相手を嫌っているとき、感情的に動いてしまうことはよくあるのだが、それを無理矢理にでも押さえつけることは難しい。それをしているミサラに、アッシュは素直に敬意を表した。好きになることはなれずとも、嫌いに離れなかった。


 当主にはまだ一度も会ったことはなく、正妻の子は二人いるようだが、その二人にも会ったことはない。一人は長男でアッシュよりも一つ年上、もう一人は長女でアッシュと同い年。ただ、アッシュの方が生まれは早いため、アッシュの妹と言うことになるが、立場としてはアッシュの方が弱いだろう。


 おそらく兄と妹はもう人形使いとして修業を受けているだろうが、生憎とアッシュは人形どころか魔法についても教えてもらえず、世界についても独学でどうにかしろとでも言われているようだった。


 人形というものは転生前には存在しなかったが、一番近いのはゴーレム使いだろう。だが、その作りは今の時代では相当精巧なものになっている。ゴーレムなどと比べるのは失礼というものだろう。


(ただゴーレムを作るんじゃなくて、人形を作りたいところだけど……なかなか難しい)


 転生前にそれなりに医療についても学んだアッシュは、人の体については良く知っているし、その知識を使えば人形の構造を作ることはできる。だが、それではただ動く人形でしかない。強力な人形にするには、やはり素材を強力なものにしなくてはならない。


(思いつく中で一番適しているのは……アダマンタイトか。アダマンタイトとなるとかなり骨が折れるが、やるなら徹底的にやろう)


 アッシュは手の平に体内の魔素を集め、圧縮させる。アッシュの持つ大量の魔素がほんのひと欠片程度の大きさにしかならないほどに固める。


 本来魔素は目で見えることはなく、訓練しなければ感知することもできない。しかし、例外として大量の魔素を圧縮して一か所に集めると、それは淡い光を放つようになる。その色は千差万別で、魔素の圧縮速度によって変わってくる。


 転生前はドラゴンなど大量の魔素を持つ生物が棲む周辺にたびたびアダマンタイト鉱石が見つかったが、それは生物たちが無意識に放っていた大量の魔素が自然に圧縮してできたものだ。それは何十年、場合によっては何百年とかけて作られるものなのだ。


 アッシュが体内の魔素のほとんどを使いきって圧縮すると、その掌には白く光る小石があった。それがアダマンタイトだ。

 アッシュの体内の魔素量は転生前ほどではないが、この屋敷にいる人間とは比べ物にならないほどになっている。それでも、一度に作ることができたアダマンタイトはほんのひと欠片。これを人形が作れるまで作り続けるのは、いくらアッシュでも至難の業だ。


(だけど、必ずやってみせる。最高の人形を作るために)


 そう決意を新たにし、アッシュは魔素を早く回復させるために眠ることにした。


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