表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 護衛兄弟暗躍編 ~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2580/2796

貴族事情

 あの仮面舞踏会の日。

 ライトからわたしが連れ出された後、王族は皆、あの会場から動かなかったらしい。


「あの第二王子殿下が動かなかったのは意外かな」


 なんか不思議なほど執着されているから。


 困ったことに会話がね。

 微妙に成り立たないんだよ、あの王子殿下。


「多分、ローダンセ国王陛下が止めていたんだと思う。その命令が出ていたのが、事前か事後かは分からんけどな」

「ふ~ん」


 もともと何らかの目的があって開かれた仮面舞踏会だった。


 だから、王族たちが動かなかったのなら、確かに絶対的な命令者が会場から動くなと厳命していたというのは理解できる。


 その王族たちは踊る時以外は壇上にいた。

 ここでも仮面の意味はない。


 いや、アンゴラウサギ仮面さまのインパクトは凄かったけど。


 しかし、アンゴラウサギをこよなく愛する第四王子殿下は、自分の父親の奇行をどんな気持ちで見ていたのだろうか?


「わたしとライトの後を追って会場から出てしまった人たちが、男性46人。女性が17人か。うわあ、思ったよりも追いかけられていたんだね。勿論、九十九たちは除いているんだよね?」

「おお。オレたちを集計しても意味がないからな」

「確かに」


 そして、その全ては有能な護衛と、トルクスタン王子によって阻まれたわけだ。


 しかし、わざわざ数えたんだろうか?

 数えたんだろうね。


「ローダンセの貴族ってどれぐらいいるの?」

「王族が国王を除いて52人。城住まい……、一代限りの王城貴族は1,202人。その内、役職を与えられている官職貴族が382人。世襲貴族の内、城下の貴族街に住んでいる貴族が143家、人数は常時変動するが末端まで入れて5日前時点で5,340人。それから……」

「ひえっ!?」


 何の気なしに尋ねたことに対して、早口で数字の羅列をされた。

 九十九はそれらの数字をしっかり把握しているらしい。


「め、メモをぷり~ず?」


 だが、わたしには無理だ。

 覚えられる気がしない。


「これを見ろ」


 そう言って差し出されたのは、先ほど九十九が口にした内容の一部だった。

 報告書ではなく、記録のようで、その中に訂正やメモ書き、補足などがあちこちにある。


「始めからこれを出してくれると嬉しかったのに」

「お前がこんなことを知りたがるとは思わなかったからな」


 まあ、貴族の人数を知ったところで何か使えるわけでもないのだけど、話の流れ的に気になったのだから仕方ない。


 世襲貴族の内、城下にいない貴族……、この国で領地貴族と呼ばれている貴族は237家で11,905人。


 貴族って……1万人を超えていたのか。


 でも……。


「それぞれの人数の後に『(推定)(かっこ推定)』って書かれているのは何故?」


 王族も含めて、全ての人数の後に書かれているので気になった。


「隠し子を含めた庶子や私生子。虚偽の届け出。その他諸々の理由から、()()()()()()()()()()()がある。だから、それが実数とは言えないんだよ」

「うわあ」


 お貴族さま、怖い。


 認知された子女である庶子や認知されていない子女である私生子までは分かるけど、虚偽の届け出って何!?


 貴族の生まれではないのに貴族って言い切ってるってこと!?

 そんな嘘吐かずに、素直に養子縁組すれば良いだけじゃないの?


「兄貴の話では、その人数、人間界の貴族よりは少ないらしいぞ?」

「え? 人間界のお貴族さまはもっと多いの?」

「オレはそこまでは知らんが、そうらしい」


 イギリスはまだ爵位が残っていたはずだ。


 でも、その内情は少女漫画で見たけれど、爵位維持のための金策とかが大変で安アパートに住んでいるお貴族さまもいるとあった。


 フランスはどうだったっけ?

 革命が起きて、共和制になったけれど、貴族の名前だけは残され、お飾りになった……はず。


 アメリカは、歴史は浅いけど、なんかあったような?


 日本は戦後に法の下の平等のため、貴族制が撤廃されているけど、その子孫はいる。

 元華族とかなんとか?


 戦国時代に五摂家と呼ばれていた公家の名家もあったが、王政復古の大号令で、摂家という呼び名がなくなり、全てその華族になっていたはずだ。


 でも、養子縁組をしつつも、五摂家の姓自体は残っていた記憶がある。


 ああ、微妙に知識が浅い!!

 そして、どれも、その人数まで分からない!!


「まあ、世界的な人口が、地球とは違うからな。この惑星(ほし)には、50億を超えるほどの人間はいない」


 言われてみれば、人が住んでいる所もある程度限られている。


 まるでRPGゲームのように、人が住んでいる場所が一部地域に固まっているため、先ほどの貴族の人数に驚いたほどだ。


「寿命は長いのに、不思議だね」

「寿命が長いから、出生率が低いのかもな」


 あ~、出生率。

 日本ではどれぐらいだっけ?


 こう言った統計は、本当にわたしの記憶に残っていない。

 もっと勉強しておけば良かった。


「お貴族さまは跡継ぎのために、次世代を産むことが絶対条件なんだよね?」


 セントポーリアはそうらしい。

 血族婚姻に拘るのも、少しでも魔力が強い人間の血を受け継ぐためだと聞いている。


「どの国も世襲貴族はそうなるな。だが、王城貴族のように一代限りの貴族は、国によっては逆に跡継ぎを避ける傾向があるらしいぞ」

「なんで?」


 それはちょっと意外だった。

 貴族はどこの世界でも血に拘っているイメージだったから。


 「青い血」、「貴い血」という言葉が存在しているのは、そのためだと思っていたけど違うのかな?


「詳しくは分からんが、次世代に苦労させるからだろうな。貴族子女のように育てられても、二代目は自力で貴族の位階を手に入れなければならなくなる」

「手に入れればいいだけなのでは?」


 一代目さんだって頑張ってその貴族の身分を手に入れたのだ。


 それなら、二代目さんも親から貰うんじゃなくて、自力で手に入れようと頑張るのが普通だと思うけど……。


「簡単に言うなよ」

「でも、二代目さんは、普通の庶民より恵まれた環境からスタートできるわけでしょう? 教育だって高等な知識を得ること……、人間界で言えば、学校だけでなく進学塾や家庭教師、お稽古とかにも行けるわけじゃない? ()()()()()()()()()()()()()()()だよ」

「母子家庭? ああ、そうか……」


 わたしは人間界で、母子家庭だった。

 父親は不明。


 今でこそ、その理由も理解し、納得もしているけど、当時……、特に小学生の頃は、やはり、その環境が嫌だった時期はある。


 塾や家庭教師もなく、自力で勉強するしかなかった。


 いや、あの母のことだから塾に行きたい、家庭教師が欲しいなんて言えば、叶えてくれたかもしれないけど、自力でできなくはないのに、家のお金を使わせたくなかったのだ。


「だからってわけじゃないけど、親の金でぬくぬく暮らしておきながら、何の感謝もない人や、親の権力を笠に着て、何の努力もしていないのにふんぞり返っている人ってちょっと苦手なんだよね」


 その逆で、九十九や雄也さんのように何もない状況から自分の能力を磨き上げ、確固たる居場所を作り上げている人は尊敬する。


 だから、彼らがカルセオラリアの王城貴族となった話を聞いた時は、当然だとも思った。


 自国であるセントポーリアでは血族、血縁主義がはびこっているため身分の取得は無理だろうけど、母のように努力によって肩書きは得られる。


 それでも、それを求めないのは、それによって縛られると、今後、身動きが取れなくなるからだろうね。


「そう考えると、()()()()()()()()()()()ってことだな?」

「え? 合格?」


 何のことか分からず、思わず問い返す。


「親の金で暮らしていることを自覚し、引き籠ってはいたけれど、お前と会う前から当主から押し付けられた仕事をこなしていただろ? 権力を笠に着て我が物顔で振舞うタイプにも見えない。努力家でもある。必要な物があれば親に強請るよりも自分で稼いでいた」

「そうだね」


 なるほど。

 九十九が言いたかったのは、アーキスフィーロさまがわたしの苦手なタイプではないという確認だったらしい。


 言われるまで、その辺については、全く意識していなかった。


 でも、九十九からそれを言われるのは、ちょっとだけ複雑な気持ちになってしまうのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ