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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 異世界旅立ち編 ~

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成功率を上げるために

「この中で、一番成功確率が高いとすれば、やっぱり少年だろうな。高田の近くにいる時間が間違いなく一番長い」


 水尾先輩はそう言った。


「高田と一緒にいる時間なら、今は水尾さんとも同じぐらいじゃないですか?」

「高田の体内属性は風だろ? 私は火属性だからすぐには馴染まないよ。見た所、少しは火属性は(まと)わりついてるみたいだけど、風の気配ほど分かりやすくもない」


 纏わりつくって……。

 もっと他に表現はなかったものか。


「まあ、無駄な手順もなく、手っ取り早い方法なら、体内魔気を通すのも込めるのも分け与えるのも、性行為が一番なんだが……」

「「せっ!? 」」


 水尾先輩の口から突然、飛び出してきた言葉に思わず九十九とわたしの声が重なってしまった。


 せ、性行為って……アレですよね?

 その……アレで……ナニな話。


「今回の場合は、元々ある体内の深層魔気を少し刺激するだけだから、そこまでしなくても良いだろう?」

「でも、どちらにしても相手の魔気に干渉するなら、接触が一番刺激しやすいのは確かなんだが?」


 そう言えば……、あの紅い髪の人も、卒業式の日に似たようなことを言っていた覚えがある。


 接触することにより自分の魔力? 魔気? だったかを相手に付けれるって。


 この上なく深い接触を行えば……、表面に魔気の護りというものがないわたしにもしっかり纏わりつくのは間違いないって。


 でも、あれは結局、彼が誤解していたんだよね。


 いやいやいや!

 今の問題はそこじゃないのだ。


 そんなことしなくても一日放置で元通りだというのなら、わたしはそちらを選ぶ!


「……そこまでしない方法でお願いします」


 わたしはそう答えた。


「まあ、そうなるよな。私でもそうする。でも、それなら……、2人はどれぐらいの接触ならお互いの許容範囲?」


 いきなりそんなことを言われても返す言葉に困る。


 しかも、状況的に人前で……ってことだ。

 人前じゃなかったら良いわけではないが、できることは大分限られている気がする。


「……オレは高田次第だ。決定権はオレにない」


 九十九はきっぱりとそう言ったが、その答え方ってちょっとばかりずるいと思うのはわたしだけでしょうか?


 言ってることは間違っているわけじゃないし、無理矢理どうこうするって話にはならないけれど、わたしが九十九に人前での接触をどこまで許すかという話になる。


 その解答によっては「痴女」の称号を冠する可能性も無きにしもあらず?


 そして、世間一般的な感覚では、付き合っていない男女ってどこまで接触しても問題がないのだろう?


 とりあえず今までの接触を参考にするのなら、おんぶ……いや、肩に担がれていた状態が一番、彼に触れていた気がする。


「いきなりそんなことを言われても困ると思うけど……。逆にどこまでの接触なら効果がありそうなんだい?」


 雄也先輩からそんな助け舟が出た。


「接触しなくても魔気の流れが分かるのならば、手を(かざ)すだけでもいけるとは思う。但し、その成功確率は、接触面積が増えるほど……、深く入り込むほど上がるとは思うけどな」


 水尾先輩、その表現って、少し深読みするとかなり危険な気がします。


 なまじっか、漫画や小説で培われてしまった中途半端な文章表現が、ぐるぐると頭を回っている。


 ええ、考えすぎなのは重々承知なのですけどね。


「手を翳すよりは、その手を握った方が良いわけだね」

「その方が互いの魔気の流れも分かりやすい。私より先輩の方がその辺りは詳しいと思いますが?」

「おぅ?」


 また九十九が変な声を出した。


「互いの接地面積に左右されるという解釈で良いのかな?」

「接触だけで考えればそうなる。もっと効果を上げたいなら、性行為ほどじゃなくても、口内接触でも、少しだけ体内に入ることができるから単純に抱き合うよりは良いと思う」

「こ、口内接触って……」


 九十九の戸惑いの声が聞こえてくる。


「九十九の指を(くわ)えろってことですか?」


 手を握るより深い接触……。

 口に入れるというのならそういうことだろう。


 拳は口に入らないだろうし。


 ぬう……。

 人前でそれも結構、恥ずかしい。


 ……というか、普通に変態行為に見えると思う。


 そして、わたしの近くで九十九が何やら唸っている声がする。

 なんとなく考え込んでいるようだけど……。


 まあ、やっぱり抵抗あるよね。


「まあ想像力豊かなヤツは置いておいて……。元々が実験的な話だから、まずは手を握るところから始めてみようか」

「何だ、その恋愛指南みたいな台詞は……」

「似たようなもんだろう?」

「……確かに」


 気が付けば、先輩たちの間では、話がまとまったようだけど……、さっきまであった場所に何故か九十九の両足が見えなくなった。


「あの……、九十九は?」


 気になって確認する。


「ちょっと野暮用……? ()()()()()()()()()()()()はいろいろと辛いよな」

「???」


 疑問符を浮かべるわたしを他所に、水尾先輩の声は何やら楽しげだった。


 今の状態では、身体を起こせないからどんな表情をしているかは分からないけれど、なんとなく声がかなり弾んでいる気がする。


 まるで、水尾先輩が美味しいものを目にした時のような声だった。


「九十九は精神統一のために、先ほど少し離れたよ。あいつも初めてのことだから緊張しているようだね」


 ああ、確かに初めての挑戦って緊張はするよね。


 わたしもソフトボールで初めて監督からサインを出された時はかなり緊張した覚えがある。


 サインを間違って覚えてないかとか、成功するかどうかとか余計なことを考えてしまって、初めて出された「送りバント」のサインは……、見送り三振というなんとも情けない結果に終わってしまったのだけど。


 でも、九十九でも緊張するのか~。

 なんとなく、そこまで繊細な神経を持っているとは知らなかった。


「弟が邪念を捨てるために集中している間、何か俺に手伝えそうなことは?」

「それなら結界を頼む。本当ならそれも少年がやった方が良いが、今の彼の結界維持のやり方じゃ、難しそうだ」


「分かった。範囲は?」

「魔気の循環を考えるとあまり広くない方が良い。……半径3メートルぐらいかな」


 水尾先輩の言葉を受けて、雄也先輩も何やら動く気配がする。


 わたしは……身体が起こせない以上、何をやっているのかを確認することもできないし、これから何をされるのかも分からない。


 多分、死ぬようなことはないだろうから、それを信じるしかないかな。


「どんな結界が良い?」

「……結界の種類を選べるのかよ。それなら、気配遮断と、魔法を使っても外に魔気が漏れないことが最低条件。魔法制限ができるならそれが理想。暴走対策が結界でできるならそれが一番だからな」


 水尾先輩の言葉を聞く限り、普通は結界って種類を選べないものなのかな?


「魔法を使うのか?」

「他人に魔気をぶち込むんだから似たようなもんだ。魔法は大気魔気と体内魔気の流れで形にしてるわけだからな」

「なるほど」


 わたしにはよく分からないけれど、雄也先輩は納得したようだ。


「少年は魔石に魔力を込めたことは?」

「クズ石なら、何度もさせてみたことはある。流石に宝玉クラス勿体なくてさせたことはないが。魔石はともかく、錬石に魔力を込めるのは俺よりも上手いぞ」

「石以外の物に魔力を込めたことは?」

「……意図的にさせたのは石以外では、例の通信珠ぐらいだな。尤も、無意識には所有物に込めているようだが」

「魔界人は所有物に印付(マーキング)できないヤツなんて……、封印されている人間ぐらいだろうからな」


 ぬう。

 あまりよく聞こえないが、自分のことを言われている気がする。


「で、オレは何をすれば良いんですか?」


 2人の間にもう一つ声が追加される。


 どうやら、九十九が戻ってきたらしい。


 精神統一ってどこに行ってたんだろうね。

 もしかして、身を清めるために滝にでも当たっていたのかな?

少年が何を考えたのかは想像にお任せします。


ここまでお読みいただきありがとうございました。

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