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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 法力国家ストレリチア編 ~

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不機嫌少年

 高田は、少しの迷いの果てに結論を出した。

 だけど、何故かそれを聞いたオレの方が迷っていた。


 彼女の話では、大神官は魔力の封印は解くことができるらしい。

 だけど……記憶の封印は解かないと聞いた。


「はぁ……」


 何故だか、溜息が出る。


「オレは……、どうしたいんだろう?」


 高田が魔法を使えるようになる。

 そして、それは恐らくオレや兄貴なんかよりは凄まじい力のはずだ。


 これまで見せてきた片鱗がその証。


 本人に自覚がなくても、彼女が王族なのは本当のことなのだから。


「まあ……、王子の例もあるが……」


 高田の腹違いの兄であるダルエスラーム王子は、お世辞にもあまり魔法の才があるとは言えなかった。


 尤も、ソレは過去の話で、今は違うかも知れないが……。


 彼女は幼い頃から、魔法の才が際立っていた。


 同じ歳のオレやその兄貴、一つ上の彼女自身の義兄なんかよりずっと……。


 それが元に……戻る……ということは、オレや兄貴が彼女を護り続ける理由もなくなってしまうのではないか?


「馬鹿馬鹿しい……」


 例え、魔法では及ばなくても、アイツを護るのがオレたちの義務であり責務でもある。


 いざというときはこの身を盾にしてでも護れば良いだけの話だ。

 弾避けというものは多い方が良いのだから。


 相手は、王族の血を引き、オレたち兄弟は出生すらよく解らない。

 元々比べることが間違っている話なのだ。


「でも……」


 どんな理由や事情があっても、女に負けるなんて悔しい。


 男女差別と言われようと、実はそれがオレの本心なのだ。


「器の狭い男と呼びたくば呼ぶが良いさ!」

「希望ならば仕方ないな」

「へ?」


 振り返ると、そこには兄貴の姿があった。


「誰にも言われずに自己批判とは結構なことだ。特にお前は己を見つめ直した方がいいという点が多いからな」

「ほっとけ」

「身内でなければとっくに放っている」


 兄貴は突き放すようにそう言った。


「で、何か用か?」


 だが、いちいちそんなことに反応していても仕方ない。


「いや……、彼女はまだ封印を解いてないのだな。で、明日、改めて封印を解きに行く……と。先程本人から聞いた」

「……らしいな」


 どうやら、高田は兄貴にも報告したらしい。

 

「……それで、その(つら)か?」

「は?」

「不機嫌さが全面に出てるぞ。隠す気が少しでもあるならもっと巧く隠せ」

「オレがどんな顔してようと、どうでもいいことだろ?」

「全くだ。ただ、それで周りが不快になるのは望むところではないんでな」

「部屋から出たら、いつもの顔に戻すよ」

「ソレが出来るほど、お前が器用だとは思えないが……」

「こうやってごちゃごちゃ考えているのは、今だけだ。後は、なるようにしかならないんだからな」


 オレがそう言うと、兄貴は深く溜息を吐いた。


 それが妙にムカつくが、それもいつものことだ。

 いちいち突っかかっても仕方がない。


「ところで、お前は気付いていたか?」


 ふと思い出したように、兄貴がそう言った。……どうやらようやく本題らしい。


「何に?」

「彼女の手首だ」

「あん?」

「城に行ってから、着けていたアミュレットが変わっていたのだ」

「変わってた?」

「……鈍いヤツだ」


 オレの反応に対してやれやれと兄貴はわざとらしく先ほど以上に深い溜息を吐いた。

 よくこれだけ息が続くなと、感心する。


「何だよ。悪かったな」

「いや……。ただ、それに込められた法力が、今までのモノとは桁が違っていたのだ。それが気になったのだが……、その様子じゃ、お前は気付いてなかったのだな」

「ああ。兄貴と違って、いちいち、女の手首までチェックはしてねえからな」


 確かに高田の左手首は気にした方が良いということは分かっている。


 だが、船の中で精霊に見せられたあの黒い染みを思い出すと、胸の奥から何かが()り出してくるような嫌な気分になってしまうのだ。


 だから、無意識に目を向けたくないという気持ちがあった。


「そのようだな。お前みたいに一意直到な男が羨ましいよ……」

「なんだよ、その……一意直到って」

「飾らないってことだ」

 そう言って、兄貴は部屋から出た。


「褒めてねえだろ、それ……」


 それにしても……、アイツは()()()()()()()()()()()()()()()()()


 効果が上がっているなら良いことなんだろう。

 なんか知らない所で神様って存在から呪いを受けているらしいからな。


 大神官がそれに気づいて、新しくもっと効果の高いものを貰ったということだろう。


 そうなると、元のアミュレットは……、やっぱり外したんだろうな。

 オレにしては結構な価格だったのに。


 オレがやったアミュレットは一度、彼女自身の手によって遠くに放り投げられた。

 それもオレの目の前で。


 あの時、オレのやったヤツを遠くに放り投げた時の彼女の気持ちは分からない。


 ただ、これまでに見たこともないくらい怒って……、同時にひどく傷ついた顔をしていたことだけは覚えている。


「好き……の後に、大嫌い……か」


 オレはアイツが言った「好き」の言葉には、そんなに深い意味はなかったんだと今でも思っている。


 ただ、あの時は他人の色恋沙汰に巻き込まれて、アイツ自身もかなり混乱していた。

 そして、たまたま近くにいた男がオレだったから、なんとなく口にしたんだろう。


 それが証拠に、アレからアイツの態度に全く変化がない。

 少なくとも、好きな異性に対してとるような態度をとられた覚えはない。


 だから、あの場にいたのが兄貴でも……、アイツは「好き」だと勘違いしたことを言ってたんじゃなかろうか。


 あの紅い髪の男が現れた時も、そんな感じだったのだろう。

 警戒もしていないから簡単に懐に入られるんだ。


「誰でも……、良かったんだろうな……」


 そう……。

 結局、高田も()()()()()()なんだ。


 それとも、女って生き物全般がそういうものなんだろうか。


 身近な異性に、「好き」という言葉を試しに言ってみて、それで相手もそうなら付き合って……。


 それで、飽きたら次に行くんだ。


 男を散々振り回して……、自分の都合で別れを告げて。

 それでも平気な顔して次の日、挨拶できるんだ。


「それに……、高田のはどう考えても、オレに恋愛感情はなさそうだよな」


 あの女は分かりやすくオレを異性扱いして、それなりに好意ってやつを示した。


 でも、高田は、オレを異性と認識していない素振りで、いつものほほ~んとしている。

 少しでも意識しているなら、無防備に寝るなんて愚は冒さないだろう。


 時々は、ちょっとしたことで照れたりとかするが……、、アレは男に慣れていない女の正常な反応だと思う。


 オレ自身も、高田相手にはさほど緊張もしない。

 水尾さんは……、あんな言動だけど、時々、異性だと感じることがある。


 でも、高田には皆無……、いや、一度だけあったか。


 温泉でのアレ。

 タオル一枚の姿は、流石にアイツも女だと思わざるをえなかったが、それっきりだ。


 魅力があるとかないとかそれ以前の問題なのだ。


 彼女には、人としての魅力、人を惹き付けるという点においては、人並みにあると思っている。


 でもそれは、笑顔を振りまく愛想のいい子どもを可愛らしいと思うのと同じ。

 邪気のない屈託のない顔を見て癒されるようなものだ。


 女性として、男を惹き付ける色気ムンムンのフェロモンみたいなモノは一切ない!

 そう断言しても良い!


 今後、オレが「発情期」とかになったとしても、あの女だけは絶対に襲わない自信すらある。


 いや、発情期の時期までに、一度も経験してないってのも、男としてはどこか虚しい話なのだが。


 それでも、今の生活では異性と縁がないままとなってしまうのは間違いないだろう。

 それについては仕方がないと半分以上は諦めることにした。


 でも、そうなると、余計な危険も出てくるからそれまでにはなんとか手を打つ必要がある。


「兄貴がオレの縁まで奪ってるんだろうな……」


 そんな気がして、オレはガクリと肩を落としたのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

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