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運命の女神は勇者に味方する  作者: 岩切 真裕
~ 友人関係変化編 ~

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2060/2804

救いの神子たちが神に愛された後で

 長く見守ってきた神話(物語)もそろそろ終わりを告げるかのように、わたしが見ていた七つに分かれた映像も一つに戻った。


 始めの方に見た円卓を囲む数人の神子たちの姿。


 だが、同じ映像ではないことは、神子たちの集まる順番と、その背後には相方の神さまがいないことからも分かる。


 彼らの用は既に済んだということだろうか?


 一度だけ関係を持ったら、後はもう不要ってこと?

 それは最低男というやつではないだろうか?


 わたしにもたれかかっている「神の影」さまは今も、わたしの肩に頭を付けている。

 この方の姿勢は最初から最後まで変わらない。


 そう考えると、この体勢にも意味があるのかもしれないけれど、それは追及しない方が良いだろう。


 映像に映る神子たちの表情も初期に比べて随分、緊張感が薄れ、人間味あふれる顔になっている。


 いや、闇の神子リアンズさまだけはあまり変わっていないか。

 私室でも、寝ている姿しか映されていなかった。


 相方の神が私室に訪ねてくることもなく、リアンズさま自身が部屋から出たことは一度もなかった。


 それでも、食事はしているっぽいし、少しの時間別室に行くことはあったので、人間の生命維持に必要なことはしていたのだろうとは思う。


 あれだけ寝ていて、さらに運動っぽいことはしていないのに、動くことに必要な筋肉の維持ができていることや、無駄な脂肪がついていないのは不思議だな~とも思うけれど、この世界では今更だ。


 神子の肉体は創られたものだと聞いていたが、彼女たちは髪も伸びたし、成長もしていた。


 まあ、神さまとの子どもまでできるらしいから、創られたと言っても、もともとある肉体を強化しているとか、魔力の強い血筋同士の子供として生まれたとかそんな感じなのかなとも思っている。


 この世界だから、人造生命体(ホムンクルス)の可能性もあるけどね。


 しかし、小柄なラシアレスさまの身長が全く伸びていないように見えるのは何かの呪いだろうか?


『神子たちは15歳から始まった。肉体的な伸びしろは少ない』

「そうでしたか」


 確かにその年代なら、女性は第二次性徴も落ち着いてしまう頃だ。


 つまり、身長の伸びも落ち着いてしまっていることは、この身をもって知っていることである。


 尤も、魔力としては成長期に入るわけだから、良いのか。

 魔力成長期は、15歳から25歳ぐらいまでだったっけ?


 闇の神子リアンズさま以外で今、この場にいる神子は、光の神子シルヴィクルさまと、水の神子トルシアさまだった。


 その後に、風の神子ラシアレスさま、空の神子キャナリダさま、火の神子アルズヴェールさまと続いて入室。


 暫く、雑談をしているような風景が映し出される。


 地の神子マルカンデさまだけがまだ来ない。

 マルカンデさまは半ば脅されるように、土の神リオスさまを受け入れたと聞いている。


 あの方は男性恐怖症だったらしいから、もしかしてショックで、その死を選んでしまうとか……。


 繊細な女性は男性からのそんな暴力を受けると、死を選ぶってこともあるらしい。


 わたしは九十九が「発情期」になった時に怖い思いをしたが、死とかそう言った方向性のことは考えなかった。


 そこまでの傷ではなかったと言えばそれまでだけど、あの怖さが何度も蘇って、しかも傷を与えられているならそう考えてもおかしくはない。


 十年以上もあの怖さは続くのだ。

 いや、恐らく、一生続くかもしれないのだ。


 心が折れてしまってもおかしくはない。


『大丈夫』

「え?」

()()()()()()()()()()()()()()()


 その言葉の意味を考えるよりも先に、映像の中に、マルカンデさまが現れた。


 その表情は白黒映像からでも分かるほど憔悴している。

 マルカンデさまがどれほどの傷を負ったのかがよく分かってしまう顔だった。


 神子たちもそれに気付いているようで、居たたまれない顔をしていたのだが、何故か、マルカンデさまは目を見開き、自分のお腹を撫でた後、これまでの彼女からは想像もできないほどの顔をした。


 まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()


「い、一体……何が?」


 その変貌ぶりには、その場にいてしっかり声を聞いているはずの神子たちも驚いているようだ。


 しかも、次々に似たような顔が伝播していく。


 あ、でも、周囲の騒ぎに対してラシアレスさまは驚いているし、アルズヴェールさまは呆れたような顔をしている。


 何が起きたのか、本当に分からない!!


『マルカンデの魂は、()()()()()()()()()()()()()()

「……は?」


 血の繋がりがないってことは、親同士が再婚とか?

 いや、姉妹の結婚相手ってことも考えられる?


『そのために、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「それが一体、何の関係があるのでしょうか?」


 いや、その言葉で、法力国家の王子殿下しか頭に思い浮かんでいないわたしもどうかと思うのだけど。


『地の大陸では、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言っただけ』

「呪いですか!?」

「呪いではなく願い。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 まさか、そんな昔から約束された呪……、いや、願いだったとは……。


 ああ、ワカが白目を剥く姿が脳裏に浮かぶようだよ。


「あれ?」


 今の……。


「『神の影(リアンズ)』さま、今、ラシアレスさまに何か言いましたか?」


 なんとなく、二人の位置関係とラシアレスさまの反応がそんな感じだったのだ。


 いや、リアンズさまはラシアレスさまに背を向けているけど。


『「風の神子は、この先、()()()()()()()()()()」と言っただけ』


 それは誰のことでしょう?

 いや、分かるけど。


 明らかにわたしはこの世界の型に嵌っていない。

 尤も、自分が始めから型に納まる気がないのだから、仕方ないね。


「ラシアレスさまは子を生むのですか?」

『他の神子に比べて数は少ないけど、産む』

「そうですか……」


 そのことにホッとしたような、そうでもないような複雑な気分になる。


 自分が存在しているというのはそういうことだ。

 わたしはセントポーリアの王族の血が流れている。


 そして、その始祖はラシアレスさまだと伺っている。


 大分、薄くはなってしまっただろうけど、わたしとラシアレスさまの顔や身長が似ているということはそういうことだと思う。


 先祖返りってやつだ。

 まあ、胸は似なかったらしい。


 うん、もういい。

 胸は小さくても問題ないって言ってくれる人は世の中にはいるみたいだし。


『アルズヴェールの(はら)には()()宿()()()()()

「は!?」


 いきなりの発言に先ほどまで考えていたことがすっ飛んだ。


 それ……って……。


『まだ本人たちにその自覚はない。だけど、あの「闇陽(あんよう)」で、アルズヴェール、シルヴィクル、マルカンデ、トルシア、キャナリダの(はら)には子が宿っている』

「そう……ですか……」


 その目的での行為だった。

 だけど、やっぱり、気持ち悪さを覚える。


 これはわたしが女だから?

 今の人間界の常識から抜けられていないから?


 当事者である神子たちは、ちゃんと割り切っているのに。


『産むのは神子』

「それはそうなのですが……」


 わたし自身がどこか納得できない。


 そう考えると、わたしは王族も神子も向いていないのだろう。

 呼び寄せられた彼女たちの魂の方が、よっぽどか肝が据わっている。


『だから、()()()()()()()()()()()()

「え!?」

『その頃には魂は抜けて、神子の身体(うつわ)だけになっている』

「それは、どういう……?」


 わたしは横を向く。

 そこにはやはり銀色の長い髪の女性が読めない表情をしている。


『魂の役割は終わった。長い間、神子(うつわ)に感情、感覚、言動を教えた。これから先はこの時代を生きる者たちが創っていく。魂たちはその務めを果たし、()()()()()()()()()()

「か、還れるんですか!?」


 その言葉に驚いた。


 神子たちの魂はてっきり、そのまま身体に滞在? いや、残留? みたいな状態になるかと思っていたのだ。


『還さないとは言っていない。肉体ごと移動した導きのラシアレスの母と違って、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「ええっ!?」


 あ、あれ?

 わたし、いろいろ考え違いをしていた?


 呼び寄せられてそのままかと思えば、まさか、一時的なものだったとか。

 それは、神子たちも気楽だったかもしれない。


 もともと自分の身体ではなく、一定期間経過すれば、元の世界に戻れるのだから。


 何かの体験型のイベントや()()()()()()()()()()()と思えば、それでもその時、伴う感覚、感情は本物か。


 その辺り、神子たちはどう思っているのだろうか?


 わたしが考えていると……。


『そろそろ、()()


 そんな終わりを告げる声がしたのだった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました

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