エロ親父とのエロトーク
そこまでエロかと言われると、謎。
だけど、品はないと思われます。
ご注意ください。
オレは迷うことなく、言ってやった。
「このエロ親父」
情報国家の国王陛下は一瞬、驚き固まったような表情だったが、暫くして、破顔した。
「国王たるこの俺に向かって、そんな本当のことを口にするのは、世界広しと謂えどもお前ぐらいだ」
どうやら、笑いが止まらないようで、今でも肩を揺らしている。
「皆様、口を噤んでいるだけでしょう」
オレがそう言うと、その言葉がさらに笑いのツボに入ったようで、とうとう突っ伏して笑い始めた。
「確かに不敬は問わないと言ったが、まさか、そこまで無遠慮な発言をするとは思わなかったぞ」
一頻り、笑い転げた後、情報国家の国王陛下は目尻に指をやりながら、その顔を上げる。
「変に遠慮される方がお嫌いではありませんか?」
「その通りだ。だが、俺に対してそんな忌憚なき発言をするのは、ハルグブンとチトセ、そして、大神官であるベオグラーズぐらいだ」
まあ、この情報国家の国王に対して、そんな遠慮のない発言をする人間などそう多くはないだろう。
「身内であるはずのシェフィルレートすら、俺には一歩引くからな」
情報国家の色ボケ王子も父親には遠慮するらしい。
「私もある程度までは耐えられたのですが、先ほどの発言にはどうしても我慢できませんでした」
「ああ、『継妃』の件か」
情報国家の国王陛下は、セントポーリア国王陛下よりも年上だ。
親子以上に年齢差がある男の継妃など、初婚で選びたい道ではないだろう。
「これはシオリ嬢だけでなく、お前たち兄弟にとっても利があると思っての提案だったのだが?」
「私たちにも……ですか?」
確かに情報国家の国王陛下に囲われるなら、栞の安全は保障されるだろう。
少なくとも、あのクソ王子は手が出せなくなることは確かだ。
情報国家が護っている人間に手を出せば、これまで隠してきたことが白日の下に曝け出される可能性が格段に上がる。
内密に動きたかったクソ王子とその母親である王妃にとっては、隠してきたことの露見は最も避けたいはずだ。
セントポーリアの王族は、血統重視だ。
つまり、セントポーリア国王陛下の実子ではない時点で、クソ王子が玉座に座ることなどできなくなるだろう。
同時に、王妃がどこの誰との間に産んだ子か分からないが、不義密通を働いた事実は消せない。
王族は、正式に婚儀を交わした相手以外の子がいてもある程度は肝要だが、血統重視の国で、十数年もの長い期間、国王陛下の子と偽った事実は消せないのだ。
しかも、直系ではない王族を王位につけようとしているのは、謀反の意ありともとれる。
それなりの処罰を受けることになるだろう。
つまり、これらを公表すれば、王妃とクソ王子はあっさりと失脚させられるのだが、それをしないのは、偏に、栞を跡継ぎ問題に関わらせたくないだけである。
だから、栞が情報国家に囲われたなら、クソ王子も王妃も手を出せなくなるだろう。
藪をつついて蛇を出すなんて愚かなことはできないから。
その中で、オレたちの利は、自分たちだけで動かなくても良くなるから、楽にはなるかもしれんが、別方向で気が抜けなくなるとは思っている。
情報国家は、誰かの弱みを握っているだけに敵も多い。
セントポーリアではない別の誰かから狙われる可能性だって、格段に上がるはずだ。
「分からないって顔をしているな?」
「一部において、楽になるでしょうけど、やはり、敵が増えることに繋がりかねないとも思いますので」
「ならば、教えてやろう」
そう言って、情報国家の国王陛下は両手を広げて、大仰な構えをすると……。
「俺とお前たち兄弟で、シオリ嬢を共有することが可能だぞ?」
「……阿呆ですか?」
突然のことに、止まりかけた思考をなんとか立て直して、言葉を吐く。
「冷静に酷いことを言うなよ」
いや、この場合の「共有」って、エロ親父が言うことは、そういうことだよな?
「何が悲しくて、エロ親父と主人を共有しなければならないのですか?」
「俺は気にしないぞ? 若造どもにそっちの技術で負ける気は全くないからな」
間違いなく、エロ方面の話だと理解した。
「長年積み重ねられた経験による技術はともかく、若さと体力はお話にならないと思いますよ?」
「お前、経験が少ない割になかなか言うなあ……」
悪かったな、経験が少なくて。
……どこ情報だ?
「人類、皆、兄弟と言いますが、それでも限度はあります。少なくとも、私も兄もそういった意味で主人を共有することなど、望んでおりません」
「人類、皆、兄弟? ああ、人間界の言葉か。だが、この場合は『皆、兄弟』ではなく、相応しいのは、穴……」
「いくら、今の時間が夜中とはいえ、品がないとは思いませんか? 国王陛下?」
いや、知識としてソレも少し思い浮かんだが、流石に品がねえ!!
「割と真面目な話なのだがな。実際、情報収集のために不特定多数と関係する女もいる。俺は、一人の女を他の男どもと共有するような趣味はないのだが、同時のプレイでなければ、我慢できないほどでもない。シオリ嬢とツクモ、ついでにお前の兄を手に入れることができるなら、かなり安いものだ」
話を止めようとしたのに、さらに続けやがりますよ、このエロ親父。
だが、兄貴を「ついで」というのはかなり珍しい。
どちらかと言えば、オレの方が「ついで」になりやすいのに。
「兄の方は特に必要ではないのだがな。ツクモとシオリ嬢にとって必要な人間ならば、致し方あるまい」
さらにオレの心を読んだかのような言葉だった。
「いずれにしても、お断りです。主人も嫌がることでしょう」
「一応、提案しておいてくれ。もしかしたら……ということもある」
「嫌ですよ」
オレが変態扱いされるだけじゃねえか。
真っ当な倫理観を持っていれば、一人の女を複数の男で共有するなんて、喜べないだろう。
それこそ、どんな「色狂い」だ?
栞はどこかの王妃じゃねえんだぞ?
「主人のために何が最善かを考えたら、断る理由などないだろう?」
「仮にそうだとしても、私どもが主人を共有する理由にはなりません」
せめて、継妃にという話だけで留めておいて欲しい。
それだけなら、まだ一考の余地があるのだ。
なんで、オレたちと共有ってことになるんだよ?
「そうか? まだ若いのだから、シオリ嬢もいろいろな味を楽しみたいと思うぞ? それに、お前が言う通り、こちらも力強さと持続力、回復力については若い頃ほどではないという自覚もあって、流石に毎晩、何回もというわけには……」
「この話、まだ続けなければいけませんかね!?」
揶揄われていると分かっていても、これ以上は、オレがもたない。
主に神経の方が。
そして、この場に兄貴がいなくて良かった。
確実にオレよりも先にブチ切れていたことだろう。
「選ぶのは主人です。本人を直接口説いてください」
「直接? 良いのか?」
「良くはないですが、そこまで口を出す権利など、私にはありません」
最終的に決めるのは栞だ。
尤も、現状では承諾しないだろう。
既に婚約者候補がいるのだから。
「良くはないんだな。正直なのは良いことだ」
そう言って、情報国家の国王陛下はまたクククッと笑った。
「意地を張っても碌な結果にはならない。欲しいなら逃がすな。欲しいなら譲るな。欲しいなら奪われるな。それらを少しでも迷えば、お前の性格上、必ず後悔することになる」
それはどこか予言染みた言葉。
いや、何らかの経験から来る言葉なのだろう。
だが、オレにはその権利もないのだ。
「まあ、シオリ嬢を継妃として迎え入れるにも、もう少し準備が必要だ。ゆっくり考えて結論を出せ。正妃を毒殺した人間を処したばかりでこちらも余裕はまだないからな」
「そんな状況でよく主人を継妃にする話なんてできましたね?」
情報国家の国王陛下の妃は、最近、亡くなったと聞いている。
だが、毒殺だったのか。
「お互い、事前に心の準備は必要だろう?」
そして、この言い分だと、冗談で済ませる気もないらしい。
この情報国家の国王陛下は本気で、栞を継妃にと望んでいるのか。
「正妃の毒殺の件についても、実行した者だけでなく、計画した者、関わった者に処罰は与えている。暫くは余裕ができるだろう」
「これから、第二、第三の犯罪が起きないと、どうして、言えるのですか?」
それだけ危険な場所ってことだろ?
普通でなくても、そんな場所に行くのは遠慮願いたいと思うぞ?
「シオリ嬢が国に来ても、お前たちが護衛している限り、ほとんど危険はないだろう?」
「まさか、他力本願だとは……」
確かに毒殺の類なら、オレがある程度はなんとかできる。
致死毒だとしても、一瞬にして逝くことはありえない。
そして、数分、もてば、中和や解毒は間に合うだろう。
栞自身も解毒はできるようになった。
意識があれば、ほとんどは問題ない。
「お前たちに足りないのは身分ぐらいだ。それを俺が補おうというだけのこと。そして、その対価がシオリ嬢の若い肉体ならば、十分、釣り合うだろう」
釣り合わねえよ!!
「まあ、いずれにしても、ローダンセでの野暮用が済んでからの話だな」
情報国家の国王陛下は一息ついて……。
「別に俺の誘いを断り、シオリ嬢をローダンセに留めて、お前たち兄弟だけで来ても構わん。それはそれで、楽しめそうだからな」
「主人がいなくても私どもやその連れを受け入れる、と?」
それは有難い。
先にそう言ってくれたなら、こちらから頼む手間も省けた。
「そうだな。だが、シオリ嬢がいない時は、それなりに覚悟しておけ。兄弟纏めて、俺自らが可愛がってやろう」
そう笑みを浮かべた情報国家の国王陛下を見て、なんとなく、ラスボスと対峙した勇者ってこんな感じなのだろうなとオレは思うのだった。
品の無い表現は流石に途中で止めました。
分からない方はそのままでいてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました




