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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 護衛兄弟暗躍編 ~

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あわない女性

「夜更けにセントポーリア国王陛下の私室にいると、本人の在室、不在に関係なく、様々な女性たちが訪れることも知ったのだけどね」


 そんな言葉を雄也さんから聞かされてわたしはどんな反応を返すのが正しいのだろうか?


 だが、なんとなく、この人の女性に対する人あしらいの巧さはその辺りにある気がした。


 国王陛下の不在時にも、そんな目的で訪れる女性たちを追い返す必要があるのだ。

 しかも、相手によってはかなりの立ち回りが必要となることもあっただろう。


 同時に、10歳前後の少年になんてことをさせていたのかと、セントポーリア国王陛下に対して思うところも多々ある。


 そういったことは、自分で対応していただきたい。

 そんな風に思いもしたけれど、苦手そうだよね、あの国王陛下。


「その後、人間界で言う週末時期になると、セントポーリア国王陛下が必ず私室にいるという話が広まった。その上、俺が応対する回数が増えていることが知られると、少女と呼ばれる年代の女性が訪れることが増えたかな」

「少女?」

「これまで一切、そういった話が持ち上がらなかったセントポーリア国王陛下の寵愛を受けたのは、まだ10歳前後の少年だった。国王陛下がそういった趣味ならば、同じ年代の女性を……と思ったんだろうね」


 その当時、雄也さんは周囲から10歳前後の少年に見えていたらしい。

 そして、それは間違っていない。


 その同年代の女性となると、小学生ぐらいの女児である可能性が高いわけで、しかも、そういう目的で送り込まれているとなると……。


「その親は何を考えているのでしょう?」


 年端もいかないような娘たちになんてことをさせようとしているのか?


「少年だと次世代に期待はできないからね。少女を送り込んで、あわよくば……という考えだろうね」


 いや、それを「あわよくば」と考えてしまう人たちってどうなの?

 そこまで倫理観がぶっ壊れているってこと?


 戦国時代の若い奥さんの年齢だって、嫁ぐ年代こそ早くても、床入りそのものは月の物が来てからだって聞いているよ?


 そうじゃないと、意味がないよね?


「それは、娘たちも承知して……ってことでしょうか?」


 雄也さんと同年代ってことは、セントポーリア国王陛下にとっては自分の子供世代の年代でもあるだろう。


 普通なら無理だ。

 男性は若い女性が好きだってことは聞いたことがあるけれど、限度があるだろう。


 若い女性が好きって話も、基本的には妊娠可能な年齢内じゃないと、生物の生殖本能も働かないはずだ。


「どうだろうね? 流石に6歳の女児は何も聞かされていなかったと思うよ」

「ろくっ!?」


 まさか、そんな年代の娘までとは思わなかった。

 いや、それはまだ、次世代自体、望めないだろう。


 運良くお手付きになって、その寵愛が長く続けば……ってことなのだろうけど、そもそも6歳の女の子に手を出すような殿方は、成長したらその子から興味を失ってしまうのではないだろうか?


「俺が陛下の私室入り口で応対した女性は、下は6歳、上は50歳までだったかな。独身、既婚に関係なくいたよ」


 下の年齢もおかしいと思ったけど、上の年齢も、おかしかった。


 50歳の女性に次世代を期待することも、結構、難しいだろう。

 さらに言えば、()()セントポーリア国王陛下よりも年上である。


 そして、独身者はともかく、既婚者もいたっていうのも、やはり倫理的にはどうなのか?


 いや、セントポーリア国王陛下も既婚者ではある。

 だから、同じように既婚者を宛がおうとしているのだとは思うけれど、いろいろ納得できないものがあった。


「身分もいろいろだったね。庶民の中でも俺たちのような孤児もいたし、裕福な家の娘もいた。他にも貴族の令嬢、夫人、庶子と国中から集めたのかと思うほどいろいろな女性がいたかな」


 それだけ、国王の寵愛が欲しいってことだろうか。


 いや、身分に関係なく……となれば、親兄弟だけでなく、他の思惑も絡んでいるような気がする。


 手あたり次第、送り込んだ女性の中で、自分が良いようにできる女性が気に入られたら幸いってところかもしれない。


 しかし、母はそれを知っているのだろうか?

 知っているんだろうね。


 母は、セントポーリア国王陛下の身近にいる女性なのだ。


 一見、仕事ばかりしているため、そんな色気のある関係には見えないけれど、それがいつ変化するかなんて分からない。


 だから、牽制の意味を含めて、絶対、余計なことを耳に入れようとする人はいると思う。


「未婚の女性王族もいたよ。ダルエスラーム王子殿下の婚約者候補として名前が上がるまでは、よくお会いしていた」


 昔、ダルエスラーム王子殿下の婚約者候補は、上も下も15歳ぐらい離れていると聞いたことがあった。


 ダルエスラーム王子殿下の15歳上の女性なら……、ああ、セントポーリア国王陛下との年齢差の方は一桁以内に収まっている。


 普通ならば、その女性王族がダルエスラーム王子殿下の婚約者になる可能性はほとんどない。


 人間界よりも若く見える人間は多すぎるし、この世界では超高齢出産の事例も少なからずあるけれど、それは、特殊事例だろう。


 多分、精霊族の血が入っているとかそんな話だと思う。


 それにこれまでのセントポーリア王室の歴史を見ても、そこまで年齢が上の正妃の事例はあるらしいけど、それは年齢が下の女性王族すらいなかった時の話だ。


 今回は似た年齢差の年下の女性王族がいるから該当しない。


「日陰の身になるけれど、その女性王族がセントポーリア国王陛下の子を産むことができれば、正妃殿下に対抗できる……、そう考えた方が多かったんだろうね。尤も、それをセントポーリア国王陛下は受け入れなかった」


 セントポーリア国王陛下は正妃殿下以外を妃とはしない。

 そう周囲にも言っている。


 だけど、正妃殿下と寝所を共にすることもない。

 それは周囲がそう言っている。


 他国から来た大神官の遣いたちの前でそんな話を聞かせるのはどうかとも思うけれど、それは、わたしも男性と思われていたからだろう。


 女性だと分かっていたら、流石にあんな話は耳に入れないと思いたい。


「本人は、セントポーリア国王陛下の愛妾になることを願っていたのでしょうか?」


 日陰の身というのはそういうことだ。

 それを承知して、何度も訪れていたならば、相当な覚悟があったことだろう。


「本人にそんな野心はなくとも、この国では貴重な女性王族だからね。正妃殿下に唯一対抗できると思われていたらしい」


 それだけ、セントポーリアの正妃殿下には城内に敵が多いと言うことだ。

 確かに評判は良くない。


 外務、政務、財務、神務を統括し、セントポーリア国王陛下を陰に日向に支える国務大臣の娘にして、その国王陛下唯一の妃。


 その権力を笠に着て思うが儘に振る舞い、質素倹約ともいえる陛下と真逆の生活を送るセントポーリアで最も高貴なる女性。


 わたしはまだ会ったことはない。

 何度かセントポーリア城に行く機会はあったが、それでも幸いにしてお会いしたことはないのだ。


 その高貴なる女性は、城内にある北の塔からほとんど出てこないというのもあるが、多分、雄也さんや九十九、セントポーリア国王陛下が会わせないように頑張ってくれているのだとも思っている。


 その正妃殿下に関しては、幼い頃(ワタシ)は会ったことがあるようだけど、過去視ですらまともにその姿を視ることがない。


 だけど、その方のことを少し考えるだけで、()()自然にこの身体が震えてしまうのだから、わたし(ワタシ)の意識の相当、根深い所にいらっしゃるのだと思う。


 幼い頃(ワタシ)はどれだけの目に遭ったのだろうか?

 そして、あの母は?


 まあ、その方のことは考えたくないから、必要以上には考えないようにしているのだけど。


「その女性王族の方は、今でもダルエスラーム王子殿下の婚約者候補なのですか?」


 だから、わたしは正妃殿下のことから意識を逸らすために、別の気になったことを確認したのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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