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人形使いは再び極める  作者: 二一京日
幼少編
2/33

2 大賢者、人形使いの家に転生する

 大賢者が発動した転生魔法は問題なく成功し、大賢者は五百年以上先の未来に転生を果たした。最初はこの世界についての把握に取りかかろうとした大賢者だったが、赤ん坊の体ではできることが限られており、結局できるのは体内の魔素量の強化くらいだった。


 二年ほど経つと、行動範囲が少し広がり、まずは家の中、そしてそこから世界の常識について知ろうと思った。大分家が大きく豪華になっているため、どこかの貴族にでも転生したことは分かっていたが、周囲にはあまり人がいなかった。精々お世話をするメイドが時々出入りするくらいで、ほとんど一人きりだった。幼い子どもを一人にするなんて何を考えているんだ、と大賢者は思ったが、調べ物がしやすくなったことを思えば少しくらいは感謝できた。


 そこからは少しずつこの世界について学び、さらに二年が経ってようやく大賢者は自分の名前を知った。

 アッシュ・カイバー、人形使いの名家カイバー家に生まれた次男。だが、どうやら正妻の子ではなく妾の子であるようだ。そのため、この屋敷のメイドや執事たちからはあまり良い扱いを受けていない。当主の計らいで育ててはもらっているが、それ以上はしない。正妻もあまり良い気はしないようだ。


 それを知ってアッシュは少し申し訳ない気持ちになったが、転生しているため精神年齢は相当高い。嫌な扱いを受けても、それに耐えきれるだけの精神力はある。

 それに、そんなことよりもアッシュには人形使いということに興味が沸いた。転生前の時代では人形使いと言えば大道芸人くらいしか思いつかないが、この時代ではどうもそんなマイナーなものではないらしい。


 この時代まで魔法は進歩し、いつしか人間が魔法を使わなくてもいいようになった。魔道具が出回り、誰でも魔法を使えるようになり、さらには魔素を使った人形を使うようになった。転生前の時代でも、強大な魔法を使おうとしても、体の方が追い付かないということはアッシュにはあった。強大な魔素を持っている者のみの悩みではあったが、この時代の人々は転生前の時代よりも魔素量が比較的に多い。アッシュと同じ思いをしていた人はそれなりの数がいただろう。


 しかし、もし魔法を使うのが人ではなく、ただの道具だったら。強力な魔法を使って壊れてしまっても直せばいいし、人間よりも頑丈な素材で作っても良い。魔法使いたちは次第に自分で魔法を使うことはなくなり、道具に使わせるようになった。道具に魔素を注ぎ込み続け、溜めた魔素を使って強大な魔法を使うという手法になった。


 段々と道具は改良を続け、人形という形に今の時代は落ち着いた。人型にすることで汎用性が生まれ、さらにカスタマイズが容易になったのだ。そのため、今の時代では魔法使いとは呼ばず、人形使いと呼んでいる。


 一応魔法を学ぶらしいが、それは本人が使うためというよりも人形に使わせるためではある。人形が当人の実力の証明となるため、人形使いこそが至上だという考えが今は広がっている。

 今でも自前で魔法を使う人は少なからずいるが、そういう人たちは冷遇の対象となる。むしろ魔法が使えない人よりも立場が低い。魔法を使えるならば、最低でも人形を使えなければ意味がないとさえ思われている。


 しかし、強力な人形を作るにはどうしても貴重な素材が必要になる。貴重な素材が必要ということはそれを囲う出来る職人を雇わなければならず、雇うためには金がかかる。さらには素材の調達にも金が必要となると、人形を一体作るには平民ではなかなか手が届かない値段になる。


 もちろん、本人の腕前次第で人形の性能の差は覆せる。しかし、そんな中でもカイバー家は特別な家だった。現当主のマーシュ・カイバーは世界最高の人形使いと言われている。本人の技量も超一流だが、保有している人形も世界最高峰の性能。家の党首に代々受け継がれ続けてきた人形を、当主自らが改良し続けてきた人形はカイバー家が積み重ねてきた時代の重みだ。


 だからこそ、カイバー家は人形使いの名家と言われる。他にもいくつかある名家の中でも、カイバー家は別格とされている。その分カイバー家の人間には重い期待がかけられるが、妾の子であるアッシュにはそのような期待はかけられないため、気楽なものだ。


 そしてアッシュが転生してから五年経った今、アッシュはこの世界でやることについて決めた。魔法の延長線上というのが、転生前の知識が活かせそうでまた良かった。


 アッシュは人形使いになることに決めた。


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