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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 法力国家ストレリチア編 ~

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色恋相談珍談

祝! 400話目!!

説明回ですが、いろいろ大事な話に繋がっている話です。

「雄也先輩は、一目惚れって信じる人ですか?」


 さっきとは違って、今度はわたしの興味から来る質問をしてみた。


「さっきも言ったようにきっかけの一つではあると思うよ。それから、相手の中身に興味を持ってもっと深く知りたくなる。そんな恋愛の形もあるんじゃないかな」

「外見重視ってことですか?」


 それって、見た目が良い方が有利ってことだよね?

 いや、確かに付き合うなら見た目も好みの人間のほうが良いだろうけど。


「初対面でこの人とは難しいと思ってしまうと、友人になることはできても、それ以上の関係となるとなかなか難しいからね」


 おおう。

 なかなか厳しい。


 そして、大人の意見だ。


 さりげなく言ってるけど、「友人以上」ってことは恋愛とかそう言ったことだよね?


 でも、難しいと思っても、「友人にはなれる」という言葉は少し意外だった。

 なんとなく、雄也先輩は「無理」だと思ったら、それを貫いてしまうイメージがあるから。


「誰か気になる相手でも?」


 雄也先輩はどこか挑発的な笑みで聞いてくる。


「気になる相手? ……なんですかね? まあ……、気になる……のかな? あの二人……」

「二人?」


 わたしの言葉に、雄也先輩が問い返す。


「隠さないで言ってしまいますと、最初にこの城に来た時に、楓夜兄ちゃん……、クレスノダール王子殿下が、ワカを占術師のリュレイアさまと間違えて抱き締めちゃったんですよ。そう言った行動も、きっかけになっちゃいますか?」


 わたしが一気に喋ったせいか、雄也先輩が一瞬、目を丸くして、暫く考え込む。


「なるほど……、九十九と水尾さんを外させたのはそれが理由かい?」

「そんな所です」


 九十九はワカとそれなりに親しい。

 だから、いろいろと複雑になると思った。


 そして、水尾先輩はちょっと潔癖なところがある。

 それは女性慣れしているっぽい雄也先輩に対しての口調からもよく分かることだった。


「スキンシップは十分、きっかけになるし、好きだった人の面影がある人に対しても心を動かすきっかけとしては十分だと思う。でも……この場合は一目惚れとは少し、違う気がするかな」

「それも……、そうですね」


 楓夜兄ちゃん自身も否定はしていたし。


 でも、なんだろう。

 何か、ひっかかったのだ。


「まあ、リュレイア様とケルナスミーヤ王女殿下なら、外見や体内魔気が似ていてもおかしくはないかな」

「へ?」

「この国の王女殿下の亡き母君で、王子殿下の乳母でもあった『アイリスカール=セテラ=ストレリチア』様は、クレスノダール王子殿下の母君と従姉妹だからね」

「え? ええ!?」


 ちょっと、待って。

 いきなり情報が増えた!!


神女(みこ)になるべく、この国へ来て、ここで出会った神官と婚姻したけど、その夫が亡くなり、産まれたばかりの子も亡くした。そんな折、この国の王子殿下と現大神官猊下の乳母となったと聞いているよ」


 また情報が増えた!?

 ただ……、はっきり分かるのは……。


「ワカのお母さん……って、亡くなっていたんですか……」

「この国の王女殿下が城を出たのはそこにあるという話だからね。母親が死んで時を置かずして次の妃殿下が国王陛下の横に立っていることから、無理もない、と」


 あ~、そりゃ……、家出るわ。


 いや、ワカの性格からすれば、他にも理由がある気がする。


 周囲の噂は、表向き……、かもしれない。


「俺から話すのはまずかった?」

「いえ……、ワカの口からは絶対に言わないと思います。城へ移る前に聞けたのは良かったかもしれません」


 ワカの性格上、弱みとなることは話さないと思う。

 もしくは、ここぞというときに同情を引く意味で的確に使用するかのどちらかだ。


 どちらにしても、先に聞けて良かったと思う。


「……ということは、楓夜兄ちゃん、クレスノダール王子殿下とワカは再従兄妹(はとこ)の関係ってことですか?」

「うん。血縁関係にはなるね」

「魔界の王族って……、血が繋がりすぎていませんか?」


 こう民族の血を守るとかそんな感じはない。


「人間界ほど肌の色が異なるわけでもないし、髪や瞳の色は親兄弟でも違うからね。そう言った意味では他大陸であっても、異民族という概念はないのだと思う。それに、魔界人はほぼ単一民族のようだからね」

「そうなんですか?」

「一時は、()()()合わせて500人ぐらいしかいなかった時期もあるらしいよ」

「少なっ! ……って七大陸?」


 わたしが習ったのは魔界には()()()という話だった。


「500人ぐらいの時期に、7人の『救国の神子(みこ)』と言う存在がそれぞれの大陸を救った後、遥か時を経て、一つの大陸が地図上から消えてしまったらしい」

「ファンタジー要素満載過ぎて、どこから突っ込んでいいのでしょうか?」


 そして、「救国の神子」って……確か、セントポーリア城で聖女の肖像画を見せられた時に少しだけ聞いた気がする。


 しかし、7人の戦士が世界を救ったとかそんな話だったのか。

 思った以上にファンタジーな話だった。


 そして、災いを封じた聖女より、実はそっちの方が凄いって思うのだけど。

 人口増殖……って簡単にできるもんじゃないよね?


「それだけ人口が減っている時期に民族とかは拘れなかっただろうからね。大分、混ざったとは思う。その歴史があるから、他大陸の人間と夫婦になることもなくはない。特にこの国は世界各国から集うからね」

「なるほど……」


 言われてみれば納得できる理由だった。


「セントポーリアも血族主義なのは王族、貴族ぐらいだよ。城下に降りるとそこまではない。行商人も来るし、神官も来る」

「神官と夫婦って……なんだか不思議ですね」


 なんか神に仕える人間は、神様と結婚しているから俗世の人間とは……って考え方をするようなイメージがあるのだけど。


「神官も人間だよ、栞ちゃん」

「そこを修行とかで……」


 どうにか乗り切ってほしいと思ってしまう。


「魔界人の男は無欲(むよく)恬淡(てんたん)ではいられない事情もあるんだ」

「え?」

「こんな形で話すのもあれなんだけどね……。でも、丁度良いか。今なら、九十九もいないし」


 九十九と関係があること?


「魔界人の男には『発情期』と呼ばれる時期があるんだ」


 その言葉を聞いて……。


「……犬ですか?」


 思わず春先の犬を思い出してしまった。


 猫も煩かったけど、最初に出てきたのは近所で吠える犬だった。


 犬が苦手な人間にとって、あれは怖いのだ。

 そして、声を聞くだけですごく辛かった。


 そんなわたしの言葉に雄也先輩は苦笑する。


「犬は毎年何度かあるけれど、魔界人の(おす)の場合はちょっと違うかな」

「オス……って……」


 何気に酷い。


「15歳を越えた辺りから、異性経験がない男のみ発生する生理現象だよ」

「つまり……、チェリーな男の子限定の現象ってことですか?」


 わたしの言葉に雄也先輩が噴き出した。


「まあ、そん、なところだ……ね」


 何故か笑いが止まらない雄也先輩。


 彼がここまでツボにはまったところを見るのは初めてだと思う。


 わたしは何か言葉を間違えたのかな?

 ちゃんと一般的な「童貞」って言葉を使うべきだった?


 でも、ちょっとそれはテレがあったのだ。


「まあ、童貞男(チェリーボーイ)限定の現象だが、これがなかなか厄介でね。無理矢理、異性と行為に及ぼうとするものなんだよ」

「……つまり、婦女暴行ってことですか?」

「理解が早いね。こんな話を突然しているのに……」


 まあ「発情期」って言葉から、自然にそっち方面に意識が向かったのだと思う。


 わたしだって、いろいろと漫画を読んできた。

 全然、そっち方面の知識がないわけではない。


 まあ、勿論、経験はありませんけど。


「15歳を越えたあたり……。雄也先輩は?」


 わたしがそう言うと、雄也先輩は意外そうな顔をした。


「俺がそう言うタイプに見える?」

「…………見えません」


 ちょっとまともに見ることができなくて顔を逸らしてしまった。


 えっと、つまり、雄也先輩は大人ってことでよろしいのでしょうか?


「魔界にいる以上、その危険は意識しておく必要があるとは思っていた。特にこの国にいるなら」

「ど~ゆ~ことですか?」

「この国には女性に飢えた神官が多いから」

「……わたしでも対象になりえる……と?」

「十分ね」


 いや、そこで笑顔にならないでください!


 でも、神官だってもっと相手を選ぶと思うのだよね。


「あと、九十九だ」

「…………はい?」

「ヤツが経験者に見えるかい?」

「……見えません……けど……、実のお兄さんの口からそんなことは……」


 ちょっと……どうかと思わなくもないような?


「当人、絶対言わないから」


 妙に力強く言われた。


「……ですね」


 少しばかり、デリケートすぎる話題だ。


 そして、そんな話をもしも、当人からされたとしても困ったことだろう。


 わたしにどうしろと? って話だ。


 その症状がどんな状態かは分からないけれど、協力はできそうもない。


「まあ、頭の片隅には置いておいてくれる?」

「はい」


 わたしはそう返事することしかできなかった。


「それとクレスノダール王子殿下の方は今のところまだ見守ろうか。本人もまだ気持ちの整理ができていないことろだろうから」

「あ……、はい……」


 その後の話の衝撃が強すぎて、最初の本題を忘れていた。


「雄也先輩、いろいろとありがとうございます」


 内容的に、かなり話をしにくいことでもあったのに、ちゃんと警告してくれたのだ。


 ちゃんと感謝しなければ。


「気にしないで、これは多分、九十九にはできないことだろうから」


 そう笑顔で答える雄也先輩は、やっぱりいろいろな意味で大人な人だと思う。


 そう言えば……、船にいた時にも、他の人がいないところで、今回と似たような話をしてくれたね。


 あれは「発情期」じゃなくて、もっと確実にわたしが受ける被害。


 この時のわたしは、自分に向けられる可能性の低い九十九の「発情期(行動)」より、そっちの方が気になっていたのだった。

400話目です!

これも読んでくださる方々、ブックマーク登録をしてくださる方々のおかげです!

本当にありがとうございます!!


次の話を400話にした方が良いかとも思いましたが、今後の伏線がいろいろな意味で張り巡らせているこちらにしました。


そして、この400話目にもう一つの作品「乙女ゲームに異物混入」と同日、同時間に更新となったのは本当に偶然です。

内容的にもなんという運命?


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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