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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 護衛兄弟暗躍編 ~

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悪い意味での共同事業

【ウォルダンテ大陸の大気魔気の乱れについて】


 なるほど。


 ローダンセだけでなく、ウォルダンテ大陸内にある全ての国々による悪い意味での共同事業のような状態らしい。


 だが、この世界は大気魔気が乱れると必ず、()()()()()()にされている気がする。


 具体的には、フレイミアム大陸だ。


 大気魔気が乱れ、大陸の環境も変化し、荒れているのは、魔法国家アリッサムが消失したためとされている。


 そして、輸送国家クリサンセマムがその後任として力量不足であることも、理由として上げられているそうだ。


 だが、おかしい。

 フレイミアム大陸はアリッサム、クリサンセマムの他に、ピラカンサ、グロリオサ、ヒューゲラって国があるのだ。


 それなのに、何故、中心国だけのせいになる?

 いや、大陸の状態を良くするために中心国が音頭をとって解決法を模索することになるなら分かる。


 でも、全ての責任を押し付けるのは、何か違うのではないの?


 クリサンセマムという国は、国王を見た限り、そんなに好きになれそうもないのだが、それでも、中心国がその責任をとれ、謝罪と賠償をよこせ、って話は絶対に違うことはわたしでも分かる。


 シルヴァーレン大陸はそこまで激しい話にはなっていなかったらしいいけど、セントポーリアに全てが背負わされていたことは理解している。


 だから、セントポーリア国王陛下が今も苦労をしていることも。


 尤も、シルヴァーレン大陸はセントポーリアが打ち立てた様々な政策が陰ながら実を結び、少しずつ落ち着き始めている。


 隣国の大樹国家ジギタリスも同じように、良い方法を模索中らしい。

 大気魔気が荒れて環境が激変すれば、大樹内で生活しているジギタリスは大打撃だ。


 ユーチャリスは次世代の王位問題で揺れまくっているからちょっと大変そうだけど、それが落ち着いたら少しはマシになるだろう。


 ライファス大陸は情報国家が統制して、今のところは目立った問題はなく、グランフィルト大陸はストレリチアの一国だけなのだけど、様々な方法で大気魔気を落ち着かせている。


 スカルウォーク大陸は最大の大陸ではあるが、中心国の魔力がそこまで強くなくても、カルセオラリアと他6カ国が協力しているためか、大気魔気はかなり落ち着いていた。


 そして、問題となっているウォルダンテ大陸は90年ほど前から荒れているそうだ。


 しかし、思う。

 そこまで分かっていて、何故、情報国家はそれをウォルダンテ大陸の国々に()()()()()()()()()()()()


 情報には対価必要って分かっているけど、他大陸が荒れ、大気魔気のバランスが崩れてしまうと、他の大陸だって他人事ではいられなくなる気がするけどそうではないのだろうか?


 大陸と違って、大気は繋がっているのだ。

 大気魔気という層で分かれてはいても、物理的、魔法的に壁があるわけではない。


 海を境に大気魔気に含まれている主属性が分かれているために、ちょっと分かりにくいけれど、境界部分は混ざっているらしいのだ。


 伝聞なのは、その層の境でわたしは意識が混濁してしまうため、それを知覚できないからである。


 まあ、伝えていないなら、現状、そこまで大きな問題になることではないと考えるべき……なのかな?


 いずれにしても、ウォルダンテ大陸の話はローダンセだけの問題ではないことは分かるのだけど、それが「ローダンセの人間は止めておけ」にどう結び付くかが分からない。


 国の問題だけど、貴族が関わるのは当主であって、子息はそこまで関わらないと思う。


 強いて言えば、アーキスフィーロさまはその国の事情に巻き込まれ過ぎていることは問題だとずっと思っている。


 その割に、あの人本人への対価がない。

 間接的に王族に仕えているのだから、それなりに報酬ってあるべきだよね?


 だけど、あの人はそういったものを受け取っている様子もないし、何なら、家からも援助がない。


 王家主催の行事で着るえんび服の仕立てを、家のお金じゃなくて、自分で魔獣退治しなければできなかったことからもそれは分かるだろう。


 つまり、ローダンセの人間ってわけじゃなく、ロットベルク家そのものが良くないだけのような気もする。


 そして、それなら納得もできるのだ。

 あの家のアーキスフィーロさまの扱いはこれまで聞いただけでも酷過ぎるから。


 でも、現状、考えられる相手で、それ以上の人がいない。

 他国の王族にツテがあり、国の貴族子息だから他国からの干渉も難しい。


 探せばいるかもしれないけれど、同じような年代で、しかも未婚ってなると、かなり少ない気がする。


 アックォリィエさまのように、この世界ではわたしたちの年齢になれば、婚約者どころか、既婚者で子供がいる人だっているのだ。


 何より、既に口頭とはいえ、契約を結んでいる。


 それなのに「条件が悪かったから」という理由だけで解消するのは難しいし、何より、この契約はトルクスタン王子を通してこちらから持ち掛けたようなものだ。


 それを簡単に解消なんてできるはずがない。


 だけど、そんなわたしの気持ちなどお構いなしに、情報国家の国王陛下は他国の人間からの候補を探すように九十九に言ったらしい。


 なんで、よりによって九十九に言うのだろう?

 その場にいたわたしの関係者が九十九だったからってことは分かるけど、これはこれで嫌だ。


【馬鹿に規律を解いても無駄だと諭される】


 ……どういうこと?

 いや、言っている意味は分かる。


 言葉が通じない人って、本当に通じないから。


 同じ言葉で話しているのに、自動翻訳が妙な方向に意訳されているんじゃないのか? って思えるような人間は少なからずいる。


 特に神官。

 話を聞いて欲しい。


 どうして、自己都合の解釈を満足そうに告げられるのか、未だに分からない。


【他国の貴族子息に嫁いでも、無理矢理連れ去り監禁する可能性が高い】


 ああ、うん。

 あの人の話を聞かずに、引き摺るような王子さまの話ですね?


 なんとなく、それは考えていた。

 その後に続いている言葉は、九十九も迷ったのだろう。


 続く文章はいろいろぼかされている感じはするけど、居場所を知られたら、まあ、酷い目に遭うのだろうなってことは分かる。


 以前、雄也さんからもそう言われていた。

 まあ、それが婚姻後もその危険があるって話だ。


 確かにアーキスフィーロさまに害がある。


 自分が妻とした相手が、他国の王族に連れ去られる、あるいは人知れず行方不明になる可能性が高いってことなのだ。


 一度、婚約解消をしているから、余計に大きな醜聞へと発展する気がした。


 つまり、この世界のどこにいても、わたしは表に出ることができないってことか。


 ダルエスラーム王子殿下が別の女性と婚姻し、王位を継いでも、現在のセントポーリア国王陛下の血が必要な事実は変わりない。


 後数年、逃げ切れば……という考え方は甘すぎたらしい。


【王族の血を引くだけの貴族子息如きでは、護れないことを理解しろと言われた】


 情報国家の国王陛下は、九十九に向かってさらにそう追撃したらしい。

 だけど、それはどこにいても一緒ってことだ。


 あのダルエスラーム王子殿下が諦めない限り、わたしはどこにいても、誰といても、この身を狙われることになる。


 つまり、今と、何も変わらない。


 変わるのは巻き込む人数と、関係各所への影響だ。

 ロットベルク家……、いや、アーキスフィーロさまを巻き込めるかって話になる。


 そろそろ、ちゃんと話していた方が良い気がしてきた。

 その上で、アーキスフィーロさまに改めて選んでもらうべきだろう。


 現状では詐欺みたいな状態なのだ。

 何の柵もないと思っていた契約相手が、後からになって、その負債を暴露するってことなのだから。


 いやダルエスラーム王子殿下がわたしを追いかけていることは知っていたのだから、改めて、その実害について具体的な話をするだけと考えよう。


 この辺りは護衛にも相談するべきだ。


 わたしの覚悟が決まらなければ、護衛たちも見動きできないし、何より、その方針も決まらないだろう。


 だけど、そんなわたしの気持ちは、次の文章によって、ますます困惑することになる。


【情報国家の国王陛下からの提案:陛下の継妃となれば、守ることを約束する】


 それを見て、ぶっ倒れなかったわたしを、誰か褒めてください。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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