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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 友人関係変化編 ~

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あなたに教えて欲しい

もう思春期から外れているはずの男女の会話がかなり酷い。

そして、念のために、主人公と護衛弟は18歳です。

中学生ではありません。

「ソッチ方面の知識について、九十九が教えてくれる気がないのはよく分かった」

「だからって兄貴に聞こうとするなよ?」

「そんなことはしないよ」


 九十九だから聞ける気がしたんだ。

 流石に雄也さんにそういった方向性の話を聞こうとは思わない。


 多分、男性のことに限らず、女性のことにもわたし以上に詳しそうだけど、そのための話題の切り口が難問すぎる。


「でも、さっきの『スッキリ』の意味ぐらいは教えて欲しい」

「あ?」

「『発情期』から解放された『スッキリ』感以外にも、それに近い何かがあるってことでしょう? せめて、それぐらいは教えて欲しいな」


 このままでは確実にモヤモヤする。

 だが、九十九は再び机に突っ伏した。


「せ、せめて、他を当たってくれ」


 そして、そのままわたしではなく机に向かって声を掛ける。


「他?」

「若宮とか、グラナディーン王子殿下の婚約者殿とか、水尾さんとか真央さんとか」

「なんで、殿方の生理現象について、()()()に聞けってことになるの?」


 男性の生理現象だから、男性に聞いた方が確実だと思う。


 でも、そこで雄也さんだけでなく、トルクスタン王子や恭哉兄ちゃんを含めた他の殿方の名前が出てこない辺り、あまり、男性に聞かない方が良いってことなのかな?


「女性でも知っているような一般的な知識ってこと?」

「あ~、()()()()()()()()()()()()()が、それ以外は多分、知っている」

「ぬう?」


 そう言われても、それはそれで難しい話である。

 それってわたしが無知すぎるってことだろう。


 そして、ワカ、オーディナーシャさま、真央先輩の三人の内の誰かに教えを乞おうとすれば、幼い子を見るような温かい目を向けられながら、遠回しに揶揄われる気がした。


「雄也さんが駄目なら、トルクスタン王子は?」


 試しに聞いてみる。


「ダメだ!! 絶対に野郎だけには聞くな!!」


 勢いよく顔を上げ、さらに強く反対された。


 女性でも知っているような一般的な知識であり、そして、やはり男性に聞かない方が良いのは間違いないらしい。


「例に挙げた三人は、無知なわたしを揶揄ってくると思うし、その話の出どころが九十九からだって分かったら、多分、()()()()()()()()()()()んじゃないかな?」

「……そうだな」


 少し考えて、彼は同意する。


「そうなると、九十九が言ったのだから、やっぱり、九十九に教えてもらうのが一番だと思うのだけど?」

「ぐっ!!」


 九十九は分かりやすく押し黙った。

 そして、暫く沈黙した後、また、机に伏した。


「分かった。オレが教える」


 そう言われたので、わたしはなんとなく居住まいを正す。


 なんだろう?

 妙に緊張する。


 そして、九十九はそのまま、わたしと顔を合わせずに言葉を続ける。


「お前のソッチ方面の知識は、保健体育の教科書、新聞以外はあるか?」

「それ以外だと、漫画かな?」


 新聞からの知識といっても大したことはない。

 そもそも、新聞ってそんな系統の話はあまり載っていないと思う。


「じゃあ、漫画のことは忘れろ。ソッチ方面の話は()()()()()()()()だ」


 剣や魔法の世界に生きている人からファンタジー扱いされてしまう漫画。


 いや、わたしにも分かっているよ?

 現実には少女漫画や少年漫画みたいな恋愛なんてほとんどない。


 そういった意味では漫画は虚構(フィクション)であり、同時に幻想的(ファンタジー)な世界であることは間違いないだろう。


 あれ?


 でも、ソウはそっち方面の漫画も持っていると言っていた気がするけど、アレは、わたしが揶揄われただけだった?


「ああ、それ以外なら、学年雑誌に掲載されていた話は全部読んだ」

「学年雑誌?」

「うん。小学生の頃、学年ごとにあわせて出版されている雑誌があったじゃない? それに載っていた性教育系の話はちゃんと読んで勉強した」


 主に女の子向けの記事だったと思う。

 生理とか、身体の変化とかの不安を分かりやすく漫画や記事にしたものだった。


 それらは、小学生向けに描かれていたため、保健体育の教科書よりも分かりやすかったし、勉強になった。


 自分の初経は中学三年生と遅かったが、それでも身体の変化はあったから、それらを読んで予習はしていたのだ。


 それでも、いざ、生理が来ると大慌てにはなったのだが……。


「女の子の話が中心だったけど、たまに男の子の身体の仕組みとか、その……、子供の作り方とかの話もあったよ」


 少女漫画の方で先に知った「夢精」って単語も載っていた。


 女の子の生理も下着が汚れることもあるから大変だけど、それについては漫画で手洗いの仕方が描かれていたからまだ良い。


 でも、同じように下着が汚れた時の男の子については何も書かれていなかった。


 血を洗うほどではないのだろうけど、自分の意思とは無関係に不定期に下着が汚れてしまう男の子も大変なんだろうなと思った記憶がある。


「つまり、野郎の身体についても多少は知っているってことで良いか?」


 そう言いながら、九十九はゆっくりと身体を起こす。


「えっと、本物はまだ上半身しかお目にかかったことがございませんが……」


 写真なら、下半身まで見たことはある。

 まあ、雄也さんのアルバムだったし、幼い頃のものではあったけれど。


「その構造が描かれた絵とかは見たことはあるし、仕組みもなんとなく知っている程度です」

「さっきから、なんで、敬語なんだよ?」

「なんとなく?」


 妙に緊張しているからじゃないかな?


「では、今からオレが話すのは断じて、断じて! セクハラではない。まず、これだけは絶対に頭に入れてくれ」


 凄く念を押された。


「自分から聞いておいて、それはないよ」

「お前、すぐ『えっち』って叫ぶじゃねえか」

「それについては……、うん。反射的にうっかり叫んだら、『ごめんなさい』ってことで許して?」


 こればかりは叫ばないという保証はできない。

 恥ずかしいと思ったら、口から飛び出す言葉なのだ。


「九十九がわたしに対して、そういった嫌がらせをするとは思っていないよ」


 そんな人だと思っているなら、こんなに気は許せなかった。

 もっと警戒していると思う。


「それなら良いんだが……」


 そう言いながら、九十九はわたしを見る。


 ぬ?

 でも、妙に視線が泳いでいるような?


 真っすぐに人の目を見る彼にしてはかなり落ち着きのない目の動きである。


 だが、一度、下を向き、大きく息を吐いた後、再びわたしを見た九十九の瞳に先ほどまでの動きはなくなった。


 切り替えたらしい。


「さっき言った『スッキリ』は一般的な男の生理現象だと思っている」

「ぬ?」

「雄性の生殖細胞を吐き出した後は、スッキリするんだよ」

「雄性の生殖細胞?」


 雄性……、オスの性質を持った生殖細胞……? ああ。


「えっと射精した後は、スッキリするって考え方でおっけ~?」

「……おお。他の男の感想は知らんが、少なくともオレはそうだ」


 ああ、そう受け止めたなら、さっきの九十九の発言は意味が変わってくるかもしれない。


 「発情期」から解放されてスッキリではなく、射精したからスッキリしたって意味なら、女性としてはちょっと複雑な気分になる。


「でも、性行為後って、疲れたり身体が重くなったりするもんじゃないの?」


 わたしが見たことのある漫画はその最中はなくても、目が覚めたら身体が怠いとかの描写はあった。


 それって、女性だけの話なのかな?


「……知らん」

「ぬう」


 そうか。

 そこは覚えていないのだから、はっきりと言い切れないのか。


「だが、普段は出した後、確かにかなり疲れる」

「……そうなのか」


 あえてナニを? ……とは聞くまい。

 でも、「普段」……、日常的な行為と言われると、ちょっと流石に恥ずかしく思える。


 なんとなく、自分でするよりも、相手がいた方が良くはないのかな? という疑問も浮かぶ。


 それに一度、異性とそういった経験した後って物足りないとかそんな気持ちにならないのかな?


 でも、その体験すらも覚えてないのだから、やっぱり自分でする……って、なっちゃうのかな?


 ああ!

 疑問しか浮かばない!!


「でも、かなり疲れるのにスッキリ?」


 とりあえず、怒られない程度に無難な問いかけをしてみる。


 これぐらいなら良いよね?

 さっきの九十九の言葉に対する問いかけだから。


「身体は疲れや怠さが残っても、頭の方が妙にスッキリしているんだよ」

「ああ、身体とは別の感覚なのか」


 そう考えると、睡眠に似ている……のかな?


 目が覚めた時、頭はすっきりしているけど、眠った体勢が悪いと、身体が怠くなっちゃうことはあるよね?


「これで満足か?」

「まあ、疑問の一部はなくなったかな」


 新たな疑問は湧き出てきた気がするけど。


 男性の生理現象って、やっぱりよく分からない。

 でも、独学でどこまで理解できるものなんだろうね?

ここまでお読みいただき、ありがとうございました

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