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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 機械国家カルセオラリア編 ~

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機械国家の今後の扱い

「思ったよりは落ち着いているみたいで良かったです」


 今回の件で猛省を促した大神官さまは、わたしの額に手を当てながらそう言った。


 その表情には、先ほどまでの冷ややかな空気も、フェロモン全開な様子も一切、感じられない。


 でも、今のわたしは、一度にいろいろありすぎて、考えが纏まっていないだけだと思う。


 なんか、ずっとどこかがぐるぐるしているし、思考もどことなくマイナス方向へ爆走中だった。


「時間はあるのですから、ゆっくりとされてください。まずは、その身体を休ませることが大切なのですから」


 大神官さまの言うことも分かっているけど、わたしの心は休まる意思を見せてくれない。


 なんか、ざわめいたままだ。


「九十九さんたちも、心配されていました」


 ああ、そうか。

 また心配させちゃったのか。


 考えてみれば、当然の話だね。

 過保護なあの人だから。


 他の人を助けることを選んでも、わたしを心配しないわけがないのだ。


 本当に自分がいっぱいいっぱいだったことが分かる。

 そんなことにも思い至らなかったなんて……。


「後は……10日後に、この国で中心国の王たちによる会合が開かれる予定……ということでしょうか」


 中心国の王たちが集まって、会合?

 なんだか、ピンとこない。


 人間界で言う国際会議みたいなものだろうか?

 首脳会談みたいなやつだっけ?


 ああ、政治に興味がなかったことの弊害がこんな所に……。


「ご存知のとおり、カルセオラリアは中心国です。ですが、城は全壊し、城下も半壊状態にあります。さらには、王位継承権第一位の方も亡くなりました」


 城下は半壊って聞いていたけど、城の方は全壊していたのか。


 まあ、わたしたちがいた地下にも、あれだけ天井が落ちてくるぐらいだから、土台は崩れていてもおかしくはないのか。


「このまま、中心国を維持し続けるのが困難な場合、同じ大陸内にある他の六国に中心国の名と権限を委ねる必要があります。それらについて、話し合いの場を設けることになりました」


 中心国……、ということは、セントポーリアも来ると言うことだろうか?


 不意に、セントポーリアの王子のことを思い出してしまった。


 彼は……、今もわたしを探し続けているのだろうか?


「会合参加に関しては中心国の王とその補佐役を担うものだけです。王子や王妃を含む王族は、原則、参加できません。強い魔気を纏う王族が他国に長期間集まると、その国の大気魔気のバランスが乱れやすくなりますから」


 この国には、今、既に王族が数名集まっている気がしますが?


 ストレリチアの王族だけではなく、カルセオラリアの王子とアリッサムの王女。

 そして、一応、わたしも……かな?


「そうですね。ですが、本来、王族の魔力は、その頂点である王たちには遠く及びません」


 あの水尾先輩や真央先輩を越えるってことが既におかしい。


 強さのハイパーインフレってやつが起きている気がする。


「そして、今、この国にいる王族に関しては、属性が見事に分かれているのが救いだと思っています。念のため、栞さんを含め強い魔気を纏っている方々の使う部屋には結界を強めに結びました。お見えになる王たちにも失礼ながら結界を結ばせていただく予定ですよ」


 元々、この国の城は大聖堂を含め、強い結界で護られていたはずだ。


 その上に、重ねて結界を張るってことは、それだけ警戒しているってことでもある。


 中心国の王たちが一堂に会する場。

 それがどんな世界かは想像してもさっぱり分からない。


 この国にいるワカやグラナディーン王子殿下、アリッサムの王女である水尾先輩や真央先輩、カルセオラリアのウィルクス王子やトルクスタン王子よりも凄い人たちというのがそもそも見当もつかない。


 鈍いわたしだって、王族と呼ばれる人たちが一般の魔界人に比べ突出しているのは分かるぐらい強い魔気を纏っているのに。


 わたしが国王陛下と呼ばれる存在とまともに対面したのはただ一度。


 ジギタリスにいたときも、ストレリチアで生活していたときも、最近までいたカルセオラリアでも、王と会うことはなかった。


 ワカ曰く、娘でも顔を合わせることはほとんどないということだから、あまり外に出ることもないのだろう。


 しかし……、そんな国王たちが揃う。


 それって、かなり貴重で稀少な事態なのではないのだろうか?


 一種のイベント?


 なんとなく、()()()()()()()()()


「これまで、中心国6カ国の王が集まることはほとんどありませんでした。アリッサムが何者かに襲撃された折に、次の中心国を決定するために開かれたのは記憶に新しいですが、それ以前の中心国による会合は、数百年前だと記録されています」


 中心国の決定って、その大陸の国々の中で決定するわけじゃないのか。


「中心国は他の大陸が見ても納得するようなものでなければなりません。大陸の中だけで世界が動くわけではありませんからね」


 逆に、自分たちの大陸のことなのに、大陸内の国々に決定権がないというのは不思議なのですが?


「自分たちのことになると、意見の偏りも発生します。表面上のことしか分からないこともあります。ですから、交流のある他大陸の目が必要になるみたいですね」


 他の中心国と一切交流がない国は?


「交流がない国はその時点で中心国となることは出来ないでしょう。友好的で開かれた国というのも重要な点です」


 他の大陸の中心国に良い顔している国が有利ってことになるのか。

 社交って大事だね。


「……それ以外では、その大陸の背景、王族の魔力の強さも判断材料となります」


 王族……ってことは、国王とその配偶者。

 後は、王位継承権を持っている人……か。


 でも……、セントポーリアの王子はあまり魔気が強いとは言い難いと水尾先輩が言っていた気がする。


 下手すると、同じ大陸のジギタリスの王子であるクレスノダール王子の方が上かもしれないとも。


 楓夜兄ちゃんは、魔力はあまり高くないと自分でも言っていたぐらいだというのに。


 実際、魔力解放した後に、楓夜兄ちゃんを見たら、確かに九十九や雄也先輩と比べてもあまり強くはないと思った。


 いや、彼は精霊を呼び出させるという特殊能力があるのだけど。


「王家の魔法の判断は少なくとも三世代での判断となります。具体的には先王、現王、王子や王女。もし、王子や王女たちに御子がいらした場合は、その子も対象とされたりもするみたいです」


 う~む……。

 わたしが会ったのは、国王と王子だからその二人だけで判断は出来ないってことか。


 尤も……、あの時のわたしに、そんな魔気の判別は出来なかったのだけど。


「ただ、今回のカルセオラリアはアリッサムとその事情が異なります」


 恭哉兄ちゃんは言葉を続ける。


「建物が崩壊し、国民は大多数が負傷していましたが、健在であり、第一位王位継承権者は亡くなられたものの、王や第二位、第三位の方がいないわけではありません。それが今回の会合でどう判断されるかというところでしょうか」


 そういう意味なら、アリッサムも厳密に言えば、滅んでないのだと思う。


 水尾先輩や真央先輩だけでなく、そのお姉さんや他にも生きている人たちがいるらしいし。


 でも、それを公表できていない時点で、中心国としてはダメってことか。


「問題は、現状からの判断で今後国家運営が可能かどうかです。中心国としてではなく、単に大陸の一国家となる可能性が高いというのが、グラナディーン王子殿下のお考えですが」


 ワカのおに~さま!? ……というか、その……、これまでの発言は守秘義務とかなんかそういったのにかかるのでは?


「国王陛下の考えはお聞きしていません。あくまで、内輪の世間話なのでそれが外部に流出したところで問題はないですよ」


 ああ、そうか……。

 王子に発言権はないのか。


 ……ということは、トルクスタン王子も今回の件の当事者なのに、蚊帳の外扱いってことになるのかな?


「カルセオラリア国は負傷した国王陛下の代わりにトルクスタン王子殿下が名代に立つ可能性はあります」


 カルセオラリアの王に会ったことはないけれど、六十代ぐらいじゃなかったっけ?


 魔界人だからはっきりと言い切れないけれど、流石に若い人たちよりは治癒も遅いかもしれない。


「ただ、その場合、どの国もカルセオラリア国を中心国が存続できる状態とはみなさないでしょう」


 ええ!?

 なんで!?


「そんな状態で国家運営の存続ができていると判断できますか?」


 あうっ。

 確かに、公立専願した高校受験生が、一発勝負の受験会場に行けない状態で高校入学が認められないのと同じようなものか……。


 でも、高校受験なら二次募集を受けることができたり、専門学校という救済措置が……、いや、それはランクが落ちる可能性があるって聞いた。


 つまり、それが、中心国じゃなく、普通の国になるってことか。


 う~ん……、健康って大事だね。

ここまでお読みいただきありがとうございました

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